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6月B定期(アシュケナージ指揮)

2011年06月09日 | N響公演の感想(~2016)
6月9日(木)ウラディーミル・アシュケナージ指揮 NHK交響楽団
《2011年6月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1. ショスタコーヴィチ/弦楽八重奏のための2つの小品Op.11(弦楽合奏版)
2. プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調Op.63
Vn:神尾真由子
3.ショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ短調Op.47

シーズン最後のN響定期公演は、せっかくのアシュケナージの指揮だが、メインの曲目はこのところN響で食傷気味、というより、完全に食傷状態のショスタコ5番なので、楽しみはむしろその前、神尾真由子がソロを弾くプロコフィエフのコンチェルトだった。

最初の、ショスタコーヴィチが学生時代に書いたという八重奏曲は、少々習作臭が漂ってはいたが、第2楽章は面白かった。N響の弦は目まぐるしく動き回るパッセージを、ショスタコーヴィチの若々しいパッションを感じさせつつ鮮やかに聴かせた。

次はお目当ての神尾真由子が登場。神尾のヴァイオリンはずっと生で聴きたいと思っていたが、実際にライブで聴くのはこれが初めて。その実演は、放送やCDからイメージしていた通りのものだった。

艶やかな美音、豊かで潤いのある表情、滑らかなフレージング、そうした音や表情がとにかく色っぽい。下世話な表現になってしまうが、色気をムンムンと撒き散らし、男達を次々とフラフラにしてしまうほど。どこを切っても瑞々しく匂やかなヴァイオリンにすっかり参ってしまった。

そうした色気は、しかし決して自ら媚びるような安っぽいものではなく、一種近寄りがたいような光彩を放ち、高貴ささえ感じさせる。そうした近寄りがたさや、高貴な趣きある色気が、このプロコフィエフの音楽によく合っている。妖艶でありながらブレることなく、音も、その運びもあくまで正確無比で、完成度の高い整った形を提示し、それが益々演奏に説得力を与えるのだ。

アシュケナージ指揮N響のエスコートも素晴らしい。セクシーに踊り回るソロダンサーの神尾真由子を、見事なチームワークで盛り立てる男達のダンサーグループのようで(実際は女性もいるが)、時には大胆なリフトで高々と持ち上げ、また軽々と投げ上げ、実にアーティスティックなアンサンブルを見せてくれた。

最後はタコ5。この曲は実際とてもよく出来ているし訴える力も十分で、10代の頃は僕も夢中だった。けれど、特に最近は「もういいや」的な感じになっているところに、毎年のようにN響定期でやられるのは正直辛く、今回もやっぱり心を動かされることはなかった…

ということで、とても素っ気無い感想しか書けない。アシュケナージが指揮するのなら、深い色合いとか、古典的な美しさが聴けるかとも思ったが、結局は「ショスタコ5番!」という演奏だった。骨太で、堂々とした風格があり、威圧度も抜群。エネルギーに満ちた実に立派な演奏ではあったと言える。一番「いいな」と思ったのは、随所に出てくる神田さんのフルートソロ。ピュアで美しい音色が、真っ直ぐに空へ向かって伸びて行くような心地よさを感じた。第2楽章での堀さんのソロもとても雄弁だったし、青山さんのオーボエにも心惹かれた。だけど、もうこれでタコ5は勘弁して欲しい。。。

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