杜の里から

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Nスペ「被曝(ばく)の森2018」は前よりはマシだったけど

2018年03月20日 | 原発
 

(「はてなブログ」に引っ越しました。該当エントリーはこちらです。)


2018年3月7日、もうじき震災7年目を迎えようとするこの日22時25分、NHKスペシャルで「被曝(ばく)の森2018~見えてきた汚染循環~」という番組が放送されました。
これは2016年3月6日に放送された「被曝の森」の続編として製作されたものですが、結論から言いますと、まあ前作よりはいくらかマシになった程度という感想でした。

帰還困難区域となった阿武隈山地で、動植物への放射能影響の研究を行なう科学者達の姿を追った前回は、徐々に明らかになる放射能の影響を思わせぶりな演出で紹介し、あげくただ不安感が増すばかりの印象だけが残ったというものでした。
今回は続編という事で不安はありましたが、前回よりはいたずらに不安感を煽る様な過剰な演出は控えられていて、その分科学者達の研究報告も前回よりは冷静な目で見る事が出来ました。

番組を進行するナレーションは、きつい印象の伊勢谷友介から大沢たかおにチェンジし、その語り口も出来るだけ感情を押し殺した平板なトーンで、一語一語はっきりと、そして出来るだけゆっくり語るという形に変わり、それがこの番組全体に新たな印象を形作る事になっています。
ただ個人的に言えば、この様なナレーションならばわざわざ俳優にせずとも、NHKの局アナでもよかったのではないかと思うのですが、そこの所の番組編成側の意図はよく分かりません。

しかしながら、途中途中に流れる効果音(音楽も前回同様)と共に、その都度映し出される美しい阿武隈山地の映像など、相変わらずのイメージ先行の演出手法には正直うんざりします。
制作者は多分、人が立ち入れなくなった森の悲しさというものを象徴的に表したかったのでしょうが、地元の人達は皆そんな事は分かっている事ですし、その美しい故郷を失った喪失感を今も抱いているはずです。
そんな人達に対して、この映像は残酷ではないのか? 他人事ながらこの風景を見ると、ついそんな余計な心配をしてしまいます。

番組冒頭のプロローグ、いわゆる【掴み】の部分でも、そこで使われるのは極端に高い放射線量の映像という、相変わらずの演出でした(以下書き起こし中( )内の数字は放映時間、強調は引用者によります)。
原発事故から7年が経つ福島。
夜、立ち入りが厳しく制限された区域のゲートを動物達が行き来している。
キツネ、アライグマ、そしてイノシシの群れ。
ゲートの向こう側、人の住めない世界は一体何が起きているのだろうか。
ここは大量の放射性物質物質が降り注いだ、言わば「被爆の森」。
面積は3400ha、東京23区の半分に相当する。
放射線量は原発すぐそばの森で毎時60マイクロシーベルト。東京などの自然放射線量1500倍だ。


(音楽 瀬川英史)
私達は事故のあと、この森で記録を続けてきた。
動物や植物に放射線の影響はあるのか。科学者達が最先端の技術を用い、研究を行なっていた。
人の姿が消えて7年、今ここで新たな事実が次々と明らかになっている。
森の中で放射能汚染が循環するメカニズム、動物の染色体で異変が起きている事が分かってきた。

 研究者  「膨大な犠牲の上に成り立っているこの壮大な実験の中で、何かやっぱり情報を取ってこなくちゃいけない。 法則性を明らかにしていかなくちゃならない。それは次世代のためでもある。」

未曾有の原子力災害が生み出した「被曝の森」。
その森で進む汚染の実態に迫る。



初めは正直またかと思ってしまう出だしでしたが、内容が進むにつれ、これまで報告されてこなかった明るい材料もあった事が分かります。
まず番組冒頭に登場した「原発すぐそばの森」で高線量を示す映像ですが、そこは本当に原発のすぐ隣にある森で、ここは他の場所と比べても最も放射線量が高い場所である事が語られます。
(7:14)
手付かずのままの帰還困難区域。放射性物質は今どうなっているのか、科学者達の調査に同行した。
向かったのは福島第一原発のすぐそばの森。



