松下啓一 自治・政策・まちづくり

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★住民監査請求の考え方(横浜市)

2013-05-20 | 2.講演会・研修会
 横浜市の地方自治法の連続講座の3回目。今回は、住民監査請求と条例の話をした。
 
 住民監査請求は、勧告率が6%程度、住民訴訟になると、原告勝訴率は4%になる。これをどう読むかであるが、
 ①監査委員や裁判官は、行政寄り・行政追認の判断をくだしがちである。もっと市民の立場に立った判断が必要である。
 ②これは濫訴の弊ということである。裁判は普通、勝てると思ったときに行うもので、それが4%では、明らかに裁判を起こすこと、つまり市長や行政を被告にすることが目的のような運営が行われている。
 ①と②のそれぞれに、一面の正しさがあるのだろう。そして、どちらを出発点・立脚点にするかによって、さまざまなケースで判断の違いが出る。地方自治法の法理論は、市民は主権者であって、行政をコントロールするものという立場であるから、どちらかというと、①のほうに親近性があるだろう。

 住民訴訟の訴訟費用は、敗訴した当事者が負担することになっているので、原告敗訴の場合、勝った役所は、訴訟費用を取りたてることができるが、ほとんど何もしていないのが現状である。取れる費用はわずかなので、手間ばかりかかるためである。中には取りたてようとした自治体もあるが、市民から抗議を受けたりで、結局、沙汰やみとなるケースが多い。
 裁判のためには、当然、弁護士費用が掛かる。ケースによっては、莫大になる場合もあるようだ。弁護士費用は、当事者がそれぞれ負担することになる。原告が勝った場合は、弁護士費用は、役所に支払いを請求できる。役所が勝った場合は、原告に請求することはできない

 旧4号訴訟で自治体職員が裁判の直接当事者だった。しかし、裁判を起こされたら、たまったものではない。弁護士費用は掛かる。勝っても(大半は勝つが)何も取れない。裁判の間、被告人だというストレスばかりたまる。ちっともいいことがないので、相手の言う通りやっておこうという運用になる。新4号訴訟では、役所を訴える仕組みに変えたが、もっともだと思う。

 以上のような仕組み・運用は、やはり濫訴を招くものと言わざるを得ないだろう。弁護士費用の問題は、慎重な議論が必要であるが、少なくとも、訴訟費用は、手間でも、きちんと請求すべきだろう。額の問題ではなく、社会の基本の問題だからである。払うと決まっているものは、きちんと払うという基本をまあまあにすると、全体の信頼を失うように思う。

 講義では、限られた時間なので、とてもここまでは話はいかなかったが、どの制度も、判例をうのみにするのではなく、私たちの自治の未来を見据えながら、考えていくことが必要ということである。

 この日は、のどが痛く、不調だった。後半、条例の話になったが、政策法務の研修では、1時間半近く話す話を10分くらいで話したので、伏線も背景もなく、いま一つ、ピンとこなかったのではないか。のどの不調と、この消化不良が重なることで、全体に意気が上がらない帰り道となった。
 次回は、最終回、がんばろう。  
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