松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆書評を書く

2023-07-25 | 1.研究活動

 法制執務雑感の伊藤さんが法制執務の本を書いた。『基礎から分かる! 自治体の例規審査』(学陽書房)である。早速、書評を書いた。

タイトルを読者(法制執務初心者)に寄り添う本とした。

「いかにも実務家、実践家らしい法制執務本だと思う。私などが法制執務の本を書けば、まずは、地方自治の制度やあるべき論から書き始めてしまうが、この本では、「自治体の例規審査とは」から書き始めている。風呂敷を広げすぎず、読者(法制執務初心者)が、まずは知りたいことを一貫して書いていこうという姿勢が見てとれる。

法制執務本については、すでに定評のある定本があるなかで、多くは、その縮小版のようになってしまうが、この本は「例規審査」の観点から書かれている。数ある類書のなかでも、例規審査と銘打ったのは、この本がはじめてではないだろうか。その意味でも、法規担当者必携の1冊になるだろう。

著者の伊藤さんは、ご自身のブログ「自治体法制執務雑感」「自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2」で有名である。私も、先行論文がないテーマで論文を書こうと関連の情報を調べるうちに、このブログに行き当たったことが何度もある。その蓄積の一端が、この本に凝縮されているのだろう。

法制執務は、ローカルルールが山ほどあるが、この本では、それを否定せず、「国のルールと自治体のンルールが異なることは、どうしてもあり得ることです」としたうえで、「不合理でないローカルルールについては、そのまま用いても問題ないでしょう」(P21)としているなど、随所に、現実的で実践的な考え方・解決方法が示されているのが、この本の一番の魅力だと思う。」

 

 伊藤さんとは、どれくらいの付き合いだろう。頼んだり、頼まれたりであるが、頼んだ方が圧倒的に多いと思う。着実でオーソドックスな考え方は、私とは違うが、ずいぶんと教えてもらった。

 本を書いたらいいと、話していたが、どこかを紹介するつもりでいたが、そのままになってしまっていた、今回、学陽書房からの出版となって、よかったと思う。編集者は村上さんで、村上さんから丁寧なあいさつ状をいただいた。

 学陽書房からは、私は2冊、本を出しているが、もう私の出番はないだろう。それは最近のラインナップを見てみたら、「教員委員会職員になったら読む本」のように、会計担当になったら、都市計画担当になったらなどの、役所の仕事ごとに、「担当になったら読む本」のように、実務に寄り添った出版傾向になっているからである。

 私たちの時代には、仕事は先輩なら教わり、それを代々つないできた。しかし、こういう本が売れるのは、それが機能しなくなったということなのだろうか。あるいは、人に聞くのが嫌なので、本で勉強するということなのだろうか。

 いい、悪いではなく、そういう時代ということなのだろう。私のように、これまでなかった政策や時代を切り開く政策を提案するスタイルは、ニーズが小さく、絶滅危惧種になっているのだと思う。

 情報の羅列や仕事のノウハウのようなことは、研究者は矜持が邪魔をして書けないが、こうした「担当になったら読む本」のような実践的な本は、現場の第一線の職員が書いた方がいいし、大いに、書いてもらいたいと思う。

 私の次のテーマは、「支える人を支える政策」の体系化であるが、このようなテーマは、先を行き過ぎていて、出版社探しにきっと苦労するのだろう。

 「担当になったら読む本」のなかで気になるのは、「市民協働担当になったら」である。まだ出ていないが、誰かにもう頼んでいるのだろう。誰が書くのだろう。私が編集者なら2名の市役所職員が思いつくが、その二人で共著で書けば、きっといい本になる。この2名なら、協働=NPOと仲よくしようみたいな本は書かないであろうから。いずれにしても、自治体職員が協働をどのように考えているのか、興味深いので、「市民協働担当になったら本」が出たら、さっそく、読んでみようと思う。

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2 コメント

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書評ありがとうございました (伊藤和之)
2023-07-25 21:18:52
過分なお言葉をいただき恐縮しています。
国が作った法制執務のルールに全て従う必要はないのではないかということは、できるだけ伝わればと意識していたことですので、それをくみ取っていただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
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Unknown (マロン教授)
2023-07-26 09:05:41
今度は、新定本を作ってください、
返信する

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