
こんにちは、ふとんや元店長です。
本日は手元の気象計によりますと、
午前九時現在、気温二十九度、湿度六十五%、
朝夕は大分涼しくなりましたが、まだまだ残暑が厳しいです。
興味深い記事が出ていたので、今回はこちらを取り上げます。
goonewsで掲載された朝日新聞電子版28年8月6日版によりますと、
「京都西川とホームセンター大手のLIXILビバは」
「2013年に販売した羽毛布団が、実際は中国産なのにドイツ産の表示で売られていたとして」
「商品の自主回収を始めた。両者は3年前に産地偽装の疑いを把握していたが、公表していなかった」
という。
「羽毛布団に産地偽装の疑いがある問題を朝日新聞が」「報じて以降」、
「大手メーカーや量販店が自主回収を公表するのは初めて」
の事であると付記されている。
同紙の取材によると、
「回収対象の羽毛布団は、京都西川から中部地方の卸売会社を経由して販売された」
「社内調査した結果、中国産の布団に『ドイツ産』のラベルが付けられて」いた事が「判明した」
という。
これは、と目を惹く見出しです。
「goo」などの配信ニュースで朝日新聞の記事を一読すると、
京都西川とホームセンターL社が共謀して中国産ダウンをドイツ産ダウンと偽装して販売、
更に三年間にも渡り隠蔽した挙句、朝日新聞の五月のスクープで社内的に持たないと判断がなされ、
京都西川とL社は観念して今回告知という形で情報を出した、
という様に読めます。
読んでみると、見出しよりも本文の方が更に激しい印象を受ける記事です。
元々京都西川はルートによってボーダーを変える傾向があると感じられなくもないメーカーで、
数年前にやはり同じ朝日新聞で大々的に同社の品質表示に瑕疵があると報じられた際も、
ホームセンタールートで流通した商品に関するものでした。
しかし見出しを見たあとに本文を読み、更に両社のHPを閲覧してみると、
報道と対応にはかなりの温度差があると気付かされます。
例えば京都西川のHPに掲載されている告知を見てみますと、
「羽毛合掛けふとんご愛用のお客様へお知らせ」
と題して、
L社のHPに「弊社製『羽毛合掛けふとん』の表記違いに関するお知らせが」掲載されている。
「商品と異なる表記の印刷物が封入され流通している可能性がある」
という内容の告知で、表記違いの印刷物が封入されたので連絡ください、という内容です。
L社の告知も「ご返金又は交換」しますという点が加わっている以外は同内容です。
これはどちらかと言えば業務的な告知という意味合いはあっても、
朝日新聞が言うような「偽装」という気配は余り感じられません。
記事の持つ事件性とは相当に異なるニュアンスを感じました。
ところでこのご封入されていた印刷物とはなんなのでしょうか。
西川各社の羽毛ふとんを購入すると、
品質表示タグの傍にプラ線で吊るされている、透明な袋がぶら下がっており、
中に羽毛ふとんの扱い方やダウンにまつわる証明書などが封入されています。
余り保管している方も多くはないと思いますが、お持ちの方は見てみて下さい。
大抵、厚めの紙が二~五枚程度入れられている筈です。
今回懸案の印刷物とはこうした封入されている厚紙の中の一枚で、
よく「ダウンパスポート」とか「ダウン証明書」などと呼ばれているものと思われます。
恐らく中国産ダウンの証明書が封入されるべきところに、
ドイツ産ダウンの証明書が封入されていたのでしょう。
或いはもっと単純に証明書でもなく、
「ドイツ産ダウン」と表記しただけの印刷物が封入されていたのかも知れません。
では上記の想定通りにドイツ産ダウンの証明書が封入されていたとして、
どの程度の悪質性が考えられるのでしょうか。
今回この羽毛ふとんの流通に関わった会社は三社で、
京都西川(製造)、中部地方の卸売会社(仲間卸)、L社(販売)です。
ケースごとに考えてみます。
1、
「封入したものが間違っていて、店頭では中国産ダウンの商品として販売していた」場合
これは最も軽度の場合であると思います。
しかし上記の予想が正しくダウン証明書を誤封入していた場合、
仮にも証明書(もしくは産地表示証)ですのでしっかり管理されるべきですし、
ホームセンターですから購入者は大体持ち帰りだったとしても、
メーカーや販売店が店頭(やHP)で掲示などを行なう事により、
「三年間隠蔽」との批判は免れ得たものと思います。
2、
「品質表示タグ裏面のダウン産地表示も「ドイツ産」となっていたが店頭では中国産としていた」場合
公表されている写真のタグは表面の品質表示部分だけなので不詳なのですが、
普通羽毛ふとんの品質タグの裏面にはダウンに関する何らかの表示が記載されています。
当商品は恐らく15,000円~19,800円くらいの所謂普及品であると思われ、
そのクラスの場合は「シルバーダウン」や「ホワイトダウン」など、
取り敢えず中わたが羽毛である事を表示している事が多いです。
因みにグースダウンクラスの羽毛ふとんになると「ポーランドホワイトグース」などと、
有名産地やグースダウンである事を誇った感じのタグ裏面表記になります。
この場合は消費者の誤解をより招きやすいだけに悪質度が増してきます。
ただこのケースは製造者・販売者ともにかなり気付き易いため、鳥渡かなり考えにくいです。
また記事や告知を見る限りでもこの線は薄い様に思われます。
3、
「誤封入していた上に店頭でも「ドイツ産」として販売していた」場合
これは悪質そのものです。
記事では偽装と指摘されている訳ですから、当事件の最大の問題点は、
「偽装表示をする事により本来の価値よりも大きな利益を得たか」
であろうかと思いますが、
このケースですと例えば17,800円くらいで販売されていたとして、
お客さんはこの値段なのにチャイナダックではなくドイツダックなのだからお得!
