goo blog サービス終了のお知らせ 

幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

ぼくの無人島本  10冊

2022-10-20 22:01:00 | 書評 読書忘備録
本が好き倶楽部のイベントページに投稿しました
あなたの無人島本10冊を選んでください、というものです。
選ぶの難しかったわ~(ФωФ)

現時点でのセレクションです🎵
前提として無人島だが衣食住には困らないこと。
期間は二週間ぐらいで帰還のために努力しなくても良いこと。
危険な恐竜や妖怪がいないこと(笑) が条件です。




ロビンソンクルーソー
山尾悠子作品集成
秘密の花園
日本妖怪大全
架空地名大事典
全東洋街道
宮沢賢治全一冊ザ賢治
STARWARS英和辞典JEDAI騎士編
東宝特撮全怪獣図鑑
白土三平野外手帳

以上です
とりあえず単価や重さは無視して自分が飽きずに
読み返せる本をセレクトしました
万人受けはしないと思うけど 五冊以上シンクロされる方には
お友達申請させていただきます🎵

花筐 上村松園と 山岸涼子「天人唐草」について

2022-10-02 16:41:00 | 書評 読書忘備録
花筐 上村松園と 山岸涼子「天人唐草」について書く 10

さても上村松園です。焔、が夏の黄昏時のフラッシュバックであれば花筐は秋の紅葉山の白日夢といった処でしょうか。。。
一見キレイな日本画、しかも等身大で観者が画の前に立つと美しい姫が自分に向きあって微笑みかけてきたような錯覚を覚えるでしょう。

ところがすぐに貴方は不安な気持ちになってしまいます。鮮やかな色合いの袷は肩からずり落ちかけて足元には踏みしだかれた扇があります。そして画の女性の表情と眼差し。何処も見ていない。。。。!?
そうです、女性の精神は正気の世界から逸脱しているのです。どうしたことなのでしょう?どのような理由があったのでしょう?

一つの分かりやすい解は、この絵は能の花筐から着想を得たもの。ということです。 
能の花筐では画の主人公は照日之前。田舎で皇子の寵愛を受けながら、皇子が即位の機会に着古した昔の服は断捨離よ、とばかりに、あっさりと置き手紙と花籠を手切れの品に残され棄てられてしまいます。
自分の身に起こったことが理解できないまま姫は徒歩でふらふらと都の方向へ歩き出すのでした。あの方はわかってくれると。。。。

そして数年の後、継体天皇となった皇子の観紅葉の宴にひとりの女性が歩み寄ります。しかし相手は天皇であり付人に形見の花籠を叩き落とされあしらわれてしまうのです。何かの糸が切れたように姫は己の素性と皇子との縁を金切声で糾弾します。
騒ぎを聞きつけた帝は姫の正体を悟り、
「さてもおもしろきことよ。(なんだって?)
我の前で狂女のように舞ってみせよ。
舞がよろしければ御前を手元に置こうではないか。
(何を言ってるんだ?コイツは?)」
と怖いことをのたまいます。
この画はまさにその召しの直後、舞に一歩踏み出す前の姫の姿を瞬間、描いたものということです。

このシチュエーションも相当ヘンです。姫は本当は狂ってしまっていたのか、それとも帝の一言で正気に戻り、その上で狂女の振りをして舞ったのか?
帝は狂ったオンナが好きな変態ヤロウなのか?
姫が舞った狂女の舞とはどんなものだったのでしょうか?
尊い方たちの思い付くことは凡人には意味不明です。

そして、次の怖い話。
この能の物語を元に松園は小面の「十寸髪」をモデルに下絵を描き始めますが、顔を描けたところで瞳を仕上げようとしたところ、どうしても得心がゆきません。それもそのはず面の目は空洞でそこには空間と向こう側が見えるだけなのですから・・・







そこで松園は当時の大阪では有名なキタのキチガイ病院に取材にいくのです。そこでの手記も読みましたが、松園は長い時間、そこの住人達の姿、物腰を観察しながらは、あるいはエエトコの御料さんとかみ合わない会話をしたりしたそうです。その取材の姿もドラマのように想像できてしまいますが怖いでしょう?
そして松園は彼女達に共通する眼差しの行方について理解したといっています。
曰く「あの方達の游いだ眼は、虚空に私達の見れないモノを見ている。。。」と。
そんな知見を得た後で照日之前の表情のアップを見てください。微笑んだ口元、そしてうっとりとして、あらぬ虚空を見る眼差し・・・・・・芸術家ってすごいですね。

