2月20日(水)ハンスイェルク・シェレンベルガー指揮&オーボエ/NHK交響楽団
《2月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.モーツァルト/セレナード第10番変ロ長調K.361
2. モーツァルト/歌劇「イドメネオ」バレエ音楽K.367
3. モーツァルト/交響曲第40番ト短調K.550
オーボエの名手、シェレンベルガーの指揮による今夜のN響定期は、そのシェレンベルガーがアンサンブルに加わってグラン・パルティータをやるという何とも魅力的なオマケつき… というか実はこれが一番楽しみなお客も多いはず(僕も)。
そのグラン・パルティータはしかしちょっと期待外れ。シェレンベルガーのオーボエは惚れ惚れするほど素晴らしかった。美しく魅惑的な音色でよく歌うオーボエはソリストとして注目を一身に浴びる華がある。リードの葦の繊維の一本一本にまで神経が行き届いたような繊細な表現にも舌を巻くばかり。ベルリンフィルをリタイアしても全く衰えを感じないこんな魅力的なオーボエを聴かせてくれたことには感服するのみ。
でもこの曲ではオーボエと殆んど同等に活躍するクラリネットがその役目を十分に演じることで真価を発揮するのだが、磯部さんはかなりの不調。本当はシェレンベルガーと堂々と渡り合って音楽でパフォーマンスを決めてもらいたかった。
アンサンブルとしては安定はしていたが、響きが少々浅く感じたし、N響のアンサンブルなら各プレイヤーのソロイスティックなところをもっと聴きたかった。
シェレンベルガーが指揮棒を持った後半のプログラムの1曲目、「イドメネオ」のバレエ音楽はドラマチックな雰囲気を盛り立て、しなやかさを感じる演奏になかなかの好感を持った。だが、ちょっと力が入り過ぎかも。ハイドンの音楽ならこれでいいのかも知れないが、モーツァルトの音楽にはいつだって汗は似合わない と思う。あ、でもこの曲、実は多分初めて聴いたがすごくいい曲だ。今度CDを買ってじっくりと聴いてみたい。
さて、締めの曲は40番。この哀愁溢れる音楽をどんな風に演奏するのか… さっきの演奏から想像すると選曲を誤ったのでは、という危惧が漂う。ところが始まってみるとこれがなかなか、というよりすごくいい。駆け抜けるような速いテンポをN響は風が吹き抜けるようにスマートにさらりと演じる。余計な力が入らず、それでいてちょっとした魅力的なスパイスをあちこちにアクセントとして散りばめるセンスは絶品。音楽がキリっと締まる。
この第1楽章にすっかり気を良くして聴き進んだ… 第2楽章の4度のモチーフを奏でるヴィオラの味わい深さ、第3楽章のトリオでの柔らかなホルン、第4楽章の第2主題の心が洗われるように澄んだ美しい弦や、オーボエの優美なメロディー(やっぱりシェレンベルガーはオーボエ版を選んだ)など、いろいろと良い場面はあったが、第1楽章ほどのインパクトはなかった。それに、第3楽章でリピートを忘れて思いっきり次のフレーズの音を鳴らしてしまったヴィオラ君、よろしく頼んます。。。
テンポにしても、あの疾風の第1楽章に比べると、2楽章や4楽章はいたって普通のテンポだったことや、第3楽章のトリオでテンポをグッと速めたことの必然性ももう一つ感じられない。全体として悪くはないしおもしろかったが、やっぱり構成力の弱さは否めない。
モーツァルトプロはN響定期の一つの看板のごとくしばしば行なわれるが、これを文句なしの心にいつまでも残る名演で飾ってくれるのは、やっぱりプレヴィン級の指揮者でないと厳しいが、これまでに登場した指揮者の多くは役不足。指揮者選びと選曲についてはもう少し明確なヴィジョンが欲しい。
シェレンベルガー、だけどとてもいい感覚を持っていることは間違いない。来週のハイドン、そして何よりモーツァルトのコンチェルトはとても楽しみだ。