これまで高い放射線量に阻まれ近づけなかったが、ようやく短時間なら調査できる様になった。
放射線量は毎時60マイクロシーベルトに達する。


そして、そこの土壌のセシウムの状態を調べる日本原子力研究開発機構の飯島和毅博士から、森から流れ出す川のセシウム濃度は、飲料水の基準1ℓ当たり10ベクレルを大きく下回っている事が明らかになった事と、そのメカニズムが語られます。
(11:20)
研究チームが考えるメカニズム。
土壌に浸み込んだセシウムは、粘土鉱物の隙間に入り込むなどして浅い部分に留まる。
そのため地下水の層まで到達せず、源流の水は汚染を免れていたのだ。



 飯島 「水の中に溶けている放射性セシウムの濃度というのは、一番高い河川でも1Bq/ℓを下回っている、非常に低い濃度であると。 放射性セシウムはどんな森林であっても、ほとんど森林の所から河川には流れていかないという事が分かってきました。」

森がセシウムを閉じ込めるダムの役割を果たし、下流の汚染を防いでいたのだ。
しかしこういう明るい話題から一転、その後は汚染が森の中の生物達に深く浸透し、「汚染の循環」が起きている事例が次々と紹介されます。

昆虫の専門家(茨城キリスト教大学助教)桑原隆明さんが調査しているスズメバチの巣からは、平均で1kg当たりおよそ1万ベクレルの放射性セシウム濃度が検出され、その原因は木の樹皮にある事が明らかになります。
(14:30)
植物に含まれる放射性物質を可視化した東京大学名誉教授の森敏さんは、カリウムと似た性質のセシウムを植物が吸収する様を紹介します。
(16:40)


(17:08)
 「要するに植物が吸えるセシウムがあれば吸っている訳ですね。という様な目で、風景を見なきゃいけないと私は言いたいんですよね。
 非常にきれいな自然なんだけど、でも我々は見えないものを見なくちゃいけない。」
森さんと、孵化しなかったヤマガラの卵からセシウムを検出した日本野鳥の会の山本裕さん、そして桑原さんの3人は、森で見つかったシジュウカラの死骸を分析し、血液が集まる部分が一番汚染されてる事を知ります。
(20:30)


山本 「この映像はびっくりしたんですけど、これは脳の部分にセシウムが入ってるって様子が分かります。
 やっぱり次世代の所でどれくらいセシウムが効いてくるのか、影響があるのかないのかちゃんとはっきりするためには、まだまだずっと見ていかないといけないとこが多いんだなと思いました。」
桑原 「後はもう半減期が長いセシウム137がほとんどな訳で、これはもう中々なくならないという事は分かっている事なので、まあ悲劇的な事が実際に今起きてますよね。」
森の木の汚染を調べてきた福島大学のヴァンシル・ヨシェンコさんは、汚染が木の内部にまで及び、セシウムの汚染の90%以上は土壌にあるとの報告を行い、林業再生に望みをかける住人達は失望します。
(25:40)


セシウムを含んだ木を伐採すれば、森の放射線量は下がると思っていた住民達は衝撃を受けた。
(中略)
住民 「今聞いた話では、植え替えるというとかなり、もう長い年月過ぎなきゃ津島マツって生まれてこないのかな、そう感じますよね。」
番組中盤(27:50)~(33:30)までは、帰宅困難区域となった浪江町津島地区赤宇木で現在も家屋の線量を計り続け、元の住民達に便りを書き続けている区長の今野義人さんの活動や、福島市に避難中の飯舘村長泥地区住民の集まりなどが紹介されます。

