滋賀県は市や町と連携して企業誘致を進めようと滋賀県内2か所の産業用地の候補地を募り、審査の結果、1月27日(月)に高島市、大津市、それに東近江市の3か所を選定したと発表した。
選定理由について、いずれも土地が広く、活用の自由度が高いことを挙げている。
(1)このうち北部から選ばれた高島市マキノ町西浜のおよそ17ヘクタールの農地は原子力発電所が立地する福井県美浜町などに隣接していて、電気代を補助する制度が適用されるという。
(2)大津市の「湖西台地区」のおよそ60ヘクタールの土地はJR堅田駅に近く、住宅地に隣接し、雇用確保が見込まれるとしている。
(3)東近江市鈴町と蒲生大森町のおよそ45ヘクタールの土地は名神高速道路の蒲生スマートインターチェンジに近く、周辺の工場で建て替え需要が高まっていることなどを考慮したとしている。
開発されないまま長年残されていた「旧(仮称)蒲生地域リゲインハウス整備用地」(東近江市鈴町、蒲生大森町地先)を含む一帯
同用地は、「びわこ空港開発」に関連するレジャー施設用地として1997年(平成9年)3月に滋賀県の土地開発公社(当時)などが取得したが、2000年(平成12年(に空港建設の凍結が決まったことで同用地の開発構想も止まり、そのまま“塩漬け”状態となっていた。
これまで、地域住民や東近江市、地元選出の議員らは同用地の再利活用を求める滋賀県への要望活動や新たな活用可能性を探る協議を重ねてきた。
今回、滋賀県は、滋賀県内への企業誘致を促進することを目的に、市町と連携し、昨年3月21日~7月19日にかけて産業用地として活用できる候補地の公募を実施、東近江市も同用地一帯を審査に応募した。
「東近江市の同地点は、名神高速道路蒲生スマートインターチェンジ近くに位置する交通の利便性や滋賀県内外の企業ニーズに応えられる大きな面積などの優位性に加え、整備から年数が経過している周辺地域の工業団地の工場建て替え、移転などの需要にも対応可能の視点から選定した」としている。
滋賀県では、今回選定した用地開発に関する予算を来年度予算にも盛り込むとともに、来年度から開発に向けた基本計画の策定と各地点の測量に着手、その後、環境評価や造成準備などを進め、5年後の2030年度には各地点での分譲開始を目指すとしている。
【東近江の産業用地の歴史的な経緯】
この用地は「びわこ空港」計画があった地域にある。あれから30年以上も経ち、風化し、今では「びわこ空港」計画があったことを知る人も少なくなりつつある。当時は賛成派と反対派が対立し、最終的に地域のコンセンサスが得られなかった。
↑近江鉄道本線朝日大塚駅のベンチに残るびわこ空港建設推進の標語。(2024年6月撮影)
その「びわこ空港」計画とは、
滋賀県蒲生郡蒲生町綺田(現東近江市綺田町)と日野町野出に建設が計画されていた空港。滋賀県が設置・管理する第3種空港として計画されていた。
約180ヘクタールの土地に約2000mの滑走路を整備する計画で、国際定期便の運行も視野に入れて2005年(平成17年)度の開港を目指していた。概算事業費は約1580億円(うち空港建設費は約470億円)。需要予測は、開港時は4路線1日13往復の運航で年間利用76万人、開港10年後は6路線1日18往復の運航で年間利用125万人としていた。
1988年(昭和63年)に滋賀県臨時議会でびわこ空港建設予定地を蒲生・日野地区に決定。1992年(平成4年)に国の第6次空港整備計画に予定事業として採択され、1996年(平成8年)には第7次空港整備7カ年計画に組み入れられた。しかし、地権者集落との交渉が難航したため、2000年(平成12年)に國松善次知事が事実上の凍結を表明、第7次空港整備計画期間内での空港設置許可申請を断念した。2013年(平成25年)に嘉田由紀子知事が正式に中止を決めた。びわこ空港へのアクセス道路としてびわこ空港自動車道が計画されていたが、空港計画見直しに伴い名神名阪連絡道路として計画が変更された。
<ブログ筆者コメント>
ブログ筆者もこの用地があの「びわこ空港」関連の土地だったことを直ぐに思い出せなかった。びわこ空港開港の話が出たのはもう35年以上前で、事実上中止決定からでも四半世紀も経ち、昔、そのようなことがあったことを覚えている人が少なくなりつつある。
この、東近江市の産業用地は地理的に名神高速の「蒲生スマートIC」と近々に開通予定の「黒丸スマートIC」の中間にある。黒丸スマートIC設置は2021年に正式設置が決定されておりスマートIC工事と産業用地分譲時期がシンクロ出来そうで好都合である。交通アクセスに優れた場所ではないだろうか。「黒丸スマートICが完成すれば東近江市内に名神高速の八日市ICと2つのスマートICの計3つのICとなる。
名神高速・黒丸PAにスマートIC、新時代の幕開けに期待(東近江市)
https://blog.goo.ne.jp/ntt000012/e/2d4a6976d2f3efbe4d70d8e25d6f36a0
産業用地は当初は2か所を予定していたが、地域バランスや企業のニーズを考慮して3か所にしたという。
産業用地は、滋賀県が造成工事を担当し、市や町が周辺のインフラ整備や用地交渉をすすめることになっていて、5年後(2030年)以降に企業への分譲開始を目指している。
三日月知事は「道路の拡幅予定や公共交通へのアクセスのほか、個別に把握している企業のニーズなども勘案して選定した。できるだけ早い分譲を目指したい」と話していた。
今回の選定をめぐっては、長浜市と米原市が共同で応募した土地が一次審査で「選外」となり、両市が滋賀県に「遺憾」だと訴えていて、滋賀県は両市と話し合い、新たな支援策について協議したいとしている。
<NHK大津・滋賀報知新聞・Wikipediaより>