そしてそして、ここで山岸涼子さんの傑作、天人唐草を読んでいただきましょう。
髪を金髪に脱色し、全身フリルの真っ白なドレスに身を包んだ女性30歳が奇声を上げて空港を徘徊する最初の場面。



花筐の姫は時代を経て女性漫画家の手に再臨しました。
天人唐草、幼少のころから女としての躾と拘束に歪められて遂に精神の均衡を崩してしまうもうひとりの姫の物語。彼女もラストの衝撃的な出来事のあと、ひとり呟くのでした。あの人はわかってくれる。と
彼女は狂気という世界に解放され、その後何処にいったのでしょうか?
何か予兆だけを残して漫画は唐突に終わってしまいます。あの人に会えるのでしょうか?それとも更なる悲劇に遭ってしまうのだろうか?

更に僕には、その後の彼女が何故か白いメリーさんとして、或いは、コワイさ迷う者として都市伝説のように続きの物語を醸成してゆくような気がするのです。
或いは健常なわたしたちの隣人の心に植え付けられる何かの萌芽となってゆく。そのような気がして胸がざわつきます。

今も日々のニュースに確かに紛れ込む異界の白い闇。
なんでこんなコトになっちゃうの?と問わずにはいられない事件の舞手たち。。。
そう 本当の闇は漆黒ではなく、この画のように白く美しく朧なのかもしれません。






読書レビュー 一度きりの大泉の話

2022-09-19 21:28:00 | 書評 読書忘備録
#萩尾望都
#一度きりの大泉の話

竹宮さんの本「少年の名はジルベール」も読んだが 
この萩尾さんの本の方が真相に近いのだろうなと思う 

トキワ荘と同じように少女漫画でも萩尾望都と竹宮恵子
の2大ビッグネームが練馬区大泉の借家で共同生活を二年間
行い、その場所で風と樹の詩とポーの一族が生まれ、そして
突然共同生活が解消され、それ以降二人は一切交流を断って
いることは、一時期それなりに話題になっていた。

だが、その絶縁の真相は当人のみが胸に秘めていればいい
ものであり、それが特にトラウマのように痛みを伴うもの
であるならば、興味本位で我々が詮索するべきではない。
ましてや、勝手にトキワ荘やまんが道みたいな勝手な理想郷
やサクセスストーリーを思い込みで作り上げ、ワレワレこそ
善意の思い出発掘人だ!と独善独裁者になるなんて論外だ。

創作者の世界には嫉妬も共鳴もあり得ることであろうし 
そこでの心情も結論も外野が口を出すべきではないのだ。

この本で繰り返し登場する 勘違い親切正義感で
あわよくば糞でお手軽な企画書で一発決めたいと迷惑振り撒く
マスコミ新聞社テレビの輩には嫌悪感しかない 

もうこの心やさしい天才をこれ以上煩わさないでいただきたい




読書レビュー ホラーがここに ぞぞのむこ

2022-09-11 06:33:00 | 書評 読書忘備録
ほら ホラーがここに
#井上宮 #ぞぞのむこ #じょかい

あまり有名になっていないが、久々にのめりこんだホラー小説でござる。
澤村氏のぼぎわんが好き? そんなあなたにピッタリっすよ!!
小野不由美の残穢にビビった? ああっ!この本からもう逃れられんよ!
DINNERが気持ちヨイ? やれやれ中毒症状だねコレで人間やめようか? 
まあこんなホラー短編集が「ぞぞのむこ」長編が「じょかい」ってわけ

順番はどっちからでもいいが おすすめはフレンチフルコースのように ぞぞのむこでシェフの腕前とセンスをアラカルトのように味わい、
じょかいでじっくりとメインディッシュを堪能する、という読み方がホラーグルメの方々には常套だと思う。
まあ 口に合わなかったり、これ以上ワタシにはムリっ!って場合でもリタイヤはこれのほうが容易い。
(だが、たぶんアナタはそうはしないと確信してるけどね 笑)






