88歳の米寿のお祝いで、私たちは老人施設で童謡を歌った。車いすや座ったままだったが、認知症のお年寄りのとエアロビクスもした。軽快なリズムに笑顔ではしゃいでくれた。弁護士の角田儀平治さんの米寿のご挨拶は、戦前、戦後の荒波を乗り越えた果敢な人生を語ってくれた。角田先生は”散歩をしながら道の端にいる小さなありさんにも話しかけ、心を通わせて楽しんでいる。”と話していた。お昼を御馳走になり、角田先生やみんなと伊香保温泉に出掛ける事になっていた。私は”レッスンがあるので行けない。”と言った。すると角田先生は私の所に来て、耳元に手をあてて、小さな声で囁いた。”後で二人きりで行こう”あまりの言葉に思わず”ハイッ”。そして何年か過ぎ、角田先生が亡くなった事を知った。ある時、角田儀一さんにお会いする機会があり、その話をした。”父は坂口さんをナンパしたんですね。”と儀一さん。その後東京駅の新幹線ホームで、偶然お会いした時も”父がナンパした方ですね。”と覚えておられた。庶民の為に闘う弁護士、角田儀平治。角田先生の豊かで自由でさわやかな言葉だった。角田先生のたくさんのお話をもっと聞きたかったのにと思いながら、それきりになってしまった貴重なご縁だった。
坂口せつ子
2005年11月21日木曜日
高崎市民新聞連載より転載
坂口せつ子
2005年11月21日木曜日
高崎市民新聞連載より転載
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