(自分は何もしてないのに……)
(偶然では?)
野々野足軽の頭にアースの声が聞こえる。チャブ氏のやったことはそれだけすごいことだった。実際現状を一番良くわかってた野々野足軽は誰よりもハラハラしてた。だって透視で瓦礫の中の草陰草案がどういう状況なのか見えてたのだ。ハッキリ言って、生きてたのは奇跡以外の何物でもない。軽症なのもそうだった。
普通ならそれこそ、瓦礫に手足の一つでも潰されても何もおかしくないし、もっと悲惨なら、瓦礫に巻き込まれたと同時に、胴体とか……下手したら頭とか潰されてて、それで彼女の人生が終わっててもおかしくなかった。
でも彼女はまだ生きてる。それもほぼ怪我なし……でだ。擦り傷くらいの軽症だけ。これを奇跡と言わずになんというのか……野々野足軽が仕込んでたのなら、こうなるのもわかる。だが野々野足軽は今回は何もしてない。というか、流石に野々野足軽でも、命を奪わないからと言って、女子中学生を廃墟で瓦礫に埋める……なんて暴挙はしない。
誰にもバレないだろうし、事故としか思われないのは確実だが、流石にそんな事は野々野足軽はしないのだ。いや出来ないといってもいい。力的には勿論出来るが、彼の心ではそんな事はできない。
だからこそ、救出したいのは勿論本心だ。だから無事に草陰草案を助け出すためには勿論力を出し惜しみする気はなかった。当然だけどバレないようにだが……でもなんとチャブ氏はそんな助けなんて必要なかった。
(力の発動は感じませんでしたよ)
(そうだけど……俺は力を知ってるから……)
そう野々野足軽は自身にある力を知ってるからこそ、チャブ氏が行った事をただの奇跡とは思えなかった。極限状態になると、人はその内に眠る力を開放するという。それはきっと誰にでもある。ただ誰も気づいてないだけだ。そしてその力を開放する術を知らないだけ。
だから極限状態にならないとアクセスできない。誰しもに野々野足軽のような力があるのか……それとも授けられた力なのか……それは野々野足軽にはわからない。でもチャブ氏を見て、力自体は誰しもの中にあるんではないだろうか? と野々野足軽は思った。
「大丈夫か!?」
「息はあるぞ!!」
「おおおおお落ち着いて。最後まで慎重に行きましょう」
そんな風に大人達は最後まで頑張ってくれた。そしてついに草陰草案を瓦礫の中から救い出す。
「草案ちゃん!」
瓦礫から救い出した草陰草案元へと駆け寄る野々野小頭。仰向けにされた草陰草案の側で膝を折って野々野小頭はその顔を覗き込む。瓦礫の中にいたから、草陰草案は汚れてる。けど奇跡的にそれだけだ。気絶してる草陰草案はちゃんと呼吸してるのが胸の動きでわかる。
ポタポタ――と野々野小頭の涙が草陰草案の顔に落ちる。そして草陰草案の頭を優しく抱き召して野々野小頭はこういった。
「バカ、何やってるのよ」