松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ボランティアと有償制度-ドイツの制度(相模女子大学)

2016-06-22 | 地方自治法と地方自治のはざまで

 ボランティアにとって、無償性というのが本質的な要件なのか。公益が実現されるという成果が重要ではないかというのが、私の立ち位置である。ボランティアと有償制度ー海外編の第2回目は、ドイツを紹介した。

 ドイツにおけるボランティアの法制度は、2つの流れがある。

 第一は、2008 年に制定された青少年ボランティア促進法(Gesetz zur Förderung von Jugendfreiwilligendiensten)である。これは、1964 年制定の社会活動ボランティア年(Freiwilliges Soziales Jahr)推進に関する法律と、1993 年に制定された環境保護ボランティア年(Freiwilliges Ökologisches Jahr)の推進に関する法律が統合されたものである。

 青少年が対象で、義務教育修了後27歳までの若者が対象となる。利用は1度限りである。参加者は施設等に派遣され社会奉仕活動や環境保護活動に従事する。

 第二の流れは、連邦ボランティア法(Gesetz über den Bundesfreiwilligendiensである。
 これは、1960年制定の兵役代替役務法(Gesetz u ber den zivilen Ersatzdienst)が、発展したものである。

 ドイツでは、1956年の徴兵法を受けて、1957 年から徴兵が実施されたが、他方、良心的兵役拒否が、ドイツ連邦共和国憲法(ボン基本法)でも認められた(第12a条)。兵役者拒否者には、社会福祉施設等における非軍事役務が義務づけられてきたが、兵役を拒否して福祉施設等で非軍事役務を行う者の数は徐々に増えて、年間9万に程度という数になっている。

 ドイツでは、その後、東西冷戦の終結を受け、徴兵制が縮小され、2011 年には停止された(廃止ではなくて停止)。

 ところが、皮肉なことに、良心的兵役拒否制度による兵役代替奉仕が広がる中で、福祉活動において、これら人々が重要な担い手となっていった。それが徴兵制の停止によって、供給されなくなることの懸念から、2011年に、連邦ボランティア法が制定された。

 この制度は、生涯教育の促進が目的の1つとされ、義務教育修了者なら誰でも申し込め,年齢に上限の制約がない。また,5年以上の間が空いておれば何度でも利用できる制度である。

 両制度ともボランティア参加期間は1年間であるが、特徴的なのは、①小遣い,②無償の宿泊と食事,③児童手当など,④社会保険の加入などがある点である。小遣いは200ユーロ程度になる。また、ボランティア活動者は社会保険に加入するが,その保険料は受入先が支払う。休暇もあり、年24日が保障されている。

 兵役代替奉仕がボランティアといえるのかという議論もあるが、無償性や積極的な自主性よりも、実際に福祉の現場で戦力になっているという現実を重視して、ボランティアと位置付けているが、こうした割り切りは、いかにもドイツらしいし、参考になるだろう。

 

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