ひらつか日記

1999年に漫画家おかざき真里ホームページの連載コーナーとしてスタートした身辺雑記×音楽紹介日記です。

ポーツマス・シンフォニア

2007年10月15日 | ジャズ
Hommages


男3人で焼き鳥を食う。たまたま同じ会社を辞めた者同士で、ひとりは映画監督、ひとりは会社の社長。あ、そうか、わたしも会社の社長だったね、ひとりでやってると時々忘れる。人を雇用して会社を経営するというのはなかなか大変なことで、そちらの社長は少々おつかれ気味。気晴らしには何がいいかという話になって、監督言うには、自分が全くできないことに入門してみるのがいいらしい。彼は最近、バイクを買って乗ってみたり、カメラを買って写真を撮ってみたりしてるとか。いずれも全く素人なので、バイクは青山通りの真ん中でエンストする、カメラは本職の映画のカメラマンに笑われる…という具合で、その“できない”感じがいいのだと言う。社長は何かやりたかったことはないの、というとサックスを吹いてみたかったと。そうか、それなら、ものすごく本格的なサックスを奮発して買いなさい、それを多摩川べりで吹いて、ロクに音が出ない、という体験をするといい。ケチって安いサックスじゃだめで、高いやつを買うのがミソなんだ。何となくわからんでもない。先日書いた「趣味が無い」という話(2007.08.27日記参照)にシンクロしてるような気がする。うーん、そうなるとギターかなぁ(笑)。そんな話をしていて思い出したのが、ポーツマス・シンフォニアというクラシックのオーケストラ。ギャビン・ブライアーズ2000.6.12000.1.7にも記述あり)というイギリス人現代音楽作曲家のアイデアで、全く楽器など触ったこともない人間を集めて、一週間でクラシックのコンサートに漕ぎ着ける、という無茶なプロジェクト、というかパフォーマンスアートか。1日目のミーティングで曲と担当楽器を決めて、2日目に楽器屋に駆け込んで…という具合で、当たり前ながら、まともな演奏になるわけがない。本番は、観客もやってるほうも抱腹絶倒だったらしい。あまりのバカバカしさに、評判をききつけたブライアン・イーノ2005.1.42000.7.141999.12.2にも記述あり)も参加したとか。70年代にレコードが出たらしいが、CD化はされておらず、わたしも未だに聴けていない。ぜひ一度聴いてみたい(というかたぶん一度でいい…笑)。今日の推薦盤はその代わりに、Hommages / Gavin Bryars 。ギャビン・ブライアーズは、現代音楽の作曲家としての顔とは別に、ジャズのベース奏者という顔も持つ。この盤は、ジャズピアノの巨星、ビル・エヴァンス2004.7.252001.3.21にも記述あり)へのオマージュ。構成上はいかにも現代音楽、というミニマルミュージックが基調だけれど、ピアノをはじめとする全体の音色が何ともいえない幽玄さを醸しだす。静謐で暗く曇った音色。名盤である。この盤も長らく廃盤で、場合によっては中古で10万円近い値段がついてたりしたので、あまり気軽には推薦できなかったが、さっきアマゾンをのぞいてみたら、11月に英盤で再発売されるような気配。どうせまたすぐ廃盤になるので、この機会をお見逃し無く…。