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フェルメール・クァルテット ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会第5日

2007年10月07日 | pocknのコンサート感想録2007
10月6日(土)フェルメール・クァルテット ファイナルステージ
~ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会第5日~
紀尾井ホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第3番ヘ長調Op.18-1
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第10番変ホ長調Op.74「ハープ」
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第9番ハ長調Op.59-3「ラズモフスキー第3番」

3公演セット券で買ったフェルメール・クァルテットの演奏会も今日で最後となってしまった。最初の曲目は作品18の3、3公演とも最初に作品18の作品群から選ばれていたが、今日のニ長調がベートーヴェンが完成した最初の弦楽四重奏曲らしい。

そんな若書きの作品がフェルメールの手にかかるとしっとりと情感を帯びた美しい演奏に仕上げられるのは、これまでもそうだったけれど、出逢うごとにまた新鮮な喜びを呼び起こしてくれる。余分な力が抜け、自然な呼吸で音楽が息づく。ベートーヴェンのカルテット作品が、どの時代のものでも素敵な楽想に溢れ、魅力に満ちているかを再認識させてくれる。

更にしっとりと美しい響きを奏でた「ハープ」のあとは、僕がフェルメールカルテットで聴く最後の曲「ラズモフスキー第3番」。ノンヴィヴラートによるたゆたうような前奏は神秘の世界、そこから命を授かって生まれ出た主題が充実した展開を始める様は、4つの楽器がしっくりとかみ合って美しい構築を見せる。第2楽章の瞑想、マーク・ジョンソンのチェロのピッチカートが心を震わせる。第3楽章のメヌエットの湿感溢れた優美さもたとえようがない。

そして充実感みなぎるフィナーレが始まった。血気盛んに頑張る演奏もいいが、フェルメールの演奏はもちろんしなやかで優雅。リチャード・ヤングのヴィオラによる滑らかなフーガの主題にヴァイオリン、チェロが絡んでいく様子は、指先まで神経の行き届いたバレエダンサー達の一糸乱れぬ見事なアンサンブルを見ているようでもある。4人のプレイヤーが何の気負いもなく持ち味を十分に発揮して築き上げたクライマックスが、いかに充実した感動的な音楽を作るかを思い知った。

実力派と呼ばれる弦楽四重奏団はいろいろいるかも知れないが、ベートーヴェンをこれほど深い味わいと優美さを持って演奏し、本来作品の持つ美しい姿を体現してくれるフェルメール・クァルテットのような「個性」を持つカルテットに今後いくつ出会えるだろうか。フェルメールをもう聴けないことは本当に寂しいが、こんな素敵なカルテットと出会えたことに感謝…

フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第2日(9/28)

フェルメール・クァルテット ファイナルステージ第4日(10/3)

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