同じ県内で暮らしているにもかかわらず、
直ぐ近くの郷土料理を知らぬまま過ごして来たことを知って、愕然とすることがございます。
門外不出のレシピな訳ではなく、そこで暮らす方々にとっては極々当たり前の家庭料理で、
よもやその料理を召し上がらない家庭が有ることなど想像したことも無く、
イコール、改めて紹介するなどとは考えても見なかった、という様な場合。
本日ご紹介する山賊焼きもそのような一品でございます。
私の実家からそう遠くない町の郷土料理、山賊焼きを知ったのは、もう大人になってから。
小さな居酒屋さんで衝撃の出会いでございました。美味しいんです。ホントに。
私は、そのお料理の由来も伝統的なレシピも知りません。
既にアメリカで暮らし始めてから突然懐かしく思い出し、もう食べたくて食べたくて・・・
舌が覚えていた味だけをたよりに再現致しました。
ショウガ、ニンニクのみじん切り、醤油、酒、砂糖、ごま油。
ショウガとニンニクは是非スリおろさずに、みじん切りでお願い致します。
後ほど焼き付けた際に、こんがりと香ばしいアクセントになるのです。
そこに鶏もも肉を漬込みます。鶏肉は肉類の中でも味の入り難い食材ですので、
漬込む時間は最低半日、なんなら丸一日でも結構です。
鶏もも肉は味も濃くとても美味しい部位ですが、黄色い脂の処理を手抜き致しますと、
がっかりな一品が出来上がります。
丁寧に脂を取り除くことで、もも肉ならではの食感と美味しさを堪能出来ます。
漬け込んだ鶏肉に片栗粉を軽くまぶし付けます。
唐揚げのようにまんべんなく付ける必要は有りません。
それを少し多めのサラダオイルで焼き付けます。
熱々のフライパンにひと並べに致しましたら、絶対にいじらないで下さい。
家庭での肉料理の失敗の原因ナンバーワンは、いじり過ぎにあると私は踏んでおります。
持ち上げたりかき混ぜたりすることで、べたっと油の回った仕上がりになってしまうのです。
このお約束を守って頂くと、このように水分も出ず、カリッとこんがり焼けます。
片面が焼けましたら、一気に裏返してもう片面を同様に焼き付けます。
焼き上がりまでの時間や、焼き色などを揃える秘訣はただ一つ、
下ごしらえの時に、肉の厚みを揃えることに有ります。
大きさが若干違っていることは全く問題有りません。厚みです、厚み。
焼き上がりを、たっぷりの千切りキャベツの上にドドンと乗せて出来上がり。
レモンをギュッと搾っていただきます。
今回はキャベツを他の野菜に置き換えることは断固お勧め致しません。
それはトンカツに添えられた千切りキャベツ同様、このお料理に必要不可欠なのです。
私は一時期、山賊焼きの名店を食べ歩きましたが、
唐揚げのように一枚肉を揚げたものから、焼き鳥のように焼いたものまで色々。
私も以前は唐揚げにしていたのですが、
本日ご紹介した油で焼き付ける方法が一番好みに合いまして、こちらに落ち着きました。
実はね、アメリカの鶏肉には独特の臭みがあるんです。
これは与えている飼料の違いで、品質が劣る訳ではないのですが、
地鶏など、日本の美味しい鶏肉を知っている私には、ちょっと気になります。
こちらはそんな私の数少ない鶏を主役とした一品です。
山賊焼きは漬込むタレがその臭みを消し去ってくれるのです。
思い出の味、故郷の味はいつも心を暖かくしてくれるものです。
この次帰国した際には、是非本場の味を再確認して来ようと思う次第です。
私のレシピとは全然違ってるかも。あはは・・・
では