《2月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.モーツァルト/セレナード第10番変ロ長調K.361
2. モーツァルト/歌劇「イドメネオ」バレエ音楽K.367
3. モーツァルト/交響曲第40番ト短調K.550
オーボエの名手、シェレンベルガーの指揮による今夜のN響定期は、そのシェレンベルガーがアンサンブルに加わってグラン・パルティータをやるという何とも魅力的なオマケつき… というか実はこれが一番楽しみなお客も多いはず(僕も)。
そのグラン・パルティータはしかしちょっと期待外れ。シェレンベルガーのオーボエは惚れ惚れするほど素晴らしかった。美しく魅惑的な音色でよく歌うオーボエはソリストとして注目を一身に浴びる華がある。リードの葦の繊維の一本一本にまで神経が行き届いたような繊細な表現にも舌を巻くばかり。ベルリンフィルをリタイアしても全く衰えを感じないこんな魅力的なオーボエを聴かせてくれたことには感服するのみ。
でもこの曲ではオーボエと殆んど同等に活躍するクラリネットがその役目を十分に演じることで真価を発揮するのだが、磯部さんはかなりの不調。本当はシェレンベルガーと堂々と渡り合って音楽でパフォーマンスを決めてもらいたかった。
アンサンブルとしては安定はしていたが、響きが少々浅く感じたし、N響のアンサンブルなら各プレイヤーのソロイスティックなところをもっと聴きたかった。
シェレンベルガーが指揮棒を持った後半のプログラムの1曲目、「イドメネオ」のバレエ音楽はドラマチックな雰囲気を盛り立て、しなやかさを感じる演奏になかなかの好感を持った。だが、ちょっと力が入り過ぎかも。ハイドンの音楽ならこれでいいのかも知れないが、モーツァルトの音楽にはいつだって汗は似合わない と思う。あ、でもこの曲、実は多分初めて聴いたがすごくいい曲だ。今度CDを買ってじっくりと聴いてみたい。
さて、締めの曲は40番。この哀愁溢れる音楽をどんな風に演奏するのか… さっきの演奏から想像すると選曲を誤ったのでは、という危惧が漂う。ところが始まってみるとこれがなかなか、というよりすごくいい。駆け抜けるような速いテンポをN響は風が吹き抜けるようにスマートにさらりと演じる。余計な力が入らず、それでいてちょっとした魅力的なスパイスをあちこちにアクセントとして散りばめるセンスは絶品。音楽がキリっと締まる。
この第1楽章にすっかり気を良くして聴き進んだ… 第2楽章の4度のモチーフを奏でるヴィオラの味わい深さ、第3楽章のトリオでの柔らかなホルン、第4楽章の第2主題の心が洗われるように澄んだ美しい弦や、オーボエの優美なメロディー(やっぱりシェレンベルガーはオーボエ版を選んだ)など、いろいろと良い場面はあったが、第1楽章ほどのインパクトはなかった。それに、第3楽章でリピートを忘れて思いっきり次のフレーズの音を鳴らしてしまったヴィオラ君、よろしく頼んます。。。
テンポにしても、あの疾風の第1楽章に比べると、2楽章や4楽章はいたって普通のテンポだったことや、第3楽章のトリオでテンポをグッと速めたことの必然性ももう一つ感じられない。全体として悪くはないしおもしろかったが、やっぱり構成力の弱さは否めない。
モーツァルトプロはN響定期の一つの看板のごとくしばしば行なわれるが、これを文句なしの心にいつまでも残る名演で飾ってくれるのは、やっぱりプレヴィン級の指揮者でないと厳しいが、これまでに登場した指揮者の多くは役不足。指揮者選びと選曲についてはもう少し明確なヴィジョンが欲しい。
シェレンベルガー、だけどとてもいい感覚を持っていることは間違いない。来週のハイドン、そして何よりモーツァルトのコンチェルトはとても楽しみだ。