(33:35)から後半が始まり、ネズミやアライグマなどの染色体を調べる弘前大学の三浦富智さんが、切断された染色体が修復される際に誤った形で修復される「二動原体」をアライグマから見つけます。
そして比較で調べた青森県のアライグマからはそれはまったく検出されず、帰宅困難区域周辺で捕獲されたアライグマからは0.6%の頻度で発見された事が紹介されます。
ここまでで終ってしまうのが前回の作り方でしたが、今回は三浦さんの以下の言葉も紹介しています。
(38:10)
三浦 「異常が出たイコール大変なことが起こっているという事ではなくて、その異常のレベルが頻度がですね一体どういう意味を持ってくるのか、長期にわたってどういう変化をしていくのかって事を追跡調査していきたい。
そしてニホンザルを観察していた東北大学名誉教授の福本学さん。
前回放送でサルの骨髄中の血液を作る細胞に異常を発見しましたが、今回はその続きが紹介されます。
(40:15)(前回映像)
サンプル数は、前回は9匹のサルとしか紹介されませんでしたが、今回は5歳以上のサル18匹から7万個の細胞を数えたと紹介されます。
しかしそこに現れたグラフは…。
(41:00)
その結果だ。
縦軸は血球の基になる細胞の数、横軸は筋肉中の放射性セシウム濃度を示している。
大人のサルでは筋肉中のセシウム濃度が高くなるほど血球のもとになる細胞の数が減少することが確かめられた。


前回放送の時はこんなグラフでした。

   

しかしこちらのグラフは、福本さんの参考メモを元に番組スタッフによって作成されたものでした。
果たして今回のグラフはどれほど正確なものなのか、前回と違う縦軸の数字の差は何を意味するのか、自分にはよく分かりません。
ただ今回の注目点は、細胞が減っていても血液には異常がないというのが分かってきたと紹介された事です。
福本さんは、細胞の減少を補うため細胞から血液への変化のスピードが速くなり、そうして血液を正常に保っているのではとの仮説を立てています。
(42:27)
福本 「何かうまいこと障害に対して個体が対処している状態だと思うんですよ。無理をしている可能性が極めて高いって事です。ですからそれが長い間ずっと続いた場合にですね、うまいこと馴化、慣れてしまうのか、あるいはどこかでこれ以上無理だと破綻をきたすのかというのは今後の問題です。
そして番組では、福本さんが染色体異常を研究している三浦さんと共同で、二動原体の染色体異常を探し出す新たな研究をしている姿が紹介されます。
(44:48)
福本 「まだまだその野生生物の体内には多くの放射性セシウムが残留している訳ですよ。そういう意味で、事故としては過去のものなんですけど、被曝は現在進行中なんですよ。
 本当は何が起こっているのかって事を明らかにしていくのが、我々の仕事だという風に考えているんです。
そして番組は、避難先で「百年後の子孫(こども)たちへ」というふるさとの歴史や文化を伝える冊子を作る、今野義人さんの活動を紹介してこう締めくくります。
(47:45)
今野 「放射能がなくなった時にね、我々の子供たち子孫たちがね、記録誌を見て、あ、こういう風なだった、では自分達も帰ってみて、そこを今一度耕してもらいたいという気持ちが、望みなんですよね。
 先祖に思いをはせながら、我々が先祖から受け継いだ農地や家を守ってきた事の様に、そこでみんなわいわいがやがやお祭りとかやってもらって生活してもらいたいなと。そのまま荒地にするんじゃなくて、今一度元の姿に戻して、そこでまた100年過ぎてもそういう風な思いを持っていただければなという風な気持ちですね。」

原発事故によって汚染された森、元に戻るには人間にとって気の遠くなるような時間が必要だ。
汚染の循環がこの地に何をもたらすのか、多くの謎と悲しみを抱えたまま、被曝の森は7年を迎える。

(森の空撮にエンドロール)

