「小頭! よかった無事だったのね」
「うん!」
ようやくいいかな? というタイミングで小頭達はおばあちゃん達と合流した。おばあちゃんは優しく迎えてくれて、おじいちゃんは……
「なんじゃお前は!?」
あれ? である。食卓を囲んでた時は、おじいちゃんはそんなことを言わなかった。いや、おじいちゃんだけじゃなく、お母さんもお父さんもだ。けど、どうやら今はおじいちゃんは鬼男を足軽……ではなく、鬼男として認識してるらしい。
足軽と鬼男が入れ変わって、その結果として世界の認識そのものがそのまま鬼男には適応されてる筈なのに……おじいちゃんが鬼男を鬼男と認識した? どういうこと? と小頭は思った。
「くっ! 二人ともわしゃの背後へ行くんじゃ!!」
おじいちゃんはそんな事をいって急いで台所から包丁を持って鬼男に向けた。実際鬼男は身長が2メートル越えてそうな巨体である。それに筋肉だってモリモリとある。そんな鬼男とまともにやりあうとなったら武器が必要だろう――と判断したおじいちゃんは何も間違ってないだろう。
「何をやっとるんじゃ!? 早くそいつから離れろ!!」
焦ってるおじいちゃん。さて……どういったらいいのだろうか? と小頭もそしておばあちゃんも考える。
「おじいさん、落ち着いてください。その方は危険ではないですよ」
「何をいっちょる! ああああ、頭に角があるし、なんか黒いぞ!」
困る小頭におばあちゃん。だって何もおじいちゃんの言ってる事は間違ってない。せめて角は隠しておくべきだったか……と小頭は思った。けど、まさかおじいちゃんが鬼男をそのまま認識するなんて誰も思ってなかっただろう。だからこれは誰も悪くない。予想外のさらに外の事が起きたのだ。
「ええとですね。……そうあれは仮想です。コスプレなんですよ」
「コスプ……なんじゃと?」
おじいちゃんはおじいちゃんだから横文字に弱かった。おばあちゃんは丁寧にあれはつけ物だと諭す。けど……
「なんであんな奴が、こすぷれ? して家におるんじゃ!? どこから出てきた!?」
まあそうなるよね。コスプレを受け入れたとしても、いきなり自分の家に見知らぬ存在がいたら警戒するなという方がおかしい。それにこんな田舎なら、大体は顔見知りである。なのに鬼男の事をおじいちゃんは全く持ってしらない。鬼男がもしも近所にいたら知らない訳はない……忘れる訳はない容姿なのに……だ。
どこの誰だ? となるのは当たり前だ。
(ああもう、こうなったら全てを話す? いや、でもそれでも信じてもらえるかどうか……)
全ての真実と実情を話す選択肢を小頭は考える。けど、それをしたとして……だ。簡単に信じてくれるだろうか? それにおじいちゃんなら大切な孫の足軽がこの世界にいない……となったら自分からあの門の向こうに飛び込んでいきそうである。
そんなことになったらさらに厄介だ。どうしたらいいのかとても悩む小頭だった。