音楽一期一会

大人のピアノ教室講師の日々を綴ります

「蜜蜂と遠雷」

2017年03月19日 | 音楽つれづれ



ピアノの生徒さんから
是非読んでください!と薦められ
ピアノコンクールを舞台にした小説
「蜜蜂と遠雷」(著・恩田陸/幻冬舎)
を読みました

近年は忙しさを言い訳に
小説を手にとることなど
ほとんどなかったのですが
読み進めていけばいくほど
ストーリーの先が気になって
一晩で一気に読んでしまいました


特に心に残った一節
覚えておきたい言葉を
書き出してみます


■「媒介者?」

「作曲家も、演奏家も、みんなさ。
元々音楽はそこらじゅうにあって、
それをどこかで聴きとって譜面にしてる。
更には、それを演奏する。
創りだしたんじゃなく、伝えてるだけさ」

「預言者ですね。」

「そう。神様の声を預かって、伝える。
偉大な作曲家もアマチュア演奏家も、
音楽の前では等しく一預言者である。」

■何かが上達するというのは階段状だ。
ゆるやかに坂を上るように上達する、というのは
ありえない。
弾けども弾けども足踏みばかりで
ちっとも前に進まない時がある。
これがもう限界なのかと絶望する時間が
いつ果てるともなく続く。
しかし、ある日突然、
次の段階に上がる瞬間がやってくる。
(中略)
ああ、そうだったのかと納得する瞬間。
文字通り新たな視野が開け
なぜ今まで分からなかったのだろうと
上ってきた道を見下ろす瞬間。

■おおかたの演奏家は
作曲者の意図を理解して
曲のほうに自分を引き寄せていく。
(中略)
この子は逆だな。
曲を自分に引き寄せるというか(中略)
曲を自分の世界の一部にしてしまう。
曲を通して、自分の世界を再現している。
どんな曲を弾いても
何か大きなものの一部にしてしまっている。

■「フィボナッチ数列だね」
そう呟き、彼はにっこりと笑った。
不意に声を出して笑い出したくなる。
幸福。幸福だ。
世界はこんなにも音楽に溢れている。
(中略)
ミュージック。
その語源は、神々の技だという。