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ある日、超能力に目覚めた件 482P

2024-07-01 20:07:21 | 日記
「ねえ! 誰かぁ! 誰かいないの? 草案? それにチャドさん! ミカンさん!! なんなのよこれ……」
 
 野々野小頭も桶狭間忠国と同じように暗闇にいた。靄をかき分けて、野々野小頭は走る。けど、どこにもいけない。
 
「はあはあ……なんで……」
 
 野々野小頭的にはかなり走った。もうここが異常だと認めるしかない。だっていくら走ってもどこにもいけないのだ。そもそもが草陰草案とはすぐそばにいた。てか触れてたはずだ。力を使って頑張ってた草陰草案を支えるように野々野小頭は草陰草案の手を握ってた。
 
「離してなんてないのに……」
 
 そういった野々野小頭はつないでた筈の手をみる。そこにはまだ暖かさが……あるわけはなかった。なんの力をもない自身の手。小さくてか弱くて……自分でいうのもなんだけど、女の子の手だ。はっきり言ってこんな手じゃなにも頼りがいなんてないだろう。けど……こんな手でも草陰草案は求めたんだ。
 何もできない野々野小頭でいいって……そんな事を思ってると誰かが野々野小頭を追い抜いた。
 
「え?」
 
 その姿は小さい。中学生の野々野小頭も中学三年にしては小さい方だが、それよりももっと小さな子が野々野小頭を追い抜いた。その後ろ姿には見覚えがあった。とても……そうとても見覚えのある服を着てるからだ。
 
「あれって……私?」
 
 その子の服装は幼い時に野々野小頭が好んで着てた服だった。そしてその手には今でも部屋にある大きめのぬいぐるみがある。流石にもう持ち歩くことはなくなったが、あの頃はああやってどこに行くにもあのぬいぐるみを抱きかかえてた。
 
「間違いない……あれは……」
 
 そんな幼いころの野々野小頭はなぜか「ひっく、うぅえぇぇぇぇん」と泣いてる。そしてさらにこういった。
 
「お、おにいちゃあああああん!」
 
 その声を聴いた瞬間、ボッと顔から火が出るような恥ずかしさが沸き立ってくる。
 
「なによそれ……」
 
 つぶやくように、そんな風に言葉を発した。そして思い出してた。幼いころは確かにいつだって兄であるの野々野足軽の後をついていってた事を。兄の姿が見えなくなるとすぐにああやってべそをかいてたことを。
 いつの間にか記憶の奥底にしまい込んでた恥ずかしい歴史。それをこうやって自身で見ることになるとは……
 
「なんて罰ゲームよ」
 
 恥ずかしさで死ねる……とか思ってる野々野小頭である。なんとか兄に追いすがろうとしてた幼い野々野小頭。けどその足が止まろうとしてる。そしてついにはその場で泣き出してしまった。胸が痛くなる大きな野々野小頭。でもなんと声を掛けたらいいのかわからない。
 自分だからこそ、どうしたらって感じだ。すると足音が聞こえてくる。ようやく兄が来たのか! 遅いよ! とか思った。さっきまで恥ずかしがってたのに、こんなに自分を泣かすとは兄失格! という心情だ。
 
「あれ?」
 
 そんな風に声が出る大きな野々野小頭。だって現れた兄は……野々野足軽は大きかったのだ。今の野々野足軽だ。野々野小頭は目の前の子と同じように幼い兄がやってくるんだと思ってた。なのに……やってきたのは今の兄の姿をしてる。
 これはどういう事だ? と頭をひねる野々野小頭。けど答えはない。


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