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仲道郁代ピアノ・リサイタル(夢は何処へ)

2024年06月07日 | pocknのコンサート感想録2024
6月3日(土)仲道郁代(Pf)
Road to 2027 夢は何処へ
サントリーホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第27番ホ短調 Op. 90
2.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 Op. 27-1
3.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第14番「⽉光 」嬰ハ短調 Op. 27-2
4.シューベルト/ピアノ・ソナタ第18番「幻想 」ト長調 D894 Op. 78
【アンコール】
♪ シューマン/トロイメライ

仲道郁代のリサイタルシリーズ、”road to 2027”は7年目に入った。今回のテーマは「夢は何処へ」。一見ロマンチックなテーマだが、仲道さんのアプローチは真摯で厳しい。「夢」の意味を、作品が生まれた時代や作曲家の人生に照らして徹底的に追求し、それが作品とどのように関わっているかを考察してプログラムに詳しく記し、ステージで語り、そしてピアノを通して深くて濃いメッセージを聴衆に届けてくれた。

このような過程を経ると、それまで持っていた曲のイメージに新たな気づきや思いが生まれる。ベートーヴェンの作品90のソナタの第2楽章が、美しく憧れを歌うだけではないことを、作品27の1の第1楽章は長閑な田園風景ではなく、第4楽章もワクワクした心情の描写ではなく、永遠を探し求める果てしないさすらいであることに気づかされた。

「月光」第1楽章のベートーヴェンによるダンパーペダルを踏み続ける指示が、当時話題を呼んでいたエオリアンハープという楽器から想起されていたことは知らなかった。そして、譜面の指示通りにモダン楽器でペダルを踏み続けると音が著しく濁るため、ペダルを踏みかえるという「常識」を、仲道さんはヤマハの最新のCFXで敢えてペダルを踏み続けて、神秘的で、ある意味混沌とした響きを作り、この曲に込められたベートーヴェンのメッセージを伝えた。

シューベルトの「幻想ソナタ」でも、「夢」が様々な形で現れていることに随所で気づかせてくれた。具体的な意味付けについて意識しなくても、仲道さんの演奏からは静謐でストイックな空気が立ち昇り、深淵な世界に浸らせてくれる。異次元的なものを感じることで、聴き手は現実とは異なる「夢」を感じ取ることになる。

仲道さんのリサイタルでは、作曲家が何を伝えたかったかということに考えを巡らせる姿勢が求められる。仲道さんが書いた詳細な曲目解説や、プログラムに収録された小田部氏との哲学の世界にも及ぶ対談を読むことは、仲道さんが伝えたいことを具体的に知る大きな一助となる。ただ、解説や対談の内容をきちんと理解できないまま読み飛ばしてしまうと、仲道さんの思いに聴き手としてちゃんと向き合えないのでは、とも思う。そもそも対談を読んだのは演奏会が終ってからだったので、自分は作品の真価を演奏会できちんと理解できたとは云えないかも知れない。もっと楽な気持ちで聴いてもいいのかなとも思うが、やっぱり仲道さんの思いに向き合いたい。対談は事前にYouTubeで全編が見られるので、次のリサイタルではもっと事前準備をして行こうと思った。

仲道郁代 ベートーヴェン “ピアノ室内楽”全曲演奏会 Vol.3 ~ 2023.12.6 ヤマハホール
仲道郁代 Road to 2027 ブラームスの想念 ~ 2023.10.22 東京文化会館小ホール
仲道郁代 Road to 2027 劇場の世界 ~ 2023.6.3 サントリーホール
仲道郁代 Road to 2027 知の泉 ~ 2022.5.29 サントリーホール
仲道郁代 Road to 2027 幻想曲の模様―心のかけらの万華鏡 ~ 2021.10.23 東京文化会館小ホール
仲道郁代 Road to 2027 幻想曲の模様―心が求めてやまぬもの ~ 2021.5.30 サントリーホール

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