(はてなブログに引っ越しました。当該エントリーはこちらです。)
毎年この時期になると、環境浄化の名の元にあちこちの河川や海でEMだんごを投入するイベントが行われます。
そして今年もまた7月18日の「海の日」に合わせ、環境NPOの呼びかけで各地でEMだんごの投入が行われました(→一例)。
しかしこういうイベントに参加する人達は、このEMだんごというものが一体何なのか考えた事はあるのでしょうか。
そしてこのイベントが、以前から様々な批判を受けているのをご存知なのでしょうか。
つい先頃も、こんな話題がネット内を駆け巡りました。
(togetterより)
「NHK名古屋放送局のEM菌報道」(←クリック)
EMだんごはどうやって作るのか、ネット内を探せば作り方はすぐに見つかります(例えばこちら)。
要は、土に「EMぼかし」「EM活性液」「EMセラミックパウダー」を混ぜ、それを団子状にして乾燥し、表面に白カビが付けば出来上がりでそれをEMだんごと称し、これが環境浄化に効果があると宣伝されている訳です。
でもこれってよくよく考えてみれば、有機肥料をたっぷり撒いた畑の土を作っているのと、何ら変わりはないのではないですか?
土に混ぜ込むEMボカシやEM活性液の中には、微生物が発酵する過程で生み出された様々な有機酸が存在し、それを熟成させる事で有機肥料が出来上がります。
それを土に撒いて作物を作れば有機農業となる訳ですが、ではこうして出来た畑の土は、果たして川や湖や海などにどんどん投げ入れても構わないのでしょうか?
ちょっと想像してみて下さい。
だんご状の見た目にすっかり騙されていますが、河川にEMだんごを投入するという事は、有機肥料をたっぷり含んだ畑の土を、スコップでドボドボと河川に投げ込んでいる事となんら変わりはないのです。
果たしてこれが、河川の環境を良くしてくれると言うのでしょうか?
そもそもEMだんごというものは、とある農家の方が環境浄化のために河川にEM発酵液を投入しても効果が見られず、ならば液体ではなく固体にすれば良いのだと思いつき、EMを混ぜた土を団子状にして川に投げ入れたのが始まりでした。
やがてその事例がEMボカシネットワークを通じて全国に広がり、環境のためにと思ったお年寄りのグループがだんご作りを始め、それに環境教育を行っている近所の小学生が仲間入りしていきます。
そして「老人達と小学生が協力して河川浄化活動を行う姿」が善行としてマスコミに取り上げられ、いつしかEMだんご投げが立派な環境浄化活動として定着してしまいます。
こうして広がっただんご投入活動ですが、ではEMだんごが環境を改善するという根拠は一体何でしょうか。
それは実は、
EMだんごを考えた人がそう思ったから。
が、そもそもの根拠だったのです。 (え゛?)
そしてそれは、
そう聞いたから。
新聞に載っていたから。
テレビでやっていたから。
あちこちでやってるから。
と、ただ口コミだけを根拠として活動は広まっていき、やがて
それは「善い事」だから。
と、いつしかEMだんごを作る事や投入活動に参加する事が「善い事」とされ、だんごを投入すると環境が良くなると皆に信じられる様になりますが、実はそこには科学的根拠は何もなく、あるのはただの「思い込み」でしかなかったのです。
そして一度そう思い込んでしまったら、もうそれ以外の考えが及ばなくなるというのがこの「思い込み」の怖さです。
今一度、よく考えてみましょう。
有機肥料たっぷりの畑の土を、河川にばら撒く事は「善い事」でしょうか?
身近な環境や美しい自然を守りたい、子供達がそう願う気持ちは大いに尊重され、大切に育まれるべきものと思います。
そして自然は単純なものではなく、人間の誤った行いによりいとも簡単に壊されるし、それを元に戻すには長い時間と大きな努力と「知恵」が必要であるという事を、大人達は伝えていかねばならないと私は思います。
しかし肝心のその大人達は、一体何をしているのでしょうか?
投入活動を募るNPO
見て見ぬふりをする行政
無自覚で応援する議員
生徒を先導する教師
「善行」として持ち上げるマスコミ
いいかげんに目を覚ませ!
そう声を大にして、私は訴えたいのです。
(参照)
・自ブログより「EMだんごを投下する前に考えて欲しい事」
・ 同 「自然水系に微生物資材を投入するというのはどういう事か」
・ 同 「EMへの疑問(14) ~活性液って何?~ 」
・Business Journalより「泥のEM団子は環境を汚染するゴミ? 海や川の水質浄化、生態系復元のウソ」
「富士山むすびの会」の活動については、こちらでも言及されています。↓
http://megalodon.jp/2013-0207-2103-03/www.mskj.or.jp/chinika/9206cnkfudoki3.html
正直、あの規模の面積にあれぐらいの量では実際は「気休め」程度のものでしょうが、ここでの注目点は、何かせずにはおれないという人々の「善意の心」でしょうね。
そして、その事によって環境が改善されたと思う気持ちは海や河川へ投入する人達と共通する所でもあります。
問題は、そういう行動が製品の宣伝に利用されるという所で、それを見た人々はただ見たままに信用してしまい、そうして口コミだけが広まって今に至ってしまった訳なのですね。
富士山関係はこちらのブログ記事が参考になります。↓
http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20131110/1384093221
http://d.hatena.ne.jp/newmoonakiko/20090822/p1
背景には世界救世教の信者の思い込み?
> さらに恐ろしいのは、EM菌食品なるものを製造していて、売っていることです。
ええと、EM菌食品というのが何を指すのか分かりませんが、EMを用いた有機農法で作られた農産物ならば、お店で売られているものについては危険はありません。
「EM」と名付けられていたらすべて危ないというのは、それはそれで危険な思考です。
EMというのは【普通の】微生物資材ですから、正しく使用されていたらそれはそれでいい訳です。
詳しくは自ブログのこちらを参照下さい。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/da795e1d4296bbad3aa6c7e89ec819b0
EMで問題となっているのは、「万能」という神格化により、間違った使い方がなされている点で、その最たるものがこの環境浄化活動なのですね(最近は放射線の消滅などと、より明後日の方向に進んでいますが)。
> 一日も早く、いんちき科学が、なくなるといいなあと思っています。
そうなればよいのですが、残念ながらそううまくいかないのが現実というものです。
より思考を深めるためにも、こちらの方のブログもお読みいただければと思います。↓
http://interdisciplinary.hateblo.jp/entry/2016/07/17/171247