1月21日(日)もぎぎのオーケストラ “くわしっく鑑賞ガイド”Vol.1 J.S.バッハ:カンタータ名曲選
三鷹市芸術文化センター
【曲目】
1.バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命を持って」BWV147
2. バッハ/カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140
3. モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス
4. プーランク/ミサ曲ト長調
【アンコール】
ブルックナー/アヴェ・マリア
【演 奏】
S:田島茂代/A:菅家奈津子/T:鈴木准/Br:原田圭
茂木大輔指揮 オーケストラ・アンサンブル「風」/東京混声合唱団
N響の首席オーボエ奏者の茂木さんは指揮や著作でも活躍している。「大人のためのオーケストラ鑑賞教室」と題して三鷹でシリーズで行っている茂木さんの「解説付きコンサート」に初めて出かけた。
茂木さんは、名曲ではあるが通常のコンサートに全曲乗ることは滅多にないこれらのバッハのカンタータについて、カンタータとは何か、バッハのカンタータの成立背景、宗教的な意味合い、音楽と歌詞、音楽とキリスト教との密接な関わり、演奏楽器等々について相当掘り下げて、生演奏をふんだんに使いながら丁寧に、わかりやすく、面白く解説して行く。
1つのカンタータの演奏時間にほぼ匹敵する長さの解説を聞き、すぐに通しの演奏で追体験することで、今までにない発見を次々とする。カンタータに初めて接するような人にとって興味の尽きない話であると同時に、学生時代にカンタータを勉強していた僕にとってもとてもためになった。宗教的な意味合いが驚くほど音楽に織り込まれている、ということは知ってはいても、実際にどのような形でそれが入っているのかを次々に例示してくれることで改めてバッハの凄さを実感する。あのひょうひょうとした表情で何気なく発せられるジョークやギャグのセンスも相変わらず冴えている。この笑いのネタも含め、茂木さんはステージで解説した何倍も何十倍もの下調べや研究をしているに違いない。
話だけでなくもちろん演奏も素敵だった。オケはアリアのオブリガート楽器のソロも弦楽アンサンブルも素晴らしい。歌があり、生気に満ち、自然でみずみずしく柔らかい。オーボエの古部さん、コンマスの長原さんのソロにはうっとり。バッハはやはりしかめっ面をした演奏よりもこうした「歌」のある演奏がいい。4人のソリストもみんな良かったが、とりわけテノールの鈴木さんの柔らかで表情豊かな美声の歌が絶品だった。東混の合唱も清々しく、喜びに満ちた瑞々しい歌を響かせた。
その東混、プログラムの最後に置かれたプーランクのミサではア・カペラで益々の本領を発揮した。ピタリとハマったハーモニーの何と透明感のある美しさ。それぞれの楽曲の性格を的確に表現しつつ、柔らかでデリケートなハーモニーから力強く輝かしい響きに至るダイナミックレンジの幅広さでこの作品の魅力を伝える。学生時代に歌ったことのあるこの曲の素晴らしさを再認識した。
【und ich bin SEIN!!??の疑問】
カンタータ140番、第6曲のデュエット冒頭が解説中に模範演奏された時、イエスのバスが「そして、私は汝のもの…」と歌うところを、"Und ich bin sein"と歌っていた。「汝のもの」なんだから"sein(彼のもの)"じゃなく"dein(お前のもの)"なのに間違えたな… と思っていたら、このデュエット中あちこちで歌われるこの歌詞を本番でも全て"sein"で歌っているのが気になって仕方なかった。
最初は「絶対間違いだろう」と思っていたのだが、譜面を持ってあれだけ自信たっぷりに歌われると、「もしかして本当に"sein"なのかしら…」と少々不安になってきた。ドイツ語の二人称は古い時代には別の形も使われていたなんてそういえば聞いたことあったなぁ… でもこのデュエットはすごく好きだから、スコアーも買って自分でもちょっと歌ってみたことがある。「絶対にdeinだったはず!」と思いつつ、家に帰って確認してみると…
僕がもっているスコア「Belwin Mills版」ではやっぱり"dein"になっている。ところが、古いレコードを引っ張り出して(アグネス・ギーベルのソプラノ、テオ・アダムのバス、マウエスベルガー指揮ライプツィヒゲヴァンとハウスオケとトーマス教会合唱団)歌詞カードを見たら、な・なんと"sein"と書いてある。前者のスコアはあまり聞いたことのない出版社だし、バッハゆかりのライプツィヒがやはり正しいのかも。或いは絶え間ないバッハ研究の結果、deinからseinへ訂正されたのか?? こういう学者が研究しそうなことには余り興味のない僕だが、これは是非真相が知りたくなった。どなたか知っている方いませんか?