(終)
失われた故郷への望郷の思いは確かに胸を打つものがありますが、しかしこの様な番組構成には個人的にはどうしても違和感を覚えます。
タイトルは「被曝の森」であり、そこで研究する科学者達のレポが本来の主題のはずですが、前回と同様に、番組はそこに「帰宅困難区域」というくくりを設け、元の住民達の「失われた故郷」への望郷の思いもあちこちに織り込んでいます。
この「故郷への思い」と汚染された森での研究の話とは、本来別の次元で捕えるべきものと思うのですが、ただ「汚染された場所」というキーワードで一緒くたにして情緒的に表現してしまう所が違和感を覚える所であり、この番組を好きになれない由縁でもあります。

この森で見つかる様々な現象はすべて、それまで実験室上でしか語られて来なかった放射能影響に対する「新たな知見」であり、そこで得られる知識は将来絶対何かの役に立つ、科学者達は皆そう信じて研究を続けているのですが、その思いをスタッフはどこまで真摯に受け止めたのでしょうか。
前回と違い、「まだまだ見ていかなければならない」という科学者の言葉をしっかり紹介した事は取り合えず評価しますが、それならば尚更の事、番組冒頭で語られた科学者の言葉こそ再度番組の最後に持って来るべきではなかったかと自分は感じます。
研究者(森敏) 「膨大な犠牲の上に成り立っているこの壮大な実験の中で、何かやっぱり情報を取ってこなくちゃいけない。法則性を明らかにしていかなくちゃならない。それは次世代のためでもある。」
この言葉こそが真のテーマであると思うのですが、しかし番組のエンディングでは科学者達のこの思いは忘れ去られ、望郷の念を抱く住民達の姿に、原発事故が招いた悲劇性ばかりを浮き立たせる演出に終始しています。

冒頭プロローグで紹介する映像でも、極端に高い線量を示す「絵」を敢えて使う所からも、その意図が見え隠れします。
こういう演出手法は、果たして今回の主題には本当に相応しいものだったのでしょうか。


私が見たかったのは「サイエンスゼロ」であって、「新日本風土記」ではありません。


この番組は、一体誰に向けて作られたのか、私は最後まで分かりませんでした。



※詳細な書き起こしまとめはこちらで。 ↓
・「テレビのまとめ」より「被曝の森2018 ~見えてきた汚染循環~|NHKスペシャル

参考)
・自ブログより「Nスペ「被曝の森」はもうちょっと何とかならなかったのか(追記あり)
・   〃   「「被曝の森」再び~BS1版はどう変わったか?(プロローグ)
・   〃   「「被曝の森」再び~BS1版はどう変わったか?(本編)


4 コメント

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Unknown (F1ABS)
2018-03-21 10:39:37
OSATOさん、いつもご苦労様です。
こうやって画面を見せていただくと、曖昧だった記憶の部分が明確になります。

全体的に、「環境影響がある」ことを印象付ける内容でしたが、紹介された研究はすべて論文として未発表です。
無審査ですので、客観性に乏しいと言ってもよいと思います。

動物の話に限って議論します。
はじめの放射能アートに等しい部分は議論の価値なし、です。
汚染地域では、K40と同様にCs137が検出されるのは当然のことですから。

ニホンザルの造血幹細胞数と筋肉セシウム137量の相関を示したグラフですが、データ数が少なく、2年たっても高線量域の個体は全く増えていませんね。
おそらく高線量側の一点を除くと、相関は大きく下がることでしょう。
つまり、高線量域の一点はたまたま幹細胞数が低い個体を解析してしまった可能性を排除できないのです。
短い番組の時間内にそのような議論をすることは無理でしょうが、明らかに質の低いデータを使うこと自体に問題があります。
それにしても、この研究者、第一回目でも「意図しない形で未発表のデータを使われた」みたいなことをtwitterに乗せている関係者がいましたけど、未発表という点は繰り返していますね。
以前、放射線影響学会の会長をやっていらしたはずですが・・・

