OBSニュース

小樽商科大学ビジネススクール(専門職大学院)に関する情報を定期的にお知らせいたします。

在学生インタビュー「ビジネスプランニングII」編(1)

2008-05-30 09:35:19 | 学生・OBの声
「ビジネスプランニングII」は、2年生前期に履修する「事業計画の立て方に関する実践科目」です。学生さんは、1年生後期に「ビジネスプランニングI」で事業計画の基礎を学び、ビジネスプランニングIIでは、さらに高度な事業計画に挑戦します。OBSニュースでは、学生さんの声を3回に分けてお伝えします。1回目の今日は、授業に関する印象について聞いてみました。

Q:ビジネスプランニングIIの授業を受けてみて、どのような印象を受けますか?

Aさん:
事業の全体を考える」という機会はなかなかないので、勉強になります。アイディアが浮かんだとしても、それをどうやって実現するか。マーケティングだったり、財務だったり、オペレーションをどうするかについて、一通り考えなきゃいけないというのが授業の目的でもありますし、面白いところです。ただし、実行できるようなプランをつくることは難しいですし、実際に計画を立ててみると、本当に事業を立ち上げたりしている人はすごいなと思います。

Bさん:
授業の進め方として、グループ単位なのがいいなと思っています。作業が若干軽くなるというメリットもありますが(笑)、それ以上に、自分でプランをつくると、一人では限界があって、他の人の見方が非常に新鮮だったりします。「あ、こういう風な見方もあるんだな」というのが何回もありますので、グループで進めることの良さを感じます。

Cさん:
ディスカッサント(指定討論者)があるというのもいいですよね。自分の考えている事に対してのいろいろな突っ込みがあって。後からペーパーで皆さんのコメントをいただけるんですけれど、「やっぱり、ここは足りないのかな」とか、全然違う視点をもらうことが多いです。普段なかなか、そういう風にストレートにものを言える機会というのはないと思うのでよいと思います。

OBSブックレビュー『戦略実現の組織デザイン』

2008-05-27 09:30:50 | 書籍紹介
「ケーススタディ」「戦略的ファイナンス」を担当している籏本智之教授から、お薦めの本を紹介してもらいました。

ロバート・サイモンズ『戦略実現の組織デザイン』
(谷 武幸、松尾貴巳、窪田祐一、近藤隆史訳)中央経済社、2008年
Robert Simons, Levers of Organization Design: How Managers Use Accountability Systems for Greater Performance and Commitment, Harvard Business School Press, 2005.

ハーバードビジネススクールのサイモンズ教授の3冊目の著書が翻訳された。彼は序文で次のように述べている。

『学生に対し、組織を有効にデザインする方法を教えるビジネススクールはほとんどない。それはなぜか。それは、このテーマが各学問の専門領域を越えているからである。有効に組織をデザインするためには、経営戦略、マーケティング、組織行動、IT、会計、そしてリーダーシップを理解する必要がある。』

組織をデザインするという、営利・非営利を問わず、管理者の最重要課題へのチャレンジと処方箋の提示が本書の意図である。その特徴は、レバースライダーといった日常的な親しみやすいツールを巧みに使っている点にあるといえる。部門構造というレバーでは、コントロールの幅についてのスライダーを使い、診断的コントロールシステムというレバーでは、アカウンタビリティの幅についてのスライダーを使い、インターラクティブネットワークというレバーでは、影響の幅というスライダーを使い、責任共有というレバーでは、サポートの幅というスライダーを使って、競争優位を持続できる組織をデザインすることができると主張する。

組織という直接には触ることのできない構造物をデザインするために、レバーとスライダーという装置を開発・応用したのが、本書である。

評者としては、サイモンズが使ったアカウンタビリティという用語が興味深い。わが国では、会計責任と訳されていることもあるが、この用語が規定する経営管理における重要性も是非、本書で味わっていただきたいと思う。

『マネジメントと戦略』の授業

2008-05-23 09:30:21 | 授業紹介
OBS基本科目である「マネジメントと戦略」の授業内容について、李濟民教授に紹介してもらいます。

戦略では、経営者および事業レベルのマネジャ達の基本的役割を理解しながら、経営戦略の策定や遂行に必要な理論および分析ツールを学習することを目的としています。

具体的には、企業環境の分析、経営資源・能力の獲得・蓄積方法と展開方法、事業戦略(競争戦略)・全社戦略の選択に関する理論、グローバル時代の戦略等を、できるだけ多くの企業の事例を取り入れて、グループディスカッションを通して学ぶこととしています。

SWOT分析、5フォース分析、バリューチェーン、VRIO分析、ポートフォリオ分析など戦略論の定番ツールを使いこなすことにより、プレゼンテーション能力を高め、複数の戦略的代替案の中から推奨案を選び出す根拠を提示することを学習することによって、より説得力あるコミュニケーション能力を身につけられることを期待しています。

