
空き家の利活用について、講演や研修を頼まれることが多くなった。関心の高まりに対応して、空き家を利活用している事例を紹介しよう。今回は、空き家を観光資源として活用している香川県直島の例である。
香川県直島は、瀬戸内海に浮かぶ島である。行政区画は香川県であるが、岡山県の宇野港からの方が近く、船便も多い。人口は、直島町全体で、ピーク時には7,800人がいたが、現在は3,200人弱の小さな町である。当然、高齢化率も高い。
この直島はアートの島として有名で、国内外から島を訪れる観光客も多い。1992年には5万人に満たなかった観光客は、2013年には70万人を超えるまでになったという。しかも、海外からの観光客が多いのが特徴である。
直島の観光の目玉は、現代アートである。島の観光をリードするのは、岡山市に本拠があるベネッセコーポレーションであるが、ベネッセが手がけた美術館がいくつも存在している。直島では、美術館だけがアートではなく、家プロジェクトと呼ばれる空き家を改修したアートが、島のいたるところに置かれている。
家プロジェクトの中心地が、島の北西に位置する本村地区で、ここでは古民家をリノベーションし作品化した建築物が集まっている。美術の世界では、インスタレーションというそうであるが、地域全体を展示空間となっている。
1998年の「角屋」に始まった、この家プロジェクトは、現在は、「角屋」のほか、「南寺」「きんざ」「護王神社」「石橋」「碁会所」「はいしゃ」の7軒が公開されている。「点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら、空間そのものをアーティストが作品化」しているものである。
はいしゃは、かつて歯科医院兼住居であった建物をまるごと作品化したものである。アートとしての評価は、人それぞれであろうが、インパクトは強い。ただ同じ奇抜でも、ウィーン郊外にあるシュピッテラウ焼却場のようなメルヘンチックなものが私の好みである(この焼却場は、電車に乗って見に行ったことがある)。
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