ペコリーノのBL読書日記

BLスキーのペコリーノのBL読書日記。素人の感想&個人的な覚書です。100%自分向けのためネタバレ全開です。

「凍る月」夜光花・著 イラスト・高橋悠 竹書房ラヴァーズ文庫

2007-10-18 13:24:10 | 夜光花
 
 昨日に続いて、友人にもらった夜光花先生の本を読みました。
 なんだかんだ文句を言いつつ、夜光先生の本は5冊目です。
 毎回、いろんなテーマに挑戦される夜光先生。今回のテーマは「獣人」です。

 ストーリーは・・・光陽が生まれたとき、占い師が予言した。「この子は二十歳までしか生きられない」と。光陽の母は父親のことを一切話さずになくなった。光陽は祖父母に大切に育てられたが、義務教育以外は家から出ることを許されず、中学を卒業してからは殆んど軟禁状態ですごし、不自由を感じていた。そんな光陽と外の世界をつなぐのは、親友の亨だけだった。
 ある日、光陽のもとを美術愛好家の梁井が訪れる。梁井は光陽を屋敷に呼びつけ、強引に『契約』を迫る。梁井は獣人であり、光陽はその「餌」だと言う。他の獣人に襲われたくなかったら自分と専属契約しろ…そう迫る梁井。
 お約束どおり、光陽は契約を結び、その後、光陽を狙う別の獣人が現われ、光陽をめぐり梁井と戦う。一難去ったところで、実は獣人だった亨が、覚醒してしまう・・・。
 
 獣人モノでも、吸血鬼モノでも何でもいいのですが、大事なことは「設定」です。
 例えば吸血鬼は十字架やニンニクに弱い(あるいは弱くない)、こういう能力はあるが、こういうところは人間と変わらない・・・など。
 「凍る月」に関して言えば、設定がめちゃくちゃなのです。
・光陽は獣人の餌となる種族で、獣人だけがわかるニオイ(フェロモンのようなものか?)を発している。
・獣人は餌を食べないと人間の形を保てない。
・獣人はそのまま『餌』にかぶりついてもいいし、血液や精液(←オイオイ)を飲んでもよい。
・餌が女性だったら、精液の代わりに何を??契約した餌がいない獣人は身体の一部が欠損している。
・餌は肉体をかじられても再生する。
・獣人も肉体が再生する。
・肉体は再生するが、再生スピードよりも早くトドメをさせば死ぬ。
・獣人は「覚醒」するまでは普通の人間と同じ。
・命の危険が迫った時に覚醒する。
・餌は非常に数が少なく、獣人と餌が出会うのは稀。
・餌は契約すると、ニオイを発しなくなる。
・餌と獣人の契約は、獣人の血液を呑むこと。
・餌は獣人と契約すると、お腹の中に「珠(赤い)」が出来る。
・その珠は獣人は外側から見つけることができる。
・餌は獣人にとって、すごく美味しい。しかし珠ができると契約した獣以外が食べたらまずく感じる。
・珠を取り出したら契約は無効。
・餌は契約しないと二十歳までに死ぬ。
・餌は女性との間に子供を作ったら死ぬ。(女性の「餌」という設定はないらしい)
・餌の子供は餌になるが、獣人の子供が獣人になるわけではない。
  とどめ
・獣人は普通の人間を食っても良い(肉体の欠損も修復されるし、支障がない)

 あと一冊続くそうですが、大丈夫なんでしょうか?
 そもそも「餌は数が少ない」「契約は俺とお前のため」「餌を食べないと人間の身体が保てない。俺は獣になりたくない!」と梁井は言うのですが、後半でいきなり、人間を食う獣人が出てきて、設定が破綻します。だったら契約する必要ないじゃん!って。それでも獣人が光陽を求めるのは、「人間より美味しいから」って・・・。
 ストーリーが破綻していると言ってもいいでしょう。

 それでも何とか良い点を探すなら・・・
1)夜光先生の作品には珍しく、攻めに多少、口答えする受け。
2)ちょっとコメディっぽくしたところもあるがんばった文章。
3)夜光先生の作品には珍しく、三角関係の予感
 でしょうか・・・。

 3)に関しては、最初、幼馴染の光陽と亨が出てくるので、これがカップルか?と思いきや、途中から出てきた梁井がかっさらいます。
 梁井と光陽のカップル誕生ですが、なんと亨も獣人だったというオチつきで、この後の三角関係が予想されます。
 夜光先生も三角関係を念頭に書かれたのだと思いますが、最初から亨が光陽を好きなだけで、光陽は引き気味で、梁井が登場した瞬間に先が読めてしまいます。これまでの夜光先生の作品では、受けが流されるばかりでしたが、この作品では珍しく積極的に攻めを好きになるので、三角関係という要素は薄れてしまいます。光陽が二人の男の間で悩む展開にすればよかったのに・・・もったいない。
 「亨が獣人」というのも、比較的早い段階でバラされてしまうので、途中、ヒントは与えつつ、これはギリギリまでひっぱったほうがよかったのではないかと。
 5作品読んでみて思うのは、夜光先生には小説を書く「技術」が徹底して欠けているということです。「つまらない」というより「下手な小説」という表現が適切でしょう。
 着想は良いにしても、構成やセリフがお粗末なので、作品のレベルが低い。良い編集者がつけば少し磨かれるかもしれませんが・・・。

 初期の頃から比べると、登場人物が増えていますし、攻めキャラ、受けキャラのバリエーションが少しずつ増えているように思います。が、下手な小説であることに替わりありません。

 後書きに「担当のT井さま。いつもありがとうございます。今回は原稿を提出してから後悔している様子がありありと・・・」と書いてありました。
 無論、謙遜で書かれている可能性もありますが、私は今回はT井さんは本当に後悔していると見ましたよ。このシリーズで本当にもう一冊、出すんですか?

 2作連続で読んで気付いたのですが、夜光先生の作品で、攻めがよく言うセリフは
「指を増やすぞ」でした。

 獣人の設定だけで、この作品は完全な失敗作だと思います。
 ご作品読んで、一番良かったのは数年前のデビュー作だなんて・・・。

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