https://twitter.com/kando_abugen/status/1505765208811524099?s=21
どこのニュースアプリ勝者も、ニュース提供社に払う「原稿料」は読者(=1PV)あたり、良くて0.1円。だいたいは0.05円にもならない。もちろん取材費を負担することもない。
ニュース提供社が、この環境でウクライナ紛争を取材するのは不可能に近い。今できている社は、紙や地上波の収入で賄っている。(続
アプリ業者を「勝者」と書いてしまったが、わりと本当かもしれない。ニュース記事という情報商材を右から左(読者)に流すことで利益を得る業態。勝者と言っていいかもしれない。
買い値に、記事を作るコストは考慮されていない。されていれば、あのような値段にはならないだろう。
かつて新聞社や出版社、テレビ局は自ら、記事(商品)を完全に自社の手で流通できていた。それが高利益を生んだわけだが、それはもはや、昔話に属する。
ニュース記事というのは人力でしか作れない。取材して、書いて、編集して、校閲する全ての段階にコストがかかる。正確で深い取材をすれば特に。
今回のウクライナ紛争の場合、現場にいるだけで1日最低で数万円の経費がかかる。
宿泊費。車両費、コーディネーターの賃金。BBCやNYTはスタッフの取材の安全を確保するため、元軍人の安全アドバイザーも現場に付けている。そうなれば、1クルーの経費は1日数十万円にのぼる。
それを、記事やニュース映像の売り上げだけでカバーするのは不可能だ。BBCのように視聴料収入で運営される公共メディアを除けば、メディア企業の収益多角化と規模の拡大が全ての前提になる。
経営面からいえば、紛争取材はメディアの威信を高め、結果として収益の多角化につなげるものということだ。
短期的利益を紛争報道から上げることは各社の経営者も考えてはいないだろう。そして、報じるべき事実があるから、記者は現場に向かう。
NYTのように世界に拡がる英語マーケットを持たず、単体での存続すら危ぶまれる日本のメディア企業が、どうやって現場取材を続けるか。その正念場にいる。
そこでもう一度考える必要があるのは、「ニュースは無料」ということが、日本では半ば常識となり、業界がコストを回収できない構造に陥っていること。さらにネット広告収入もGAFAやY!Jといった流通の巨人がほぼ独占していること。
この構図の末端にいる僕からは、タコが足を食っているように見える。
今回はなんとか善戦を続ける日本メディアがある。キエフで取材を続けるフリーのベテランも複数いる。これまで各地の現場で会った人々の署名記事を見るたびに、深い敬意を抱く。
とはいえ、フル装備で現場に向かうコスト負担能力があるメディアはほとんどないだろう。
もしかすると、人口が減り続ける日本語の市場にこだわる限りは、こういう状況がさらに悪化していくかもしれない。
日本語世界から外に打って出ていくこと、メディア企業の側が流通力を再整備すること、このあたりに早く着手しないと、取り返しがつかないことになるかもしれないと感じている。