江戸後期~明治期に彦根で作られ、制作期間が約20年と短いことから「幻の焼きもの」とも言われる「湖東焼」を収集する野洲市の医師鈴木仙太朗さんが、83件を彦根城博物館(彦根市金亀町)に寄贈した。4月20日まで、一部を公開している。
「湖東焼」は、彦根藩が職人を召し抱えて作る「藩窯」として栄えた。細かな絵付けなど高い品質で人気を集めたが、1860年の桜田門外の変で当時の藩主井伊直弼が暗殺されたのを機に、衰退したとされる。
【関連の過去ログ】
【滋賀・近江の先人第128回】江戸末期、幻の湖東焼きの創業者・絹屋半兵衛(彦根市)
https://blog.goo.ne.jp/ntt000012/e/0c8beae18438865c77949ef2c0fec138
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鈴木さんは25歳ごろ焼きものに興味を持ち、趣味にした。「地方の焼きものなら小資本でも集められる」と、滋賀県内の焼きものを中心に収集を続ける。コレクションが増えすぎて処遇に悩んでいたところ、寄贈の話が持ち上がった。

寄贈品は、藩窯期に作られたとみられる貴重な品が並ぶ。緑色のうわぐすりが全面にかけられ、底に「湖東」の押印がある花生けや、菊と蝶を鮮やかに描いた皿、著名な絵付け師の自然斎の手によるふた置きなどがある。
博物館には現在、井伊家伝来の湖東焼が181件所蔵されているが、うち126件は関東大震災で被災し、損傷しているものも多い。彦根市の西嶋良年教育長は「博物館の品は数が限られ、研究を進めるのに大きな壁となっていた。今後研究がより一層進んでいけば」と期待を込めた。

3月21日(金)に博物館で寄贈式があった。鈴木さんは長年手元で愛蔵した湖東焼を送り出し「焼きものたちが生まれた『実家』に帰ってきて喜んでいると思う。(展示されることで)輝いてくれたら嬉しい」と話した。
<記事・写真: 中日新聞より>