<李先生へのインタビュー記事はこちら

リレーションシップ・マーケティングの時代

2008-05-20 09:35:08 | イベント
4月23日、かでる2・7(札幌市)で行われた日本マーケティング協会主催の戦略セミナーにて、近藤公彦教授による「リレーションシップ・マーケティングの時代~顧客獲得から顧客維持へ~」と題した講演が開催されました。その内容を報告してもらいます。

講演の内容は、リレーションシップ・マーケティングの先進的な事例<スルガ銀行、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(レンタルのTSUTAYAを運営)、コープさっぽろ、ニコンなど>を紹介しながら、その役割と重要性を学ぶ、というものです。

経済・市場の成熟化、モノからサービスへ、IT技術の発達による情報化の進展などを背景に、リレーションシップ・マーケティングという考え方がマーケティングの主役を担うようになってきました。リレーションシップ・マーケティングとは、顧客の高い顧客ロイヤルティをつくり出すことにより、優良顧客との長期的・継続的な関係の構築・維持を志向するマーケティングを指します。CRM(customer relationship management)はそのための具体的手法として位置づけられます。

リレーションシップ・マーケティングは、これまでのマーケティングの発想、概念、理論を大きく変えることになります。例えば、新規顧客の開拓から既存顧客の維持へ、ブランド・ロイヤルティから顧客ロイヤルティへ、製品ポートフォリオから顧客ポートフォリオへ、ブランド資産から顧客資産へ、製品ライフサイクルから顧客ライフサイクルへ、市場シェアから顧客シェアへ、などが挙げられます。

これまでのマーケティングは顧客志向を謳いながらも、実態は製品・ブランドの管理を対象としてきました。しかし、真の顧客中心主義であるためには顧客に焦点を当てたマーケティング、すなわちリレーションシップ・マーケティングが必要となります。リレーションシップ・マーケティングを実践するためには、次のような視点が重要です。

・顧客を熟知すること。
・顧客を大切な資産と見なすこと。
・顧客にとっての価値とは何かを追求すること。
・顧客に向けて経営資源・機能、活動を統合すること。
・顧客フォーカスを組織的価値とすること。
・競合する企業・製品への相対的な優位性を築くこと。


こうした視点の転換がリレーションシップ・マーケティングには求められるのです。

「マーケティングマネジメント」の授業

2008-05-16 09:27:50 | 授業紹介
授業内容について近藤公彦教授から紹介してもらいます。

「マーケティングマネジメント」は1年次前期で学ぶ必修の基本科目です。

マーケティングマネジメントの目的は、企業の市場戦略を理論的・実践的に理解し、マーケティング戦略の分析・立案に有用な概念や理論枠組みを習得することにあります。その際、次の2つに重点を置いています。1つは、マーケティングの基本戦略である製品戦略、価格戦略、プロモーション戦略、そして流通チャネル戦略に関する理論を体系的に習得すること、もう1つは、それぞれのテーマに則したケースを取り上げ、クラス・ディスカッションを通じてマーケティング理論を実際の企業行動のなかで理解することです。

授業の特徴としては、まずゲスト・コメンテイターがあります。ケース・ディスカッションの際に適宜、ケースで取り上げた企業からゲスト・コメンテイターをお招きしています。ケースの当事者のコメントは、学生の皆さんにとても刺激的であるようです。また、授業の合間に息抜きを兼ねて、アメリカのビジネススクール事情をお話しています。ビジネススクールのランキングから、私自身がアメリカで体験した生々しい(外では言えない)話まで、話題満載です。そして3つ目の特典(?)として、毎回、ベストレポートの方にノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のステッカーを差し上げています。昨年度から始めましたが、随分とモチベーションが上がるそうで、先日、友人に頼んで郵送してもらって在庫を補充し、今年度も続けることにしました。

顧客満足度を高めてナンボのマーケティングですので、多面的に価値ある授業を行っていきたいと思っています。

<近藤先生へのインタビュー記事はこちら

時代が読めるビジネスの達人講座

2008-05-12 18:10:31 | イベント
道新ぶんぶんクラブと小樽商大共催のビジネス講座にて、OBSの籏本智之教授が「時代が読めるビジネスの達人講座」と題した講演を行います。内容は、経営活動が複雑化する中、新聞で報じられた事例を基に会計情報をいかに分析し、経営に活用することができるかなどを易しく解説する、というものです。
受講は無料ですが、5月20日(火)までに申し込みが必要です。
ご関心のある方は道新ぶんぶんクラブホームページをご覧ください。
http://bunbun.hokkaido-np.co.jp

開催日時:平成20年5月30日(土)14:00~15:30
会  場:小樽商大札幌サテライト

「組織行動のマネジメント」の授業

2008-05-09 09:32:49 | 授業紹介
OBSの基本科目である「組織行動のマネジメント」の授業内容について、出川淳教授に紹介してもらいます。

組織では色々な人が仕事をしていますが、各人の持てる力を最大限に活かして組織の業績や仕事の効率を高めるとともに、組織で働く人々の満足感を高めるために必要となる基礎的な知識や考え方、スキルといったものを身につけていただくことを、目的とした授業です。具体的な内容としては組織構造、権限委譲、リーダーシップ、マネジメント、組織変革、人的資源管理、能力開発、動機付け(モチベーション)、評価・褒賞・報償などを扱います。

