「どうやっておばあちゃん達を助けようか?」
小頭はそうやって鬼男に意見を求める。さっきまでの過去はとりあえず思い出さないようにしたようだ。自分の失敗を忘れるのはいけない事だと思うが、きっと小頭は反省してるのだろう。そしてこんな所を一刻も早く脱出したいと、家族を助けようとしてる。
それ自体はいいことだ。だから鬼男だって反対はしない。そもそもが彼だって過去――には深く踏み込んでほしくはなかった。角が今も戻らないのがその証拠。いつものようにふるまってるが、その心は静かに乱れてる。
それを小頭には悟られないようにしてるだけだ。勿論、小頭はそんな事には気づいてない。
「ふー」
何やら鬼男は目を閉じてる。そして深い息を吐いたと思ったら、何やらその角からジジジ――という音が聞こえだす。それが何を示すのか小頭にはわかんない。でもきっと何かしてるのかはわかる。
だってなにせその角はとても格好よくなってる。そして今までの物体ではなくなってる角。本来の姿を開放してる鬼がどこまでパワーアップしてるのかとか小頭には全然わかんないが、そもそもが鬼男や鬼女は元の状態でもめっちゃ強かった。
だってこの覚醒状態にならなくても、今まで順調にやってきたのだ。戦闘でもこの状態にならないと全然ダメ……なんて事は全くなくここまでこれた。確かにあの列車のまねとかしてた芋虫妖怪とかさ……この状態になれば実は速攻で……とかいう思いがないわけじゃない。
あの時は本気出してなかったんだ……と小頭だって思う。でもこの状態がどれだけ気軽に出せるのかもわかんない小頭には鬼男を責めるなんて事はできない。
とりあえず何をやってるのか、全く持ってわからないが、とりあえず静かに待つことにした小頭。既に敵の術中なのだ。小頭には何も力がないのだから、この中で頼りになるのは鬼男しかいない。
でもただ待つ……とか、全てを鬼男に任せる……とかはしない。確かにただの人間である小頭には出来る事なんてのはほとんどないだろう。けど、何もないから何もやらないなんて……そんなのは理由にはならない。
まあけど離れる事さえできないし、少し先も見えないこんな濃霧の中じゃ、出来る事なんてのは限られてる。目はこの濃霧では約に立たない。では他に何が出来るかって……なんか鬼男が静かにしてる手前、下手にうるさくするのも違う様な? と小頭は思った。だから小頭も自身の耳に頼ることにした。
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