南区区民会議の2期目の最終回があった。
区民会議は2年任期で、委員が交代する。私は、1期から議長を仰せつかっているが、2期目も終わり、3期目も続けるつもりでいる。
南区区民会議の特徴は、闊達な議論にある。この日は、2期目を総括する会議があり、その中で、3期目にどう引き継ぐかという話になった。すると、わが敬愛するA委員から、「区民会議は、もっとイベントなどをやるべきではないか」という問題提起がなされた。これをきっかけに、委員からの発言は相次いだ。興味深い発言が相次いだが、いずれもこの区民会議の本質を突く議論になった。
闊達な議論の中で、区民会議の役割がいくつか整理されたので明らかにしておこう。
①区民会議の教育機能というべきものである。つまり、各委員が区民会議から学び、それを地域の活動に持って帰り、さらに実践するという機能である。
たとえば、運営の方法でも、この区民会議ではワークショップをやったり、全員が発言する方式をとったりしている。これが面白いと感じて、早速、地域に持ち帰って、実践している地区もあるという。
自由な意見交換のなかで、参考になった取り組みや発言も数多いだろう。「区民会議が、全員そろってイベントするという方法もあるかもしれないが、一人ひとりがあるが、自分が大切だと思うことを持ち帰る機能は、この区民会議ならではだと思う」という意見に私も共感する。
②A委員から提起があった、実践をするということも重要なことである。この区民会議では、机上の議論ではなく、それを実践することを心がけてきた。
区民会議では、無作為抽出による意見交換会を続けているが、今期はさらにバージョンアップし、対象を若者に絞った会議を行った。日本で行われているプラーヌンクスツェレの弱点は、イベントにとどまってやりっぱなしで終わってしまっていることから、南区区民会議では、その若者たちを中心に、プロジェクトをつくり、実践につなげている。その他、区民会議も外に出て、若者とのワークショップを行うなど、言うだけでなく、実践するのが南区区民会議の特徴である。
③区民会議の主たる役割は政策提案機能である。
当たり前のことではあるが、政策課題は事務室で起こっているのではなく、現場で起こっている。たとえば、空き家問題は、研究の世界では、この2,3年のことであるが、地域では、10年前から起こっていた。これは、地域の課題が、自治体の政策になるには、大きな時間差、タイムラグがあるということである。「地域のことは地域で行う」分権協働時代にあっては、この時間差を縮めることが、自治経営の大切なポイントになる。
そのための仕組みのひとつが、区民会議の政策提案機能である。
例えば、区民会議が第2期でテーマとしている若者は、自治体の政策体系のなかで、ほとんど欠落している分野である。総合計画を見ると、若者といえば、中学生以下のこども(これは保護の対象)、困難を抱える青年(これも保護の対象)、普通の若者は、せいぜい文化スポートの対象である。地域やまちの担い手として、ふつうの若者を真正面に据えた政策がない。
かつてならば、若者は放っておいても、地域が若者を鍛えてくれた。知らないうちに、地域が若者をまちの担い手として育ててくれたのである。その時代ならば、特に自治体政策は必要ない。ところが、地域の機能が変容、弱体化し、地域が若者の社会参加を育てる機能が弱ってきた。このままでは、まちの未来は厳しいものになる。それを真っ先に感じ、区民会議では、若者をテーマに取り上げているのである。
行政というのは、もともと保守的な存在である。これはみんなの税金で動くためで、仕方がないことでもある。それを補完するのが、民間の力で、区民会議もその一翼を担っていることになる。
区民会議が取り上げた、無作為抽出による市民参加も、若者政策も、早晩、市の重要な政策になっていくだろう。新しい政策を地域で実践し、試したうえで、市全体の政策にバトンタッチしていくのが、南区区民会議の役割だと思う。
この日は、終了後、伊勢丹の7階で打ち上げがあった。区民会議らしい、楽しい懇親会だった。