松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ふるさと納税⑦フリーライダーの推奨制度

2020-04-20 | 域外住民への関与
 ふるさと納税は、フリーライダーを推奨する制度である。

 地方自治の大きな問題は、フリーライダー問題である。例えば、町内会の夜の見回りも、誰かがやってくれて、自分は、その利益だけを受けるのが、一番、合理的な行動である。しかし、そう思って、誰もがやらなくなったら、犯罪が跋扈するまちになってしまい、結局、自分も損を被ることになる。まちづくりは、常にこの問題に悩まされていて、どうすれば当事者性を持ってもらえるのか、あちこちで苦闘している。

 そんな苦労も知らないで、ふるさと納税は、フリーライダーを推奨する仕組みである。住民税は、地方自治体から受ける行政サービスに対して支払われる対価であるが(受益者負担)、ふるさと納税は、行政サービスの提供を受けていない自治体へ寄附することで、住所地自治体での住民税の相当部分を免れるシステムである。

 寄付者は、住所地自治体に納める住民税を減少させたにもかかわらず、住所地自治体が提供する行政サービス(これまでと同じように、ゴミを出し、図書館を使い、公園を散歩すること)を今までどおり享受し続けることができる。要するに、負担をせずに、ただ乗りすることを認める制度だということである。

 ふるさと納税は、フリーライダーと紙一重というきわどい制度ゆえに、これが認められるのは、特別な場合、つまり育ててくれた地方への恩返しのように、最もな理由のある例外的な場合に、許される仕組みでなければならない。この場合なら、「まあいいか」ということになる

 ところが、実際は、カタログショッピングのように、縁もゆかりもない自治体を返礼品のよさで決めていいという仕組み、である。要するに、真面目に住民税を納める他の住民の負担に公然とただ乗りすることを国自らが認めてしまっては、地道に、地域において、一人ひとりをまちの当事者にまきこむまちづくり活動が、足元から、崩されていくことになる。

 権利には責任が伴い、サービスには負担が伴う。要求だけでなく、自ら動くことが必要であることは、今や小学校でも習っている。それとは、まるで逆の方向に進む、ふるさと納税は、本当に、歯がゆい。

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