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小樽のブランド価値を考える

2008-12-22 17:59:44 | 講演・記事
マーケティングマネジメント」、「ケーススタディ」の授業を担当している近藤公彦教授による「小樽商大ビジネス・ワンポイント」が小樽商工会議所会報11月号に掲載されました。転載を許可されましたので、その内容をご紹介いたします。

小樽のブランド価値を考える ―地域ブランド調査から―

テレビや新聞などで取り上げられ、すでに多くの方がご存じのとおり、先日、ブランド総合研究所が「地域ブランド2008」を発表しました。この調査はアンケートに基づいて地域のブランド力を「魅力度」という視点から数値化したもので、そのランキングで小樽市は第1位の札幌市、2位の函館市、3位の京都市、4位の横浜市に次いで2年連続で見事第5位に輝きました。小樽市民の方、小樽に関係の深い方はこの結果を大いに喜ばれたことでしょう。小樽はそれほど魅力的な街と全国から認められているのです。

さて、この調査の魅力度ランキングは地域ブランドのランキングでもあります。そこで私の専門とするマーケティングの視点から、「地域」としてのブランドについて少し掘り下げて考えてみたいと思います。

マーケティングでは、ブランド価値は次の4つの要素から構成されると考えられています。ブランド認知、ブランドロイヤルティ、ブランド連想、そして知覚品質です。

ブランド認知は、そのブランドがどれだけ知られているかを示すものです。おそらく日本で小樽を知らない人はいないでしょうし、観光で小樽を訪れることの多い韓国や台湾の方の中でもその数はごく少数でしょう。このことは、小樽というブランド認知が非常に高いことを示しています。高いブランド認知は高いブランド価値につながります。

ブランドロイヤルティは、よく耳にされると思いますが、そのブランドに対する個人の固執度を指します。「バッグはルイ・ヴィトンでなきゃ!」あるいは「ビールはサッポロ黒ラベルに限る!」という感情は高いブランドロイヤルティを表しています。このブランドロイヤルティが高いほど、リピート率が高くなります。つまり、小樽に対するロイヤルティが高い人は、小樽を何度も訪れるのです。

ブランド連想とは、あるブランドが特定の事柄と結びついていると消費者が認識することを指します。例えば、ナイキ=スポーツ、プリウス=エコ、ディズニー=ミッキーマウスという連想です。地域ブランド調査では、イメージ想起率という項目で「その地域に何らかのイメージを抱いているか」を聞いています。それによると、小樽市は札幌市、函館市、富良野市に次いで京都市とともに同率4位にランクインし、ここでも非常に高い順位にあります。つまり、小樽は単に知られている(ブランド認知)だけでなく、そこには特定のイメージが定着しているのです。それは運河、寿司、ガラス、石原裕次郎などであったりするのでしょう。

そして最後の知覚品質とは、顧客が主観的にブランドに対して感じる品質を言います。例えば、「この車は高級感がある」というのはそのグレードに対するドライバーの主観的な評価ですし、「このブラウスはオシャレだ」というのも同様です。この知覚品質を左右する最も重要な要素はサービス能力、つまりどの程度のサービスを提供できる能力を持っているかです。この能力が高いと、顧客は高い品質を知覚します。「おもてなし」サービス、交通サービス、ビジネスサービス、行政サービスなど、小樽を訪れる観光客、ビジネスパーソン、そして何より小樽市民に対して小樽はどの程度のサービス能力を発揮し、満足度を高めているのでしょうか。

ブランド認知、ブランドロイヤルティ、ブランド連想の3つでは小樽はすでに最高レベルに達していると言えるでしょう。とすると、小樽のブランド価値をさらに押し上げる要素、それは知覚品質をより高めること、つまり小樽が提供するサービス能力を研ぎすますことなのです。


『小樽商工会議所会報』,2008年11月,通算595号,
p.23,「小樽商大ビジネス・ワンポイント」より転載

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