facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

第41回 日展(2009)

2009年11月09日 | pocknの気まぐれダイアリー

10月31日(土)/11月2日(月)

日展は日本で最も大規模で歴史のある公募展。その道の著名人や新進作家による洋画、日本画、工芸、彫刻、それに書まで展示され、芸術の秋にはもってこいの展覧会。今回は久しぶりに父の絵も展示されているので2日がかりで8時間かけて洋画と日本画を中心にたっぷりと美術鑑賞をした。印象に残った作品のなかからいくつかをレポートしたい。
本ブログでは会場で撮影した作品の写真を、著作権法の「引用」のルールに則り、また画像サイズをできるだけ小さくして掲載させて頂きました。

《日本画》
日本画エリアはお気に入りの絵とたくさん出逢えるところだ。モチーフやその捕らえ方、構図が面白く、色使いにハッとするものや、淡い色調のファンタジックな絵などが心を捉える。子供の頃は「日本画」と言われても「油絵と同じじゃないか…」と思っていたが、デリケートな色調や顔料独特の画面処理からは自ずと洋画とは違った魅力を醸し出す作品が多い。

「調」~米倉正美~

これは印象に残った絵のひとつ。この椅子は素敵なチェリストが座ってファンタジックな歌を奏でるのを待っているかのようだ。
「春うらら」(部分)~稲岡仁彦~

これは全体の一部だが、繊細で精巧な花々の描写がクリムトの代表作「接吻」の下の部分に描かれている花模様を思い出させた。ジャポニズムの影響を受けて日本画の手法を採り入れたクリムトがこの絵を見たらまた新たなイマジネーションが湧いたかも。
「どれにしようかな」~三浦佳奈恵~

ボナールのような美しい色彩に溢れた絵の前でしばし釘付けになった。ちょっぴり色っぽい体の線も心をくすぐるが、細部まで綿密に描かれた服の模様に日本画的な手法を感じた。
「SUMMER TIME」~井上律子~

水着のカラフルな色彩と肌の色が水と光のマジックで混ざり合い、美しいハーモニーを奏でているよう。プールの何気ないシーンがこんな素敵な絵のモチーフになるなんて驚き。


《洋画》
日本画では、絵でしか表現できないようなモチーフや色彩に引かれて見入ることが多かったのに対し、洋画で足を止めて見入る絵はきれいな町並みや、雄大な山の絵や、リアルな裸婦の姿や・・・「本物を見てみたい!」というような現実の眺めとリンクして観るものが多かった。日本画と比べて「浮世離れした」絵が少ないのは日展の洋画の画風のせいかも知れない。

「厳山の風景」~成田禎介~

この山岳風景は圧巻。岩肌を覆う針葉樹と広葉樹の様々な緑、遠くに連なる雪山とのコントラストが現実の風景へと心を駆り立てる。雪山は南アルプスのようにも見えるが空想上の風景?実際にあるのなら是非行ってみたい!
「萬壽亭」~ジュディ・オング倩玉~

歌手のジュディ・オングは日展の常連。今回の版画のモチーフは故郷・台湾のお寺だろうか。カチッと捉えられた建物は格調高く佇み、鮮やかな緑と目に沁みる朱色のアクセントが印象に残る。
「秋の日溜り」~白鳥成子~

田舎道を歩いていたら出合いそうな風景だが、黄色と黒の見事なコントラストが強い個性を放ち、秋の空気を醸し出していた。
「昼下がり」~島瑞夫~(クリックで拡大)

第21室に展示されている父の絵。日展にはいつも「昼下がり」という題でスイスの古びた山小屋をモチーフに出品しているが、今回の絵からはとりわけ明るさ・暖かさを感じ、昼下がりに穏やかな気分で散歩しているような安心感を与えてくれた。


《工芸/彫刻/書》
絵だけでなく、工芸や彫刻や書も見れるというのが日展の魅力のひとつ。でも日本画と洋画で時間と体力をかなり取られてしまい、余力でまわっているというところもあった。工芸は形の面白さを訴える作品が多く、彫刻は肉体の持つ生き生きとした美しさを訴える裸婦像が圧倒的に多く、型破り的な作品にお目にかかることはなかなかない。これは工芸や彫刻の世界が持つ固有の伝統なのか、それとも日展スタイルなのか。

「秋麗Ⅱ」~坂内憲勝~

工芸で一番気に入ったのがこれ。木の実のような丸みを帯びた器に鮮やかな紅葉が浮かび、なんだか雅な古都の秋に誘ってくれる。
「願い」~服部 純~

彫刻ではこれが一番よかった。温かさと慈しみに満ちた表情は、わが子の幸せを願う母の優しい愛情の表れだろうか…
「坂村真民の詩」~近藤摂南~

書は全部は見れなかったが、この遺作となった作品からはほとばしるような生きる力が脈々と感じられた。近藤摂南はきっと最期まで若々しさをお持ちだったことだろう。


日展は12月6日まで六本木の国立新美術館で開催されている。無料デー(11月12日)や夜間割引、ホームページからの割引券のダウンロードなどいろいろなお得なチケットも出ている。訪ねれば自分好みの素敵な作品にきっと出逢えることだろう。

日展公式サイト



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