Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

「わたしを離さないで」第2話。

2016-01-23 00:46:15 | テレビ・ドラマ


「わたしを離さないで」の第2話を見ました。裏のバルスに押されたのか、第1話の視聴率は振るわなかったようですが、さて今週はどうなるやら。
Twitterではこのドラマよりもニシンのパイのほうが話題になっていましたが、まあTwitterってそういうところですもんね。

陽光学苑でともに学び暮らす子供たち。校長の恵美子先生から、自分たちが何のために生まれてきて、ここに暮らしているのかを教えられる。
自分の体の一部を、誰かに提供するため。尊い使命のために生まれてきた“天使”。

第1話でこれをバラシちゃうのかと驚きましたが、原作はイギリスのベストセラーなわけだし、あまりもったいぶって引っ張るのもよくないですよね。こんな暗いテーマのドラマを、10年代の視聴者は見てくれるのだろうかと心配にもなりますが。90年代の野島ドラマ全盛期ならともかく。そう思うと、あの頃は暗いドラマを好き好んで見てられる余裕がまだあったってことなのか…暗いだけじゃなくて過激な要素もあったから、それによるものも多いだろうけど。

第2話の冒頭は、大人になった恭子と美和の再会から始まりました。久しぶりに会えた旧友の前ではしゃぎ、甘えてみせる美和。それとは逆に、押し殺した表情で、淡々と美和に接する恭子。がらんとした病室に二人きりのこの場面、見てるこちらにも圧迫感がハンパなく伝わってきて、金縛りにあったみたいに画面から目をそらせませんでした。うー怖い。水川あさみを怖いと思ったことなんてなかったのに。怖いよう。綾瀬はるかはドラマの演技とCMの演技でギャップがありすぎて怖いよう。そして綾瀬はるかどんだけCM出てるんだよう。本編にもCMにもたくさん出てくるので、彼女のファンじゃなければリアルタイム視聴はかなりキツいでしょうね。CM早送りできないから。

美和の病室にあったのは、子供の頃恭子が友彦からもらったCD。
「なんでこれがこんなところに?」
恭子じゃなくても突っ込みたくなる案件ですが、恭子はこれを必死にスルー。うーん、そうですよね。いかにも「突っ込んでくれ!!」てな感じのボケには誰も突っ込みたくないですよね。美和はボケの加減を間違えています…ってこれそういう意味じゃないか。CDにしろ白々しいほどとぼけた発言にしろ、美和が恭子に何を伝えたいのかは今後明らかになるのでしょう。そこがこのドラマのクライマックスになることは間違いなさそうですが、視聴者を納得させられる脚本&演出&演技になるかどうか。

現在から過去に戻って、自分たちの秘密を知った陽光学苑の子供たちは、自分たちの体の一部が誰かに提供されるというのがいまいちピンとこない様子でした。無理もないよね。学苑の教科に社会科はないから、臓器提供てのがどんなことなのかも教えられてないだろうし。ただ、恭子はなんとなく不穏なものを感じ取っていたみたいですが、なぜそう思ったのかはよくわかりませんでした。感受性が鋭いってことなのかしら。恭子が描いた絵をマダムは展示会で選んでたし。美和の作った手の塑像は選ばれなかったけど、あれはあれで価値のある物、訴える力があるものだから、マダムは恐怖して選べなかったんでしょうね。美和の「手」を通じて、マダムが子供たちに恐怖もしくは罪悪感を抱いていることを、原作をうまくアレンジして表現しているなーと思いました。あの状況であの「手」を差し出されたら、そりゃマダムは怖がるだろうよ。

罪悪感といえば、子供たちに未来への希望と、外の世界の素晴らしさを教えようとしていた龍子先生が、お前が余計なことをするから子供たちが犠牲になったのだと恵美子先生に罪悪感で縛りつけられ、屈服させられる場面は背筋が凍りました。そして、実体のないモンスターを、さもそれが存在するかのように吹き込み、子供たちの心に恐怖心を植え付けて逃げられなくするのにも。こういう、子供たちを支配するために大人が何をしていたのか、原作では触れられてなかったので、これもドラマオリジナルといえばそうですが、原作のヘールシャムでもこういうことをしてたのかもねと思わせるように、うまくリンクしている気がします。まあ、いきなり子供が2人も…ってのは過激すぎて引く人たくさんいそうですけど。小さい子供がいる人とか、病気や障害で苦しんでいて、誰かが体の一部を提供してくれるのを待ってる人とか。

恵美子先生の蛇の舌(指輪物語のほう)っぷりもすごいですが、それに負けないのが恭子をコントロールしようとする美和の手練手管です。美和が恭子を支配しようとする根底には、展示会で作品が選ばれないことからくるコンプレックスがあるのでしょうけど、憎しみとか妬みとかだけじゃなくて、そこには友人としての愛情もあるのだろうなーと期待しています。独占欲かもしれないけど。友彦が恭子にあげたCDを奪ったのは、恭子が自分より友彦と仲良くするのが許せなかったから、とか。普通の環境ならありえなさそうなことでも、陽光学苑の狭い人間関係なら、「外の世界」どころか「家族」すら知らない彼らなら。

第2話を最後まで見ても、美和の考えていることは子供時代も大人になってからもまったくわからないままでした。それがストーリーのカギを握る重要なことだというのは、原作を読んでる者からしたら理解できるのですが、そうじゃない人から見たらどうなんだろうな…離脱しちゃうかな。それでも、幼少期の美和を演じた瑞城さくらちゃんは、ドラマやCMにひっぱりだこの鈴木梨央ちゃんにひけを取らない演技をしていて偉いなぁと感心しています。


第1話も第2話も、子役の場面がメインでしたが、気になるのは彼らが自分たちの役をどう理解していたのかということです。「外の世界」で、自分たち以外の人間がどんな生活をしているのか、どんな風に人とつながって暮らしているのかも知らされずに育った子供たちが、何を考え、どう振る舞うのかを想像して演じてみなさいと言われても、彼らにできるのでしょうか。できなければいけないのでしょうが、できてほしくない気がします。

先日、うちの母親が、戦争中に学徒動員で戦死した大叔父(私の祖父の弟)の遺品の中から、戦地から故郷の家族に送った手紙を引っ張り出してきました。大叔父が戦地から送ってきたはがきには、勇ましいことばかり綴られていて、その文章の下にはアメリカの軍艦に向かって“下降”していく日本の戦闘機の絵が描かれていました。崇高な使命、尊い犠牲、捧げられてこその命-荒唐無稽と思えるほどの大胆な設定の上に作られたこのドラマを見ていて、なぜか大叔父の描いた戦闘機が頭をよぎりました。南無。


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