弘前大学のグループも然りです。
前回の番組ではアカネズミの染色体異常の解析をしているが、影響は検出できていないと言っていました。
今回はアライグマの不安定型染色体異常の話です。
二動原体染色体は時間とともに排除されていくので、直近のDNA二本鎖切断の結果をみています。
弘前0%と福島0.6%、これが差があると言えるのか、また放射線の影響と言えるのか、です。

基本知識として、放射線に被曝しなくとも我々の体細胞には常時DNA損傷は生じており、染色体異常の原因となるDNA二本鎖切断は一つの細胞で一日数十個生じていることが知られています。
したがって誤修復により生じる染色体異常、不安定型の二動原体染色体も、安定型の染色体転座も、血液細胞を調べれば全ての健常人から検出されます。
赤ちゃんの臍の緒の血液にすら、白血病を起こしうる染色体転座が一定割合で見つかります(大部分は発症しない)。

信頼性のあるデータを得るためには、十分な検体数が必要ですが、9個体から3000個の染色体像をカウントですから、一個体あたり平均三百数十個と少ないです。
たぶん十分な数の染色体像を得るための実験条件、アライグマの採取血液量が少ないとか輸送中の生存率が低いとか、普段はほとんど増殖していないリンパ球の増殖刺激の条件がよくないとか、実験条件が未熟なのだと思います。

というわけで、0%という数字も?ですし、0.6%も線量との関係が見えなければ様々な放射線以外の可能性も考慮すべきです。まずは、評価に耐えうるようなデータを示してほしいと願うばかりです。

蛇足ですが、ニホンザルの染色体ペインティングのデータがぽつんと出ていましたけれども、あんなのは健常人の血中にもありますね。
ウイルス感染によっても起こります。

放射線影響を議論するためには、線量との相関が必須です。
線量データもなしに異常なデータのみを示す行為は、「放射線誘発異常」を想起させる為の単なる印象付けに過ぎません。

長文失礼しました。
返信する
数値が問題 (OSATO)
2018-03-21 18:30:43
いらっしゃいませF1ABSさん。考察どうもありがとうございます。

番組を見ていつも感じるのは、肝心な数字が中々出て来ないという事があります。
森に溜まった放射性物質が食物連鎖で、徐々に生物の体内に蓄積されていくのは当然の事ですが、問題はやはりその量ですね。
シジュウカラの死骸から見つかったセシウムも何ベクレルだったのかとか、「二動原体」が見つかったアライグマはどれぐらい内部被曝していたのかとか、0%と0.6%の数の比較でも、0%の方の検体数はどれぐらいだったのかなど、肝心な数字が示されないので、イライラ感ばかりつのります。

ニホンザルのグラフについても、血中の細胞数は放射能影響がない0の付近でも1000個から2000個までばらつきがあり、被曝量の多いサルよりも細胞数が少ない検体もかなりいるのですが、番組ではただグラフの映像だけを見せるだけで、ここについては完全にスルーです。

ただ、全体としての映像の作り方は相変わらず放射能影響を印象付ける様な作りとなっていますが、
「結論はまだ先」
という主旨の科学者達の言葉を多く紹介している所は前回よりはまだマシだったかなという所です。

個人的には、1万ベクレル/kg以上を検出した巣に住むスズメバチはどうなってるのか気になりましたし、中の幼虫や女王バチを観察した方が検体数も確保しやすいしサイクルも早いですから、これこそ放射能影響を調べる絶好の研究材料じゃないかと思ったのですが、番組ではそこまで頭が回らなかったみたいですね。
返信する
昆虫の放射線感受性 (F1ABS)
2018-03-21 21:20:15
お返事ありがとうございます。
スズメバチ、数字が小さいのでスキップしていました。

