40864. 留数定理を用いた定積分
名前: ラスト 日付: 2010 年 11 月 21 日 (日) 19 時 25 分
∫[0,π] {coskθ/(1 - 2acosθ + a^2)} dθ (|a| ≠ 1, k は正整数)
を求めよ。
という問題に対して以下の略解答が与えられていたのですが, ① から ② の部分が何をしているのかまた何のためにしているのか分かりません。 どうかご教授お願いします。
∫[0,π] {coskθ/(1 - 2acosθ + a^2)} dθ
= 1/2∫[0,2π] {coskθ/(1 - 2acosθ + a^2)} dθ
= 1/(4i)∫_C {z^(2k) + 1}/[{z^(k)}(1 - az)(z - a)] dz (Cは反時計回りの単位円) …①
= [1/{4i(1 - a^2)}]∫_C {a - a^(-1)}z^(k - 2) + … + (a^k - a^(-k))/z + … + {(1 + a^(2k))/((z^k)(z - a))} + {1 + a^(-2k)/((z^k)(z - a^(-1)))} dz …②
= πa^k/(1 - a^2) (|a| < 1); -πa^(-k)/(1 - a^2) (|a| > 1)
括弧が多く読みづらくて申し訳ありません。 何か不明瞭な部分がございましたらご指摘ください。
(大学 2 年)
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解答: 40866. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: 明智小五郎 日付: 2010 年 11 月 21 日 (日) 23 時 16 分
別解:
|a| < 1 のとき,
{1/(2πi)}∫(C)[1/{(tz - 1)(z - a)(az - 1)}]dz …(1)
を考える。 ここで, C: |z| = 1.
|t| < 1 とすれば, |z| = 1 内で z = a だけが極となるので,
(1) は留数 1/{(at - 1)(a<sup>2 - 1)}.
に等しくなる。…(2)
z = e
iθ とおくと, (1)は次の形になる。
{1/(2π)}∫[0, 2π][1/{(1 - te
iθ)(1 - 2acosθ + a
2)}]dθ.
次に, (2) に注意して変形すると,
∫[0,2π]{(∑t
ne
inθ)/(1 - 2acosθ + a
2)}dθ
= 2π(∑a
nt
n)/(1 - a
2)
となる。
次に, t
n の係数を比較すれば,
∫[0,2π]{(e
inθ)/(1 - 2acosθ + a
2)}dθ
= (2πa
n)/(1 - a
2)
となり, ここで、実部を比較すればよい。
a > 1 のときは,
0< 1/a < 1 であるから, 上の結果を用いればよい。
<br>※以上, 高木貞治先生の高著 「解析概論」 から引用させていただきました。 なお, n を k と読み替えてください。
(数学愛好者)
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40869. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: Red cat@管理人 日付: 2010 年 11 月 22 日 (月) 11 時 10 分
ちょっと私から逆質問なんですが,
∫
02π {cos(kθ)/(1 - 2a cosθ + a
2)}dθ
= {1/(2i)}∫
C{(z
2k + 1)/(z
k(1 - az)(z - a))}dz
の下りではどういう変形が行われているのでしょうか??
(馬鹿猫/質問者)
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40870. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: 明智小五郎 日付: 2010 年 11 月 22 日 (月) 17 時 36 分
z = e
iθ とおくと,
dz = ie
iθdθとなり,
dθ = {1/(iz)} dz.
一方, 1 - 2acosθ + a
2 は, (e
iθ - a)(e
-iθ - a) に等しい。
また, z
k = e
ikθ, z
-k = e
-ikθ
となり, 辺々加えると,
z
k + z
-k = 2cos kθ
となるから,
cos kθ = (z
k + z
-k)/2
となり, 結局
{1/(2i)}∫(C)[(z
2k + 1)/{z
k(z - a)(1 - az)}]dz
となります。
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40874. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: Red cat@管理人 日付: 2010 年 11 月 22 日 (月) 20 時 27 分
ありがとうございます。 もう一つ疑問に思ったのが
∫
0π {cos(kθ)/(1 - 2a cosθ + a
2)}dθ
= (1/2)∫
02π{cos(kθ)/(1 - 2a cosθ + a
2)}dθ
の部分なのですが, これはどうなるのでしょうか?
(馬鹿猫/質問者)
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40875. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: 明智小五郎 日付: 2010 年 11 月 22 日 (月) 23 時 07 分
f(x) が連続関数のとき,
∫[0, a] f(x) dx =∫[0, a/2]{f(x) + f(a - x)}dx …(1)
が成り立ちます。
a = 2π, f(θ) = {cos(kθ)/(1 - 2a cosθ + a
2)},
f(2π - θ) = f(θ)
(1)の証明:
a - x = t とおくと, dx = -dt.
∴ ∫[0, a/2] f(a - x) dx = -∫[a, a/2] f(t) dt = ∫[a/2, a] f(t) dt.
∴ ∫[0, a] f(x)dx = ∫[0, a/2] f(x) dx + ∫[a/2, a] f(x) dx.
= ∫[0, a/2] f(x) dx + ∫[0, a/2] f(a - x) dx.
