直感と直観

過去ログで直感で身に迫る厄災を回避した話を書いた。今回は直感には経験から来るひらめきと霊的な啓示の2種類があることをご紹介する。一般的にはどちらも「直感」の文字があてられているが、後者にはあえて「直観」の文字をあてて区別したい。

随分前の事だ。車で帰省の途中、中国自動車道を走行中に突然出雲大社に寄り道をしたくなった。出雲へ向かうインターまではまだかなりの距離があった。高速道路の車の流れは順調で、制限速度一杯で走行していた。その時、ハンドルを通じて微かに違和感が伝わって来た。普段であれば気がつかないような微かな振動である。最初は路面のつなぎ目を越えた時の振動かなと思ったのだが、どうやらそうではなさそうだ。その瞬間「タイヤかもしれない」と考えが浮かんだ。

その車は購入したばかりの中古車だった。前のオーナーの趣味なのか、当時としてはまだ珍しかったヨーロッパブランドの高価なスチールラジアルが装着してあった。近くのパーキングエリアに車を止めて念入りに前後のタイヤをチェックしたがどこにも異常が見あたらない。このまま目的地のインターまで走っても問題はなさそうであった。

再び高速を走りだしたのだが、すぐさま次のインターが近いことを示す標識が目に入った。その瞬間、何故か訳も無く「このインターで降りよう」と思ったのである。インターを降りて一般道に合流したのだが、連休中のせいで道路はひどく渋滞していた。ノロノロとしか進まない状況に、「しまった何でこんなところで高速を降りてしまったのだ」と後悔したが後の祭りであった。

ノロノロ渋滞の列にはまり込んで数十分。突然ハンドルを通してガタガタと強い振動が伝わってきたのとほぼ同時に「バーン」という強烈な破裂音がして、車が右に傾いた。あわてて車を路肩に止め車から飛び降りた。何と右の前輪がバーストしていたのだ。タイヤをはずしてみると、素人目にもバーストの原因が良く分かった。裂けてバラバラになったスチールベルトの先端が錆びていたのである。また裂けて出来た大きな穴の近くのトレッド面に膨れが発生していた。おそらく釘の様なものを踏んで出来た穴から水分が入り、スチールベルトが錆びたのであろう。その錆が原因でトレッドとスチールベルト部分が剥離し、さらに走行中の熱か加わってバーストしたものと推測できた。走行中に感じた微かな振動はトレッド面に出来た膨れによるものだったのだ。

あのまま高速道路を走っていたらどうなったのか？　高速運転中に前輪がバーストしていれば、車はコントロールを失って・・・。背筋が凍る思いであった。バーストしたのは一般道であったが、もし道路が渋滞しておらず車のスピードが出ている時だったら・・・私は二たび背筋が凍る思いがした。


最初に車の異常に気づき、タイヤが原因ではないかと思ったのは、それまでの運転経験から来たひらめき、「直感」である。直感で原因を正しく推測していたのである。しかしタイヤの異常は発見することは出来なかった。そのまま走り続けておれば重大事故になっていただろう。

しかし走り続けようとした時、突然「次のインターを降りよう」と思った。これが真の危険回避の「直観」である。しかも車のスピードが出せない渋滞した道路に見事に導かれたのである。「直観」は人智を超えたひらめき、つまり霊的サポート（啓示）が働いてこそ機能するものである。