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ファーストクラスの死-米航空2社も国際線で縮小へ

2012-07-25 10:15:37 | 定期航空

<ファーストクラスの死-米航空2社も国際線で縮小へ>

2012年 7月 20日  12:49 JST

 米国の航空会社は国際線のファーストクラスを縮小する方針だ。空の旅で長年おなじみになっているファーストクラスの超高級なサービスは、重大な欠点があるからだ。それは正規料金を支払ってファーストクラスを利用する顧客がほとんどいないということだ。
 出張の企業予算が限られ、経済が脆弱(ぜいじゃく)で、ファーストクラスの料金が往復で1万5000ドル(約118万円)にも達することがある今日、ファーストクラスの主な利用者は、マイルをためてアップグレードした乗客になっている。
 過去数十年にわたって、国際線のファーストクラスは空における「セルフインダルジェンス(自堕落、放縦)」の象徴だった。国内線のファーストクラス(それはエコノミークラスに近い)よりも数段格上で、アルコールは飲み放題、座席はもっと大きくてふかふかだった。
 しかし、この最上級のサービスは近年、米国の航空会社から徐々に姿を消しつつあった。米国の航空会社が欧州、アジア、それに南米に定期的に飛ばしている500機を超える航空機のうち、ファーストクラスを提供しているのはわずか27%だ。
 そして今、ファーストクラスを堅持している米国の2社、アメリカン航空とユナイテッド航空もファーストクラスの縮小に動いている。
 AMR傘下のアメリカン航空は5月、国際線のファーストクラスの座席数を約90%減らし、現在の750席から80席にする計画を発表した。ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス傘下のユナイテッド航空は機体の見直し作業を終えつつあり、これにより国際線のファーストクラスの座席数が3分の1減る見込みだ。
 オーストラリアのカンタス航空やドイツのルフトハンザ航空などの海外の航空会社も最近、ファーストクラスを縮小している。
 航空会社各社は実質的に高級サービスの再ブランド化を図っている。つまり、ファーストクラスについて、デザインを改良したビジネスクラスと入れ替えている。そうした改良型ビジネスクラスの質は、現在の大半のファーストクラスと張り合えるし、1990年代当時のファーストクラスを凌駕するほどだ。その一方で、エコノミークラスの座席数を増やし、新たにプレミアム・エコノミークラスを導入している。プレミアム・エコノミークラスはエコノミーと同じシートだが、座席の間隔がより広くなっている。
 航空会社各社は需要に応じて、業界が長年使用してきたファースト、ビジネス、それにエコノミーという3段階のクラス分けを、よりコストを意識したクラス分けにゆっくり移行している。つまり、ビジネス、プレミアム・エコノミー、それにエコノミーという3段階だ。
 航空業界を専門とするコンサルティング会社アイデアワークスのジェイ・ソレンセン社長は、「航空会社は儲かる要素を維持し、儲からないものを捨てる傾向にある」と指摘し、「ファーストクラスを利用するのに正規料金を払う人が全くいない、と航空会社の幹部がこぼすのを何度も聞いている」と話した。
 実際、市場調査会社アトモスフィア・リサーチ・グループの調査によると、国際線のファーストクラスの利用者のうち、正規料金を支払っている人はわずか4分の1だ。米国内線だと、15%近くしかいない。国際線のファーストクラスの利用者の大半は、ビジネスクラスや特別のエコノミークラスの料金を支払ってチケットを購入した後に、ためたマイルを使ってアップグレードした顧客だ。
 このような節約ムードの現状を受けて、航空会社各社はプレミアムキャビン(エコノミー以外の上級クラス)を1つに統合してビジネスクラスとするようになっている、と航空会社の幹部やコンサルタントは言う。ビジネスクラスは正規料金を支払う乗客の比率がずっと高いためで、狙いはより多くのビジネス客を引き付けることにある。ビジネスクラスという呼び名の方が、ファーストクラスよりも企業の出張担当責任者からの受けがよいからだ。
 例えば、企業による空の出張費管理をサポートしているコンサルティング会社のアドビトによると、同社の顧客企業のうち、従業員が長距離便を利用する際にファーストクラスの選択を認めている企業は20%に満たない。しかし、75%の企業はビジネスクラスの選択を認めているという。
 米国の大手航空会社はより短いルートについては、今もファーストクラスと呼ばれるサービスを提供しているが、大半はフライトの頻度が高い顧客向けの特典として使われている。国際線に関しては、航空会社はファーストクラスとビジネスクラスに気前の良い上位顧客を引き付けている。彼ら上位顧客は航空会社にとって一番の稼ぎ頭だ。アメリカンによれば、顧客全体のうち上位25%が全体の収入の70%を占めている。
 一方で、海外の豪華な航空会社の一部は、ファーストクラスに改めて資金投入しており、一部のルートで競争が激化している。シンガポール航空はダブルベッド付きの個室のスイートルームを提供しており、カップルにはシャンパンを用意している。エールフランスKLMの一部の便には現代美術のギャラリーがある。エミレーツ航空はシャワーのほか、ミニバー付きの個室スイートルームも用意している。
記者: Jack Nicas  





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