・はじめに
グッピーを他所から同一の水槽に混ぜたときに発症することがある通称”水あたり”。
鰓を閉じて、腰を振るような運動を呈し、その後回復するものもいれば、症状が進行し尾ビレの脱落を生じたり、最悪の場合斃死することもあります。
非感染性や感染性でも寄生虫・抗酸菌を含めた細菌類・ウイルスなど種々の原因があると考えられています。
本症状は他所からの導入時や、別々の水槽から合わせた際に起こるなど、ある一定のストレス状態がかかる条件時に発症することが認められています。
これらの問題は、結果的にグッピー飼育者の頭を悩ませる問題の一つとなっており、飼育者数が増えない要因の一つであるとも考えられます。
zuzuさんのアドバイスを受けて、今回は既知の報告を基に種を特定できないまでも原因が「細菌性」であると仮定して、
細菌性の中でも特に「嫌気性菌」が症状に関わっているかどうかを調べました。
・材料と方法
使用した抗生剤は特筆して嫌気性菌に有効であり、尚且つ菌が耐性化するまでにプロセスを経ないと耐性化できないものを使い、
試験方法は症状を発症していない、①外産×国産、②外産×外産、③国産×国産の組み合わせを計3群、コントロールとして処置をしない④国産×国産を無作為的に抽出し、3Lプラケースへそれぞれ混泳させ、塩は使用しませんでした。
水換えは毎日90%行い、その都度①~③グループは用意した抗生剤入り水を追加しました。
④の無処置群は抗生剤が入っていない水を追加しました。
5日間、①~③グループは嫌気性菌をターゲットとした抗生剤添加水による水換えを100%行った後、残りの5日間で抗生剤が入っていない水を50%ずつ水換えしました。
そして試験期間中および試験期間後の状態を観察しました。
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・結果
嫌気性菌をターゲットとした抗生剤投与群は試験期間中に3/3群で症状を呈することはありませんでした。
④の無処置群は5日後に軽度の”水あたり”症状を認めました。
・考察
”水あたり”を発症する要因はpHショックなど非感染性と、幅広い種の感染による感染性に大別できると考え、
感染性では原因の一つとして嫌気性菌が関与している可能性が結果より示唆されました。
今後はより試験数を増やすことで統計的に有意か否かを判断すると共に、感染性における非細菌感染を含めて効果的な方法を模索していきたいと考えています。
また、症状を生じなかった①~③の処置群に非処置群の個体を投入することで、症状を発症するか否か追加で試験していきたいと考えています。
・最後に
薬は使い方を誤ると治療効果がなくなるばかりか、副作用や耐性菌の出現などによりかえって魚に害を及ぼします。また、薬による環境汚染を引き起こさないように注意し正しく薬を使用していく必要があります。
魚病の予防には、適正な飼育密度を守るほか給餌や水質管理など日頃の飼育管理が重要です。もし投薬が必要になっても、必要最小限の使用にとどめ、安易に薬に頼ることのないようにしましょう。
(尚、一部の薬品の場合、国内では獣医師による処方が必要なこともあります。どうぞご注意ください)