と考えて購入する訳ですから、立派な偽装だと思います。
或いは29,800円くらいで販売してドイツ産だしこの値段も納得!
と考えて購入する展開も考えられ、同じく立派に偽装です。
この場合はメーカーが騙している、仲間卸が騙している、販売店が騙している、
そして二社乃至は三社がグルである場合など、色々考えられます。
以上三つのケースを挙げてみました。
常識的に考えれば「1」なのではなかろうかと思います。
ところがyahooやgooなどでの配信ニュースだけを見ていては読めない、
同日付・朝日新聞デジタル会員向けの記事には上記引用部分のあとに妙な事が書いてあります。
即ち、
「産地が誤表示になった経緯を巡っては、関係者の間で説明が食い違っている」
「京都西川は『卸売会社が(京都西川の)社員を脅してドイツ産の下げ札を取り寄せてつけた』と説明する」
「卸売会社は『京都西川の社員が自らドイツ産の札を付けた。』」
「『3年前から両社に回収を要請しており、偽装を指摘した当社に責任転嫁』『言語道断』と反論している」
とあります。
ズブズブな有様が思い浮かびますね。
脅すという言葉が出てくるのにも驚きです。
羽毛ふとんは品質表示タグ裏面に羽毛の産地・品種を縫いこんでいない場合、
今回の様に下げ札(商品に吊り下げられている紙の証明書)に瑕疵があれば、
即ちそれが御旗になってしまうという実情があり、
やろうと思えば色々な事をやってしまう事も不可能ではない訳です。
今回のケースが実際にどうであったのかは分かりませんが、
朝日新聞にここまで書かれた以上は、
事実ならば告知を充実させるべきだし、事実で無いならば告知で反論すべきです。
また朝日新聞も、元々の商品価値を吊り上げる様な販売行為であったのか、
つまり偽装という言葉に踏み込んで報道したからには、
どういった悪質性のある製造・卸売・販売であったのか、
当時の店頭状況に関するものだけでも続報が欲しいものです。
この報道は恐らくは内部リークによるものでしょうから、判明しているのではないかと思うのですが。
先ずは盆明けの続報を待ちたいと思います。
※追記(28/8/22)
八月十九日に京都西川の公式HPで情報が更新され、
誤表示のもととなった下げ札の画像が追加されました。
画像を見る限りではダウンパスポートの類ではなく、
当商品にはドイツ産ダウンが充填されている、などと書かれた説明札な様に見えます。
但し羽毛証明書でなかろうとも誤認を招くには十分とも思えます。
ところで八月二十一日時点で、
当該記事をheadlineの形で配信していた、
yahooとgooの両記事が削除されました。
その理由は明らかにされていませんが、今後の展開は引き続き注目されるところです。
本丸の朝日新聞の記事はまだ健在ですので、
この誤表示・偽装報道がどうなっていくのか、
これが誤報なら新聞に謝罪広告を掲載しなければならないと思いますし、
根拠があるのであれば業者側はもっと踏み込んだ告知が必要になりますから、
関心を持って見つめていきたいと思います。
※なお、京都西川とL社では、
誤表示のあった羽毛合掛けふとんについてのお問い合わせ窓口が開設されています。
冒頭の画像は当該羽毛合掛けふとんのタグです。品番にご注目ください。
画像は京都西川様のHPより転載させていただきました。
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