= ∫[0, a/2]{f(x) + f(a - x)} dx.
(数学愛好者)
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40898. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: 明智小五郎 日付: 2010 年 11 月 25 日 (木) 23 時 12 分
ゴールです!
(z
2k + 1)/{z
k(1 - az)(z - a)}
= [{z の (k - 1) 次式}/z
k] + {A/(1 - az)} + {B/(z - a)} …(1)
とおきます。
(1) の両辺にz
k(1 - az)(z - a) をかけると,
z
2k + 1 = {z の (k - 1) 次式}(1 - az)(z - a)+Az
k(z - a) + Bz
k(1 - az) …(2)
となります。 ここで, (2) において, z = a とおくと,
a
2k + 1 = Ba
k(1 - a
2)
となり, B が定まります。
B = {1/(1 - a
2)}(a
k + a
-k)
= (1 + a
2k)/{a
k(1 - a
2)}.
次に, (2)において, z = 1/a とおくと,
a
-2k + 1 = Aa
-k(a
-1 - a)
となり,
A = {1/(1 - a
2)}(a
k+1 + a
-k+1)
= (a + a
2k+1)/{a
k(1 - a
2)}
となります。
さて, 私の式変形によりますと, その本の解答に 『ミスプリント』 があるのではないかと思われます。
詳しくは後ほど......。
(数学愛好者)
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40900. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: りょう 日付: 2010 年11 月 26 日 (金) 01 時 12 分
横から失礼しますね。
その計算は多分こうだと思います。 まずはじめに, (1) の被積分関数に (1 - a
2) をかけたものが (2) の被積分関数なので, それを部分分数分解で計算します。 すると, 容易に確かめられるように,
(z^(2k) + 1)(1/(z^k (z – a)) - 1/(z^k (z - a^(-1)))
になるはずです。 この関数を単位円周に沿って積分します。 (そして 4i ‘1 - a^2) で割ります。)
次に, この関数に次のものを加えてみます。
-(a^(2k) + 1)/(z^k (z - a)) + (a^(-2k) + 1)/(z^k (z - a^(-1)).
すると次のようになります。
(z^(2k) - a^(2k))/(z^k (z - a)) - (z^(2k) - a^(-2k))/(z^k (z - a^(-1))).
これは容易に z の有限項からなる式に展開できます。 これからさっき足したものを引けば, その投稿にあるような式が出てくるはずです。 ただ, (2) の最後の項の符号は + ではなく - ですね。 (2) にあるその式ではあたかも無限項への展開のように書かれていますが, 留数計算では z^(-1) の係数だけ分かればよいので他の項を省略してあるだけです。
かくして, 留数計算で問題になるのは,
(a^k - a^(-k))z^(-1) + (a^(2k) + 1)/(z^k (z - a)) - (a^(-2k) + 1)/(z^k (z – a^(-1)))
での z^(-1) の係数で, それに 2πi をかけて 4i(1 - a^2)で割ればゴールです。
ここからは場合分けが必要になります。 どちらも同様なので |a| < 1 の方だけ説明すると, z が単位円周の上を動くため |z| = 1 であることに注意すれば,
|a/z| < 1, |az| < 1
となります。 これにより第 2 項と第 3 項を等比級数で展開すると, 第 2 項に z^(-1) は現れず (k ≧ 1), 第 3 項に z^(-1) の係数として (a^k + a^(-k)) が現れます (第 3 項には - がついていますが, それと相殺して + になります。 詳しくは自分で計算してください)。 一方第 1 項は常に (a^k - a^(-k)) を与えるので, 足して 2a^k となります。 同様にして |a| > 1 のときは -2a^(-k) になります。
そんなわけなので, 一部符号が間違っているだけで問題はないものと思われます。 蛇足ですが, 1 行目の積分範囲の変換はコサインが偶関数なので, まず [-π, π] にしてから, 周期 2π でずらすと楽です。
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40902. Re: 留数定理を用いた定積分
名前: りょう 日付: 2010 年11 月 26 日 (金) 14 時 10 分
蛇足ですが, 留数定理を使いやすい形への変形について思いついたことがあるので述べておきます。
まず, (1) の被積分関数に (1 - a^2) をかけたものを,
(z^k + z^(-k))(1/(z - a) - 1/(z - a^(-1))
と書きます。 ここで,
z^k + z^(-k) = z^(-k)(z^k - a^k)(z^k - a^k) + (a^k + a^(-k))
と変形すると, 第 1 項は z - a でも z - a^(-1) でも割り切れるので, 後ろの分数式に掛ければ多項式を与えます。 その z^(-1) の係数は, 具体的に展開すると (a^k - a^(-k)) が出てきます。
次に, 分数式に第 2 項を掛けたものは,
(a^k + a^(-k)) (1/(z - a) – 1/(z - a^(-1)))
であり, この部分は留数定理によって, |a| < 1 のときは第 1 項のみが寄与して, |a| > 1 のときは第 2 項のみが寄与します (この部分の単位円周に沿っての積分が分からないのであれば, 留数定理を復習してみてください)。 これをさっきのものと足し合わせるというわけです。
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