あるフィルムを見て以来、
我が家の食卓に炊きたて御飯で作ったおにぎりが度々登場するようになった。
ちょうど同じ頃、土鍋で美味しい御飯が炊ける事を知ったのも理由かな。
そのフィルムは全編を通して余計な説明がなく、
映像とは瞬間のショットの積み重ねだと再確認出来る仕上がりになっていた。
見る人に想像する余地を残してくれてある、印象派の絵のようだった。
そのフィルムに何度も美味しそうなおにぎりが出て来たのだ。
登場人物が悲しいのか嬉しいのか、幸せなのか不幸なのかは見る人が決めればいい。
最近そういうフィルムが少ないな。
様々な事情を抱えた女性達が、それぞれの思いを抱えつつ同じ景色を眺めている。
着飾って海辺のカフェで海に向かって横一列に並んで座っていて、
その中の一人が満足げに葉巻を吸うシーンが印象に残った。
大人になると、向き合わない関係を持てる心の余裕も大切なのかもしれないと思う事が有る。
それぞれの思いを抱えながらも、論じる事無く問いかける事無く同じ風景を眺められるような。
友情にしろ恋愛にしろ、お互いの顔が見えない事や沈黙を恐れているうちは、青いな。
夜間飛行で旅立つ人の為に、
お腹に優しくて、これから数日間の野菜不足がちょっぴり補えることを念じつつ、
根菜のお味噌汁と炊きたて御飯のほかほかおにぎりを用意した。
私達は今夜も横に並んで食事をする。