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「MBA的常識と非・常識のすすめ」(1)

2008-03-08 10:54:54 | 講演・記事
下川哲央教授の退任記念・最終講義を要約した内容を3回にわたってご紹介します。

非・常識とは?
商品を出すときには商品名が大事になります。今回のタイトルでこだわったのは「非・常識」の「・」です。これは非常識ではありません。非常識というのは、社会通念上の思慮、分別、教養がないことを意味しますが、非・常識という言葉には「脱常識」といった意味を込めています。この講義のメイン・メッセージは「MBAホルダーは、MBAの知識をしっかりと身につけた上で、ビジネスの常識にとらわれず、それを乗り越える独自の判断力、独創力を持つべきである」ということです。

自分の頭で考える
MBAで学ぶ常識的な内容には、経営戦略、組織マネジメント、マーケティング、財務会計等があります。こうした知識をビジネスに応用するときには、何らかの工夫をしなければなりません。私は、東京の大学におけるMBAプログラムの先生方と交流がありますが、そうした先生方と話していて話題になることは、MBAで学んだことをそのまま鵜呑みにして、理論の受け売りばかりをする人がたまにいるということです。自分自身のモノサシで考えることを止めてしまう人ですね。ビジネスに唯一の正解は存在しません。現場に即して自分の頭でしっかり考えることが要求されます。

MBAは出発点
一般的に、MBAホルダーは優れている人が多いと思います。ただ、医師であっても、会計士であっても、国家試験に合格したことは出発点にすぎないのと同じようにMBAを取得することは出発点に過ぎません。そういう意味では、大学院を修了した後の過ごし方がポイントになると思います。経営の理論は、自分自身が深く考えるための補助的な手段にすぎません。考えるのは自分であって、セオリーが考えるわけではないからです。MBAで習得した知識に硬直的に縛られず、自分の頭で考える独創力を養うことが重要になります。

常識を鵜呑みにしない
ビジネスの常識を鵜呑みにしてはいけない2つの理由があります。第1に、ビジネスとは環境の産物。取り巻く環境は刻々と変化するものです。今の環境が将来も続くとはかぎりません。第2に、ビジネスは再現性が乏しいといえます。自然科学のセオリーとの違い人間社会の条件は変化するため、ある条件でうまくいった経営手法が別の条件でうまくいくとはかぎりません。ですから、ビジネスの常識は「仮説」であることが多い。ビジネスは仮説の連続であるという自覚は忘れてはいけないでしょう。業界の「常識」にとらわれていると、ビジネスを発展させることはできなくなってしまいます。

経営理論の使い方
経営のセオリーは、成功した企業の要素から構築されます。ですから、理論を現実に当てはめる場合、「予断を持たず、虚心坦懐に」事実の収集・整理・分析し、自分の頭を徹底的に使うことが大切になると思います。自分の頭で考えて本質をつかんだときに、知恵を獲得することができます。知恵は、ビジネスの現場に眠っています。MBAで理論をしっかりと理解し、その上で、ビジネスの現場において徹底的に自分の頭で考える。つまり、MBAの常識をしっかり学び、その上で「非・常識」を学ぶことが重要になるでしょう。

(次回に続く)

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