先日、用事があって実家に帰った。
少し早かったけれど、母の日という花を買って行き、直接渡した。
そしたら「あら、花なんてもったいないから別にいいのに」だって。
数年前、体調を崩してしいまい、割と大掛かりに身体の検査を受けた。
丁度そのころ母も同じく検査を受けていた。
特に何も無かったのだが、僕は驚いた反面、やっぱりか、と頭の何処かで思っていた。
というのは母と僕にはほんのわずかだけど、不思議な力があるようで、
あるときある瞬間だけ、目の前に居る人の誕生日が当てられたり、
身内に良くないことがあると自分の体調が悪くなるのだ。
母は英語の教師で、当然僕も母に英語を習っていた。
小さい頃から父があまり家に居なかったので、 母は父親の役割も多少はせねばらず、それでいて師であった。
母は厳しかった。
今思うと自分の全てを子どもに託して、将来職に困らないようにしたかったのだろう。
しかし、子どもには子どもの世界がある。
親の想いを押し付けられても困る、と当時は思ったものだ。
そして母に本来言ってはならないような言葉で、そのことを伝えたときの悲しそうな顔は今でも忘れられない。
同時に母は一人の女でもあり、ある人のことを考え、食事が喉を通らなくなったことを僕は知っている。
当時はあれだけ気力に満ちあふれていた母が、しおらしくなったことが理解できなかった。
数年後その人のお陰で僕は大学にも通うことができ、掛け替えのない仲間と出会うことができた。
今こそそのときの気持ちが解る。
母は、女性は、強いのだ。
男性の10倍は強いのだ。
自分がこれまで生きてこられたのも
支えてくれる仲間に会えたのも
母さんが頑張ってくれたお陰なんだから、
それに比べたら花なんて、ちっぽけなものだ。
これからもどうか元気でいて欲しい。
親孝行するからさ。
とは、とても恥ずかしくて言えなかった。
これから、僕に何ができるのだろう。さぁ考えよう。