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経済時評―2009年10月

2009-10-27 09:27:03 | ホットトピックス
昨今の経済状況について、OBSで「統計分析の基本」「ビジネスエコノミクス」「将来予測の技術」「ビジネスワークショップ」の授業を担当する西山茂教授に解説していただきます。
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昨年9月15日に発生した米リーマン・ブラザーズ社倒産劇(リーマン・ショック)以降、世界経済は文字通り崖から落ちるような急降下を示しました。

実は、リーマン・ショック自体は、今回の景気循環がピークアウトして10ヶ月程度たった時点で発生した事件です。ご存知でしたか?

米国NBERは2007年12月を景気の山として認定しました。日本経済については、内閣府に設置されている「景気動向指数研究会」が2007年10月を景気の山として暫定的に認めています。これまでの経験では、景気がピークアウトして底打ちするまで概ね1年半程度かかります。ということは、本年6月前後から景気は回復に向かうという予想は、最初からありました。ただ、この判断は昨年末から今年初めになされたもので相当遅れました。

もちろん主要国の政府・中央銀行による景気回復策の効果も評価するべきです。とはいえ、経済変動に一喜一憂せずに、先行きを予測しながら長期的なプランニングを整えておくことが最も大切だと言えるでしょう。そのためにも景気判断に有効なデータを定期的に確認しておくことは日常の習慣としてお勧めできます。下の図は内閣府が毎月公表している景気動向指数の一致指数と先行指数です。一致指数(Coincident Index)とは生産、販売、利益などを総括した指数、先行指数(Leading Index)は株価、市況、設備投資など景気の先行きを示す統計データをまとめたものです。



図は本年5月までのデータが描かれています。その後、経済状況は更に良くなり、8月には一致指数が91、先行指数が83にまで上がっています。

図から分かることは、生産・販売が現実に低下するずっと以前に、今回の景気後退の速さ、深さが先行指数の動きから示唆されていたという事実です。今回のピークである2007年10月から生産全体の低下が始まっていますが、その時点で先行指数はピークに比べて10%も落ちています。先行指数がこれ程早く、深く落ちたことはありませんでした。

後退に入ったさ中で、リーマンショックと金融危機が勃発したわけです。雇用状況はしばらく悪化するでしょう。回復テンポも心配です。しかし、第1幕は降りたと思われます。「100年に1度」と言われていますが、景気循環という現象があるのだと見込んだ上で、将来への布石を打つことが求められているのではないでしょうか。


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