履修生の皆さんには、単に知識を覚えてもらうということではなく、事例(ケース)に対する検討や他の履修生や教員とのディスカッションを通じて、“納得感”や“腑に落ち度合い”を高めてもらい、実際に使える知識としてスキルを向上させていただきたいと考えております。そのために、なるべく履修生の皆さんがご存知の身近な企業や事例をケースとして取り上げるとともに、TV放映された番組やニュースなども本授業に関連する内容を含むものについて、ビデオケースとして紹介いたします。

<出川先生へのインタビュー記事はこちら

OBSブックレビュー『「官製市場」改革』

2008-05-07 09:25:17 | 書籍紹介
相内俊一教授にお薦めの本を紹介してもらいました。

八代尚宏編 「『官製市場』改革(シリーズ:現代経済研究23)」 日本経済新聞社

国が直営で、あるいは民間の事業活動に深く関与、介入している分野に、民間が競争原理を持ち込んで参入しようとする動きが、小泉政権以後の日本の政治の中で推進、奨励されてきた。本書の編者は、上記の分野を「官製市場」と呼ぶ。官業や、非営利事業者によって独占されている「官製市場」を開放し、対等な競争状況を導入すれば、大きなビジネスチャンスが生まれ、新規雇用が創出されるというのが、編者の基本的な立場である。

本書は11章から構成され、各章を1人ないし2人の研究者や官僚が担当執筆している。編者による<官製市場改革はなぜ必要か>という基本的な問題意識から、<郵政3事業><高速道路事業><水道事業><公立病院><地方分権と教育><公立保育所><公共職業紹介事業><海外での市場化テスト><日本型PFI>と、かなり広範な事業分野について章立てがされている。出版された時期が、いわゆる「郵政民営化選挙」の直前で、その後のさまざまな政治決着による「民営化」路線の変化に注意すべき点があるが、このことは本書の議論や分析の評価を大きく変えるものではない。

本書は、いわゆる「民営化論」の各論が、どのように根拠づけられているかを知る上で役に立つが、一方で、「公共性」とは何か、「公共サービスを保障する」ために何が欠かせないかという観点が弱い。「公共性」「公共空間」についての見識と、「官庁セクショナリズム」の知識とを駆使しながら本書を読むことを勧めたい。

教員インタビュー(11)相内俊一教授

2008-05-02 09:39:34 | 教員紹介
「パブリック・マネジメント」を担当している相内俊一教授にお話を聞きました。


Q:先生のご専攻を教えてください。

私は、政治学において「政治心理学」「政治行動論」と呼ばれる分野を研究してきました。この分野では、人々が投票行動をはじめとする政治決定をするときに、どのような要因が働いているのかを研究します。ミクロ的にいえば、人はどのような情報を基に投票するかを、マクロ的に見ると、ある政治キャンペーンがどのような選挙結果をもたらすかというようなことを分析します。

Q:マーケティングにおける「消費者行動論」や「プロモーション戦略」と近いような気がしますが。

そうですね。人間の行動を扱うという点では共通の枠組みを使っているのかもしれません。今の選挙は、アメリカの大統領選を見てもわかるように、テレビに映るときの服装・声・言葉づかい・しぐさなどの印象マネジメントが大きな影響を及ぼしています。これは、人々が合理的・論理的というよりも、感情的・印象的にものごとを決めるからです。企業のプロモーションにおいても同様のことがいえると思います。

Q:先生は、パブリック・マネジメントという講義を担当されていますが、研究との接点はどこにあるのでしょうか?

政治学では、「社会を作る人間」と「社会に作られる人間」という両方の側面を研究します。人々が自由に社会を作ることができるためには、自由に政治に参加できなければなりません。そのためには地方政府のあり方が重要になります。地方政府の官僚が、自分たちの活動を再点検して住民の視点でマネジメントを振り返ることが必要です。

Q:住民中心のマネジメントですね。

そうですね。ただし、安直に住民満足を高めればいいわけではありません。例えば、ゴミの収集問題にしても、行政がすべて処理してくれれば楽ですが、地域コミュニティの活性化やコストの問題をクリアするためには、住民が積極的に関わることが重要になります。その意味で、パブリック・マネジメントでは長期的な見方が求められるのです。私の授業で「住民満足を高めるためにはどうしたらいいか?」というテーマで議論すると、多くの場合「住民が自ら決める」ことが大切であるという結論になります。そのためには、住民と行政の間に信頼関係が必要です。そうした信頼関係をどう築くかを考えるのもパブリック・マネジメントの重要な側面といえます。

Q:先生は、海外でもご活躍されていますが、欧米のパブリック・マネジメントはいかがでしょうか?

ヨーロッパでは住民満足調査をしないというケースがまれです。行政の活動を「パフォーマンスの面、決定プロセスの面、コストの面」から数値的に評価することが当たり前になっています。日本も、こうした客観的な評価システムを導入すると同時に、住民が主体的に地域を考え、変えていくような仕組みを導入することが求められていると思います。

Q:ありがとうございました。