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ある日、超能力に目覚めた件 第二章 第四十話part2

2025-03-23 18:49:57 | 日記
『違うだろ!?』
 
 ――という自分自身の声が頭で響く鬼男。そしてそれはそうだ――と思いなおす。寝てるから安心? そんなバカな……だ。状況を考えろ、と鬼男は自分に言い聞かせる。この濃霧が出てきて何が起こってる? そう、この濃霧に取り込まれる直前から、小頭の家族は眠りについてた。そして……
 
(多分、さっきまでの俺も……)
 
 鬼男はさっきまでの状況を思いだす。大切な人を見てた。もう戻ってくることがない大切な存在。あれを見たという事は鬼男も知らず知らずにこの濃霧に取り込まれてた……という事だろう。つまりはこの中では寝るという事は、この濃霧に取り込まれてる――という事で、敵の術中にハマってるという事だ。それを考えたら安心なんて口が裂けても言えないだろう。つまりは小頭は今、敵の術中なんだ。そして鬼男が体験したことから考える……
 
(この濃霧はその者にとって心地よい夢をみせてる。それも極上で、もう手に入らない……そんな夢だ」
 
 きっとこの夢に取り込まれるとそのままその世界で過ごしてしまうのではないか? と鬼男は考えてる。だって本当ならあり得ないが、リアルな感触やにおい……そんな五感に訴えかけてくる夢だった。それに鬼男は戻ってきたからあれを夢と断じれるが、あの中にいるときは嬉しさとか、感動やらが押し寄せてたのも事実。そんなのを簡単に夢だといって放り投げることができるだろうか?
 
「俺は軍人で戦いの中で生きてる。でも……こいつは違う」
 
 小頭はただの少女だ。力なんてものはもってない。体だって全然頑強じゃない。鬼男がちょっと力を込めたらポキッと行ってしまいそうなほどに、彼女はやわい。そしてただの日常を生きる学生だ。どんな夢を見てるのかは鬼男には知るすべがないが、表情からも幸福が伝わってくる。優しくて……そして満ち足りた世界を彼女は堪能してる。それはきっと間違いない。でもそれは夢だ。
 
「おきろ……おい」
 
 下手に力を込めることもできないから、頭に手を置いて優しく揺らすくらいしか鬼男はできない。だって鬼男からしたら、ちょっとでも力を込めたら壊してしまいそうなんだ。だから丁寧に丁寧に扱う事しかできない。けど当然だけど、そんな事では小頭は起きない。
 
「むにゃむにゃ、お兄ちゃんのうんち」
 
 ――と、また意味不明な言葉を言ってる。
 
「兄……か」
 
 鬼男はそうつぶやいた。夢の中でもきっと小頭は兄といるのだろう。それは間違いない。少し思考する鬼男。夢の出来事だったが、彼の体にはまだ模様が浮かんでて、更に角だって長くなって輝いてる。夢だけど、彼がとった行動は夢じゃなかった。満ちる力を感じながら、あることを鬼男は決意した。
 


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