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ありどおろ座「外套」&「カヴァレリア・ルスティカーナ」

2009年07月31日 | pocknのコンサート感想録2009
7月31日(金)ありどおろ座公演
日暮里サニーホール


【演目1】
プッチーニ「外套」
【配役】
ミケーレ:旭 潔、ジョルジェッタ:小林久美恵、ルイージ:工藤健詞、タルパ:藤澤和志、フルーゴラ:松枝綾子、ティンカ:江川勉 他

【演目2】
マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」
【配役】
サントゥッツァ:渡辺絢子、トゥリッドゥ:神谷真士、アルフィオ:旭 潔、ローラ:小谷円香、ルチア:菊池有里子

【総監督】工藤健詞 【演出】小林久美恵

【演奏】
佐藤宏光指揮 ありどおろ座オーケストラ/ありどおろ座コーラス

僕が惚れたバリトン歌手、旭潔氏が出演する「ありどおろ座」によるオペラの2本立て公演の1つめはプッチーニの「外套」。これは接するのは全く初めてのオペラ。

オーケストラによる柔らかく透明感がある印象的な前奏に続き歌が入る。演奏が始まる前にナレーションで簡単なあらすじの紹介があったが、字幕なしはやっぱり辛い。筋が追えたのは終盤、ジョルジェッタとルイージの逢引きの場面あたりから。

ルイージ役の工藤さんはいつもポーカーフェイスなのがちょっと気になったが、端正で安定したテナーは心の奥深い感情が滲み出てくるよう。ジョルジェッタ役の小林さんの明瞭で存在感のある歌唱とのデュオからは切迫感のようなものが伝わってきた。そしてミケーレ役の旭さんは、声も表情も演技も役になり切り、オペラの要を見事に演じていた。その歌唱の貫禄、凄み、人間的な厚みは存在感抜群で、ルイージを殺す場面での地獄を見るような形相と共に深く胸に迫ってきた。

幕切れではルイージの死体を見て驚愕したジョルジェッタがミケーレの手を引いて逃げるように2人で退場したが、これはルイージに心も体も許してしまったジョルジェッタのミケーレへの後ろめたさの裏返しの行動、ということだろうか。

♪♪♪


続く「カヴァレリアルスティカーナ」もオペラの上演に接するのは殆ど初めてだが、ストーリーの展開がはっきりして動きも多く、合唱も活躍して音響的な変化にも富み、更にはバレエや子供たちの仮装行列なども加わったために「外套」ほど字幕なしの辛さは感じなかった。

イースターの華やいだ雰囲気が伝わる明るいステージでまず印象に残ったのは合唱。アマチュア中心のメンバーだとは思うが、とてもよく歌いこまれ、歌声がよく映え、良い響きを作っていた。特に女性達の歌っている顔の表情が明るくていい。

歌手陣では、こちらにも登場した旭氏のアルフィオがひときわ光を放っていた。輝かしく張りのある声としなやかな歌唱には惚れ惚れ。アルフィオの強さと威厳が伝わってきて、これならトゥリッドゥとの決闘に勝つことの説得力も持つ。ルチアを歌った菊池さんの深く人情味のある、頼り甲斐のある歌唱もとてもいい。できればもっと長いアリアで彼女の歌を堪能したかった。それにしてもルチアの顔に施された皺のメイクは菊池さんに気の毒なほどお粗末。茶番の落書きのようにも見えた。白髪だけでお母さんという年齢は十分に出せるのに、あそこまで皺だらけの顔にするのは別の意図があったのだろうか?

トゥリッドゥを歌った神谷さんは終盤はかなり辛そうだったが、ヘルデンテナーの美声を響かせ、色男役には合っていた。有名なアリアもあり、このオペラの主役ともいえるサントゥッツァ役の渡辺さんも健闘していた。

「カヴァレリアルスティカーナ」は、小規模ながらオペラの魅力がふんだんに盛り込まれていて楽しめたが、有名な間奏曲で登場したバレエの意味、視覚的には刺激になったが子供たちの仮装行列のステージに与える効果など、演出面では更に説得力のある踏み込んだアプローチが欲しいと感じた。

この2つの公演では佐藤宏充指揮ありどおろ座オーケストラの演奏にも耳を引いた。若いメンバーが殆どのように見受けられ常設オケではないとは思うが、充実したいい響きでとても雄弁な演奏を聴かせてくれた。ある時は果敢に喰らいつき、また柔らかな表情も聴かせた弦セクションのアンサンブルは見事だったし、それに唱和するオーボエをはじめとする管楽器達も歌心に溢れている。瑞々しく熱い演奏で場を盛り上げたオケにも拍手!

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