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寝具の情報・ニュースまとめブログ

元・寝具店経営者の視点からふとんの使い方・選び方を発信するブログです。

夏の冷感シーツ紹介・西川の「アイスPCM敷きパッド」。

2014年06月15日 | 夏の冷感(クール)寝具

こんにちは、ふとんや元店長です。
本日は手元の気象計によりますと、
午前十時現在、気温二十四度、湿度五十五%、
初夏らしいと言って良い一日かと思います。
日差しの強さには少し参りますが……。

写真は「アイスPCM敷きパッド」です。
今回はこちらをご紹介したいと思います。
インプレッションというほどでもないですが、
判断の援けになればと思います。

なお、
前回は「西川産業の『本当に冷たい』クールパッドシーツ」でした。

今回の冷感寝具は西川リビングさんのもので、
所謂「アイスミスト」シリーズ傘下の商品です。

先ず第一に、アイスPCM敷きパッドには主に三種類あります。
 「23,760円」のもの、
 「17,280円」のもの、
 「16,200円」のもの、
の三種類です(価格は全て定価、税込です)。
写真は真ん中の17,280円のものです。(注1

「PCMパッド」と言えば、
ジェルやセラミックストーン、電気式など以外の、
一見普通のシーツに見える冷感寝具群の中で、
初めて「確かに冷たい」と効果を実感させてくれた、
業界における記念碑的な商品である、という事が最初に思い浮かびます。

当時の、キュプラや冷感ポリエステルなどの疑わしい冷感シーツしか無かった頃に、
颯爽と登場してきたPCMパッドは正しく時代の寵児であったと言えましょう。
あれから三年、
PCMパッドはその登場の鮮烈さから今でもファンが少なくないですし、
西川リビングさんのクール市場を一手に担ってもいる重要商品に成長もしました。

その長所は、
 ・内蔵されたPCMシートのお蔭で二十八度の冷たさを味わえる。
 ・PCMシートの性質上、冷たさが十五分から三十分持続する。
 ・冷気を与えれば冷感はそれなりに回復する。
という三点に集約されましょう。

その肝となっているPCMシートですが、
写真に写っているブルーの側生地のすぐ下に敷かれております
(従って残念ながら見えません)。
シートは透明度の低い白色をしており、
中に多数のマイクロカプセルが埋め込まれています。
そのマイクロカプセル内に「PCM」が入れられているのです。

このPCMは二十八度以下の空気に触れると冷気を蓄え、
二十八度の温度を保ち続ける様に設定されています。
二十八度と言えば体温よりも八度くらい低い温度ですから、
お使いいただくとしっかり冷たく感じます。

また三十六度くらいの人間の体温に接し続けても、
PCMはすぐには温まらず、
蓄えてある二十八度の冷気を徐々に徐々に放出しますので、
十五分から三十分間、冷たさを楽しむ事ができます。

一旦温まってしまっても、
二十八度以下の空気に触れさせれば、PCMは再度冷気を蓄えます。
寝返りのたびに身体の熱から解放された部分は、
冷気を二十八度以下の空気に触れる事で順次それなりの早さで再び蓄えますので、
一度温くなってしまったらもう回復しないという事もありません。

さて、
そんな「アイスPCM敷きパッド」ですが、
この手の冷感パッドシーツの中では冷たさは一、二を争うと言って良いでしょう。

一方で発売して数年も経つと、流石に弱点も目立ち始めました。
他社も冷感寝具に努力を傾注した結果、
比較検討した場合に劣っていると言わざるを得ない点が多くなったのです。
特にいくつかの弱点は重大で、その改善が進まないのは残念です。
では以下ではその弱点を挙げていきましょう。
ただし、以下の弱点は冷感に関しては業界屈指である事を前提にお読みください。

弱点1、寝心地が悪い(或いは多くの方が悪いと感じる惧れがある)
 PCMパッドシーツの寝心地はどう悪いのか、またなぜ悪いのか。
 これは内蔵されているPCMシートの特性に関わるのですが、
 要するに内蔵シートのテンション(張り感)がかなりのものな為に、
 パッドシーツが相当な突っ張り感を持ってしまっており、
 それが非常に硬い寝心地を生んでしまっている、という事です。
 