三鷹市芸術文化センター
【曲目】
1.バッハ/カンタータ第147番「心と口と行いと命を持って」BWV147
2. バッハ/カンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140
3. モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス
4. プーランク/ミサ曲ト長調
【アンコール】
ブルックナー/アヴェ・マリア
【演 奏】
S:田島茂代/A:菅家奈津子/T:鈴木准/Br:原田圭
茂木大輔指揮 オーケストラ・アンサンブル「風」/東京混声合唱団
N響の首席オーボエ奏者の茂木さんは指揮や著作でも活躍している。「大人のためのオーケストラ鑑賞教室」と題して三鷹でシリーズで行っている茂木さんの「解説付きコンサート」に初めて出かけた。
茂木さんは、名曲ではあるが通常のコンサートに全曲乗ることは滅多にないこれらのバッハのカンタータについて、カンタータとは何か、バッハのカンタータの成立背景、宗教的な意味合い、音楽と歌詞、音楽とキリスト教との密接な関わり、演奏楽器等々について相当掘り下げて、生演奏をふんだんに使いながら丁寧に、わかりやすく、面白く解説して行く。
1つのカンタータの演奏時間にほぼ匹敵する長さの解説を聞き、すぐに通しの演奏で追体験することで、今までにない発見を次々とする。カンタータに初めて接するような人にとって興味の尽きない話であると同時に、学生時代にカンタータを勉強していた僕にとってもとてもためになった。宗教的な意味合いが驚くほど音楽に織り込まれている、ということは知ってはいても、実際にどのような形でそれが入っているのかを次々に例示してくれることで改めてバッハの凄さを実感する。あのひょうひょうとした表情で何気なく発せられるジョークやギャグのセンスも相変わらず冴えている。この笑いのネタも含め、茂木さんはステージで解説した何倍も何十倍もの下調べや研究をしているに違いない。
話だけでなくもちろん演奏も素敵だった。オケはアリアのオブリガート楽器のソロも弦楽アンサンブルも素晴らしい。歌があり、生気に満ち、自然でみずみずしく柔らかい。オーボエの古部さん、コンマスの長原さんのソロにはうっとり。バッハはやはりしかめっ面をした演奏よりもこうした「歌」のある演奏がいい。4人のソリストもみんな良かったが、とりわけテノールの鈴木さんの柔らかで表情豊かな美声の歌が絶品だった。東混の合唱も清々しく、喜びに満ちた瑞々しい歌を響かせた。
その東混、プログラムの最後に置かれたプーランクのミサではア・カペラで益々の本領を発揮した。ピタリとハマったハーモニーの何と透明感のある美しさ。それぞれの楽曲の性格を的確に表現しつつ、柔らかでデリケートなハーモニーから力強く輝かしい響きに至るダイナミックレンジの幅広さでこの作品の魅力を伝える。学生時代に歌ったことのあるこの曲の素晴らしさを再認識した。
【und ich bin SEIN!!??の疑問】
カンタータ140番、第6曲のデュエット冒頭が解説中に模範演奏された時、イエスのバスが「そして、私は汝のもの…」と歌うところを、"Und ich bin sein"と歌っていた。「汝のもの」なんだから"sein(彼のもの)"じゃなく"dein(お前のもの)"なのに間違えたな… と思っていたら、このデュエット中あちこちで歌われるこの歌詞を本番でも全て"sein"で歌っているのが気になって仕方なかった。
最初は「絶対間違いだろう」と思っていたのだが、譜面を持ってあれだけ自信たっぷりに歌われると、「もしかして本当に"sein"なのかしら…」と少々不安になってきた。ドイツ語の二人称は古い時代には別の形も使われていたなんてそういえば聞いたことあったなぁ… でもこのデュエットはすごく好きだから、スコアーも買って自分でもちょっと歌ってみたことがある。「絶対にdeinだったはず!」と思いつつ、家に帰って確認してみると…
僕がもっているスコア「Belwin Mills版」ではやっぱり"dein"になっている。ところが、古いレコードを引っ張り出して(アグネス・ギーベルのソプラノ、テオ・アダムのバス、マウエスベルガー指揮ライプツィヒゲヴァンとハウスオケとトーマス教会合唱団)歌詞カードを見たら、な・なんと"sein"と書いてある。前者のスコアはあまり聞いたことのない出版社だし、バッハゆかりのライプツィヒがやはり正しいのかも。或いは絶え間ないバッハ研究の結果、deinからseinへ訂正されたのか?? こういう学者が研究しそうなことには余り興味のない僕だが、これは是非真相が知りたくなった。どなたか知っている方いませんか?