ぞぞのむこは獏市なる架空の地方都市が舞台の連作で時系列は先週の奇談からはじまり徐々に過去のエピソードに時を移してゆく。
この獏市というのが一見普通のちょっと陰気な住宅地で宅急便も配達されるし店もあるのだが、その町を知っている近くの住民は絶対足を踏み入れない、ヤバい町なのだ。いわゆる忌み地、入らずの禁足地、のような土地なのである。
杜王町みたいですねぇ。
実際gooogleで探したくなっちゃいます♪

やむおえず宅急便業者には獏市アタサワMAPなる内密資料が担当に伝わり、定期的に担当配置替えをして安全確保しているという。
(アタサワは当たらず障らずの意味 店や通りなど特に絶対避けるべき危険スポット、地雷源かトラップ設置場所みたいな場所でMapには赤く❌と名称が書かれてる。このMAP興味深い。誰か作ってくれないかな笑)

ぞぞのむこ
じょっぷに
だあめんかべる
くれのに
ざむざのいえ(これがじょかいにつながる感じ)

どれもざわつく、意味よくわからないタイトル
読むにつれ物語の後半の悲劇になってくると
その意味が薄々と嫌な予感がだんだん判明、確定
されてくる





そしてもう悲劇は手遅れで、どれも救済不能状態になってしまっている。
読者の自分なら安心だろうと思って読んでいるのだが 
あ オレあぶないかも。。。。と思わず石鹸で手を洗ってしまう不穏な、不条理な感染力がこの本には宿っている。残穢みたいな印象ですわ。
さあ あなたもざわつきに獏市を覗いてみませんか?






読書レビュー ぜんぶ本の話

2022-09-08 03:36:00 | 書評 読書忘備録
ぜんぶ本の話 池澤夏樹 池澤春菜(語り下ろし対談)

この本の出版は某ラジオ番組でこの二人の出版記念対談(番宣)で知った。
その番組のほうが、語り下ろしのこの本書よりも二人の距離感とか興味とかのライブな呼吸がつかめて面白かったと思い返す。
なんたって 娘が「ザリガニの鳴くところ」を意気揚々とプレゼンしてると横から父親が、もっとその本とか背景について深い蘊蓄とか評価をする始末。
場をさらってしまう父親に、娘から「わたしの プレゼン本を 盗らないでよッ!!(怒)」と ブチ切れられる場面など、なかなかこの二人ならではの場面だった。

実際のこの本では、さすがに親子ゲンカは収録されず、しっとりと、親和的に対談が進められる。
最初読んだ児童書の話、からSF、翻訳もの、自分たちの書いた本、と順序たてて語り合われる。
その都度、膨大な量の本の名前や作者の情報が出てくるが、この対談はきっと彼らの本棚がいっぱいの自宅で行われたからだろう、本を採り上げてはその本と周辺の関連本を棚から一掴み手に抱えてきて、また対談に戻る・・といった光景が目に浮かぶ。

このような親子、家族の関係、実にうらやましい。
そして買わなくても勝手に本が届き、増えてゆく、そのような環境も実にうらやましい。笑
垂涎の的であります。

【もくじ】
まえがき
Ⅰ 読書のめざめ 児童文学1
Ⅱ 外国に夢中! 児童文学2
Ⅲ 大人になること 少年小説
Ⅳ すべてSFになった SF1
Ⅴ 翻訳書のたのしみ SF2
Ⅵ 謎解きはいかが? ミステリー
Ⅶ 読書家三代 父たちの本
エッセイ〈父の三冊〉
「福永武彦について」「ぜんぶ父の話」
あとがき

【登場する作家と作品(一部)】
E・ファージョン『ムギと王さま』、E・ケストナー『エーミールと探偵たち』、サンテグジュペリ『星の王子さま』、
R・アームストロング『海に育つ』、K・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』、
W・ギブスン『ニューロマンサー』、A・マキャフリー『歌う船』、松本清張『点と線』、
C・オコンネル『ゴーストライター』、J・ル・カレ『スマイリーと仲間たち』、福永武彦『死の島』、
『マチネ・ポエティク詩集』......