 この張り感は侮れない代物で、
 ご体格やご体調に合わせて一生懸命に選ばれたベッドも、ふとんも、
 悉くがPCMシートの寝心地になってしまいます。
 マットレスの上にネットを張ってから眠る様な感じと言っては大袈裟でしょうか。
 
 私はそれなりに恵まれた体格を有する男性ですが、
 最終的にはこの寝心地に我慢がならなくなってPCMパッドの使用を止めました。
 張り感が肝心のPCMシートによって生じてしまっているのも、厳しい点です。

 但し改善の余地もあります。
 それはシーツ表面のキルティングをもっと緩やかなものにする事です。
 現在のキルトはかなり幅を狭く取ってきつく掛けていますが、
 キルトは狭くすれば狭くするほど張り感を余計に生じさせます。
 PCMシートがただでも「張り感大」なのですから、
 キルトまできつく掛ける必要はない筈です。
 これはせめてもの手段として、今後是非改善してほしいと思います。

弱点2、脱脂綿の為にビショビショする。
 業界はまだまだ「天然素材志向」花盛りです。
 私もコットンは大好きで、身の回りには沢山のコットン製品が溢れています。
 ただし適材適所は非常に重要で、中にはコットンが適さないものもあるのです。

 「アイスPCMパッド」の場合それが正に中わたです。
 PCMパッドは中わたが「ピュアコットン100%」となっています。
 このピュアコットンは脱脂綿の一種なのですが、
 非常に吸湿能力の高い素材です。
 汗を沢山かく夏ですから、一見、これは良い事の様にも思われます。

 しかし、問題は放湿能力の欠如にあります。中わたがコットンですと、
 一旦吸った湿気を溜め込んでしまい、全然吐き出してくれません。
 つまり、常に身体の下に水溜りが潜んでいる状態で眠る事になる訳です。
 これではどんなに涼しく眠ろうと工夫しても、
 ムシムシしてしまい、気持ちよく眠れる筈がありません。
 人が夏の夜に不快感を感じるのは決して温度だけではなく、湿度も大きな要因です。
 湿気は寝汗を呼び、不快感を誘発し、結局眠りを妨げるのですから。 

弱点3、二十八度以下の空気が必須。
 「アイスPCMパッド」を気持ちよくお使いいただく為には、
 二十八度以下の空気は必須です。
 
 これは入眠の際には大きなマイナスにはならないと思います。
 恐らくほとんどの方が入眠時には軽くエアコンをお使いになられるでしょうし、
 十五分から三十分、涼しい空気に触れさせてあげられればPCMは機能します。

 問題は入眠後の回復力です。
 実は室内温度二十八度以下というのは、案外高いハードルです。
 部屋にもよるのですが、
 初夏から夏の間、室温が二十八度に達してしまう部屋はそう珍しくありません。
 特に寝室は奥まった場所に位置している事が多いので、一層です。
 私の部屋もリビングでは常時換気機能の兼ね合いもあって、
 六月一日の午前四時時点で二十三度程度でしたが、
 奥まったリビングでは二十七度近くありました。

 PCMは二十八度以下の空気が得られる環境でお使いください、
 というのは少し不便な制約であると思います。(注2

以上、「アイスPCMパッド」をご紹介いたしました。
冷たさは相変わらず上等なのですが、
寝心地の悪さはやはり全てを台無しにしていると言えましょう。
栄華盛衰と言うべきか、たった数年前に王様だったこの商品が、
今ではすっかり転落してしまったのは寂しい事です。
しかしそれだけこのクールシーツというジャンルが注目され、
技術的な進歩が年々続いているという事の証左でもありますから、
いたし方のない事でもあるのでしょう。

注1
 価格の違いは、
  1、消臭シート内蔵型(一番高いもの)
  2、従来の改良型(真ん中のもの)
  3、PCMシートの幅を狭くした節約型(一番安いもの)
 などです。


注2
 扇風機をご使用いただくだけでもこの点は解消できるかも知れません。
 しかし室内環境に左右されやすいのと、
 扇風機許容派が多数という訳でもないので、注釈に留めます。






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