ペコリーノのBL読書日記

BLスキーのペコリーノのBL読書日記。素人の感想&個人的な覚書です。100%自分向けのためネタバレ全開です。

「ウサギ狩り」鈴木あみ・著 イラスト・街子マドカ 二見書房シャレード文庫

2008-09-25 21:35:01 | ボーイズラブ小説
「ウサギ狩り」鈴木あみ・著 イラスト・街子マドカ 二見書房シャレード文庫
 2008年9月20日初版 260ページ 619円+税

 あなたの頭にある日突然、ウサ耳が生えてきたらどうしますか?

 ストーリーは・・・
 伝染病により女性が滅亡し、男だけになった世界で起きた異変―それは、ある日突然動物のミミが生え、同性を惹きつける強烈なフェロモンを発する「ミミつき」の存在が確認され始めたことだった。高価に取引される彼らを狩る「ウサギ狩り」。ウサギの「ミミつき」になってしまった宇佐美一羽の前に、高校時代の同級生で今は狩野組組長である狩野が現れる。あっという間に捕獲された一羽は玩具として売り飛ばされることを覚悟するが、手始めに狩野から屈辱的で淫らな行為を強いられて…。 というもの。


 長年おなじみだった、シャレード文庫のデザインが変更になったようですね。
 あのデザインに慣れ親しんでいたのでちょっと切ない今日この頃です。

 さて、このお話ですが、読みはじめに抱いた印象は「マージナル(萩尾望都先生・著)」+「セックス・ピストルズ(寿たらこ先生・著)」でした。
 どちらもBLファンにはお馴染みの作品だと思うので、説明は省くとして、その「ぱっと見の印象」は見事に覆されました。この作品と比べるなんて、両作品に失礼でした。
 
 鈴木先生はあえてそうしたんだとは思いますが、あまりにも設定がご都合主義で、読んでいてバカらしくなってきました。まぁ、教養をつけるためにBLを読む人はいないと思いますが。「ウサギの耳と尻尾がある受けが居たらおもしろいかも!」くらいの思いつきで、適当な設定だけつくって、書いたらこうなりました・・・ってな話でしかないように思いました。

 「風邪」を根治できる薬すら発明できていない人類ですから、ある日、突然、ウサ耳と尻尾が生えてきて・・・って病気が出てもおかしくないかもしれません。
 で、このお話は、そういう症状が出てきてしばらくたっている(少なくとも十数年?)のに、物語世界の政府とか、登場人物にせよ、何も手を打っていないのが驚きです。
 女性が全部死に絶えて、子供が生まれない・・・そんな状況で皆、自暴自棄になったとでも言うのなら理解もできるのですが、マッドマックスや北斗の拳のような状況になるようなこともなく、強烈なフェロモンを撒き散らすウサギ耳と尻尾を持つ人間をレイプしようとする人間が居る以外は、いたって平和な様子です。

 男性をひきつけてやまないフェロモンを出すウサ耳男は、いろんな男の股間を猛らせ、レイプ未遂や誘拐未遂は日常茶飯事。吉田珠姫先生の「ピジョンブラッド」
の主人公くらい、男を惑わすのかと思いきや、登場するウサ耳とカップルになる男はなぜか自制が利くのが不思議。

 人間にウサギの耳が生えてくるので、「耳が4つになるのかいな?」と思いましたが、ウサ耳が聞こえるのか等は、作中では一切、触れられません。性感帯ではあるようですが。
 どんな条件の人間にウサ耳が生えるのか・・・「わからない」そうです。わからないならわからないでいいのですが、作中に登場するウサ耳男の名前が宇佐美一羽と井奈波真代(いなば ましろ)ですから。「名前がウサギにちなんでいる奴が発症するんじゃないの?」と、思わずつっこみを入れてしまいました。

 こういう「妙な」世界観を成立させるためには、細部まで設定を考えておくことが必要だと思うのですよ。
 なぜ、このような病気が出たのか・・・作中では不明にしておくにしても、鈴木先生は何か考えておられるのでしょうか?
 なぜ、ウサギ人間になるのではなく、耳と尻尾しか生えないのか(絵ヅラの都合なんでしょうけど)。
 生えてきた耳と尻尾はどうなのか。
 子供が生まれないという世界で、登場人物たちはどう考え、行動しているのか(エロしか考えていない)。
 主な登場人物は4人(メインカプに攻めに憧れていた親戚の少年、後にその少年とくっつく男)なのですが、その4人以外のことが何もわからないのです。
 例えるなら、マンガや映画のスクリーンで、メインキャラの4人以外が真っ白・・・そんな状態でしょうか。

 「毛色の変わった作品を読みたい」「適当にエロがあればそれでいい」そんな方にはいいのかもしれませんが、多少なりとも物語性を求める人にはお勧めはできない作品だと思います。
 
 


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