基本的に昆虫は放射線感受性が低いです。
ザックリした数字で哺乳類の数十倍は抵抗性があります。

たとえば放射線による不妊化に使う線量は数十Gy以上。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-03-01-02
ですから、この程度の放射能により影響が出ることはないと思います。

以前に琉球大学のグループがシジミチョウの論文を出しましたが、放射線生物学の研究者は全て???だったのは、そういう理由です。
後になって、一部のデータについては学生がXXを強制されたという悪い噂も聞いております。

それから、シジュウカラは360Bq/kgと言っていたような・・・codexの基準くらい、カリウム40の3、4倍の数字という覚えがあるので。
これまた低い量ですから、生体影響云々の議論の必要なしでしょう。

サルのデータ、OSATOさんの仰る通りですね。
ただし、計画実験の場合は予め決まった数を確保できるのですが、こういう研究の場合に高い方の検体を確保するのは難しかろうと思います。
おそらく震災後、時間が経って体内のCs137量が下がってしまったタイミングで始めたのではないでしょうか。

疫学研究である原爆被爆者の場合も、高線量側は生存者が少ないので、色々な理由で数字がぶれやすいことが言われています。
今回の場合もサルに健康影響が出るような被ばく線量であったかどうかは別にして、精度の高い議論をするためには、検体数の確保が重要ですね。
返信する
低線量放射線影響の研究に (OSATO)
2018-03-22 21:16:44
F1ABSさん、コメント及び資料提供ありがとうございます。

> この程度の放射能により影響が出ることはないと思います。

ご指摘の資料での昆虫の不妊化実験では、確かに70Gyという大量放射でしたね。
ただここで私が考えた事はあくまで「低線量」の影響の研究テーマであり、対象は成虫ではなくあくまでずっと巣の中にいる幼虫で、幼虫ならば一定量の放射線を常に浴びている訳だし、飛び回っている成虫と比べても放射線影響を観察しやすいと思ったからです。
同じく女王バチも、放射能影響を最も受ける生殖器官に果たして影響を与えるのか与えないのか。
低線量の影響評価をするには長い期間と多くの検体が必要となりますが、あのハチの巣ならばそれが可能になるのではと思った次第です。
まあ、研究者の危険度は増すでしょうけど…(苦笑)。

> シジュウカラは360Bq/kgと言っていたような・・・

この数字はシジュウカラではなく、孵化しなかったヤマガラの卵から検出されたという数字です。
ブログでは文字数の都合上カットしましたが、実際の放送は以下の様なものです。
(以下放送より引用 ↓)
山本さんは孵化しなかった卵に注目し、放射性物質がどれぐらい含まれているのか調べてもらう事にした。
依頼されたのは、植物を調べていた森さんだ。
卵を分析した所、1kg当たり平均で379ベクレルのセシウムが検出された。
汚染が卵の中に及んでいる可能性が示された。
森 「最初はあると思っていなかった。十何個計ったんですけど、結構高いのがある事が分かって、親鳥から子鳥に、卵に放射能が移行している…。」
生物の汚染を目の当たりにした3人の研究者、森さんは食物連鎖を通して、生態系にセシウムが入り込んでいると指摘した。
(↑ 引用終わり)
要は「汚染されている」という事実を示したかったみたいですが、でも考えてみれば、食品の放射性セシウムの基準値は100ベクレル/kg(H24からの新基準)ですし、それ以前は飲料水で200ベクレル/kg、食品は500ベクレル/kgでしたから、379ベクレルという数字そのものには何の意味もないですね。↓
http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf

そしてあのシジュウカラの死骸の写真には、放射線量についての言及は何もなかったという訳です。
ただその映像を示した後に、山本さんの
「影響があるのかないのかちゃんとはっきりするためには、まだまだずっと見ていかないといけないとこが多い」
という発言を紹介したのは前回よりはまだマシであったという訳です。
本当の所は、確かに死骸の脳にまでセシウムは検出されたけど、それで死んだのかどうかはまだ分からないという事を言ってるのですね。
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