
暑い夏が終わり、我が家のお引越しは来月に。
準備のあれこれに着手しつつ、
別れが名残惜しい友人たちとのひとときなども、
楽しみながら過ごしています。
国内のそれも新幹線でたかだか1時間半ほどの距離を、
「別れ」とは呼ばないのかもしれませんが…。

いくら親しくて、同じ東京にいても、
なかなか会える機会をもてないのが大人の実情です。
なかには数年ぶり、あるいは10年ぶり以上の再会もあり、
それでも会えば「いつもどおり」の楽しいお喋りに
ときには友人を介して、
名古屋近隣のご出身の方々ともお会いする機会に恵まれて、
郷土のお話しもいろいろとおうかがいできました。
みなさんからのお心遣いが、とても嬉しく感じられます
…転勤が決まったこの春先

――― 最初の半年はひとりで名古屋へいくから、
あとはゆっくりと引越しの準備をすればいい…。
主人のひと言は、面倒を先延ばしにする思惑に加えて、
私が少しでも明るい気持ちで移転できればとの、
じつは粋なはからいのあらわれだったと、いまは感謝の思いです
夫婦二人分の荷造りもコツコツとはじめました。
大型のキッチンボードを買い換えるため、
スケジュールの都合で、早々に既存のものを処分。
使用頻度が低いものも箱詰めしてしまい、
キッチンにはガランとした空間ができています
食材や器具の置き場所が手狭になり、
限られた環境のなかで食事を作る、この最近。
当然ながらなにかと不便を生じるので

ともすれば、なんとなく簡単なもので済ませてしまおうか、
などとひとり考えを巡らせながら、今さら気づく大切なこと。
キッチンというのは、健康的な食生活のためにも、
使い勝手の良い環境にととのえる必要性が高いんですね
そういえば、独身時代に使っていたマンションでは、
単身用のキッチンをまったく使いこなせなかったのを思い出します。
ひと口コンロとシンクだけの調理台は、切り物をする場所がなく、
材料を用意するにも鍋を加熱するにも必要以上の時間がかかり、
お料理することは、次第に繁忙の日々から遠ざかっていきました。
いま考えれば、
インスタントやレトルトの食品、テイクアウト弁当などは、
野菜を加えて過熱したり、サラダやお浸しぐらいは手作りする。
丸かじりできる野菜や、食べやすい果物を必ず添えて、
ヨーグルトや納豆などの発酵食品、乳製品類も日課にする…。

限られた環境でも、
そうした小さな工夫や心がけがあればよかった、日々のあれこれ。
日本の単身住居の構造は、
まるで飾りもののようにキッチン空間の優先順位が低く、
働き盛りでひとり暮らしの方々は、健康管理が大変かも知れません
ひょんなことで、家族向けキッチンのありがたさと同時に、
社会人全体が抱える難しい課題にも気づかされています。
社会人の食生活といえば、
これも荷造りのさなかに初めて掘り出したもの。
それはいまは亡き親族が、40年以上も前に著したある専門書に、
生活習慣病(当時「慢性病」)の食事療法を記述していたこと。
当時は、日本人の食生活が脂肪偏重型へ傾く以前なので、
脂肪過多食品の制限はあまり前提にされていないものの、
そのほかの大部分は、現代人にも適用できる内容に。

療法の内容に加え工夫や指導の方法、運動も含めて、
食生活の改善に、あきらめずに取り組んでもらうための、
メンタル面の支援についても丁寧に書かれています。
それらはむしろ、健康な人が病気にかからないよう、
日々心がけるべき生活習慣の指針にもなり得ること。
そうしたことが広く必要とされる時代の到来を、
おそらく予見していたのでしょうか。
遅すぎた出会いかもしれませんが、その遺志はあらためて、
私の名古屋行きへ加える大切な荷物のひとつです。

今月はたまたま、
3000円前後でいただけるランチが何軒か続きました。
いずれも私にとっては思い入れのあるお店ばかり、
お手頃なのに、お店のこだわりがぎっしりと詰まったコース。
名づけて、『シェフが本気の「アラサーランチ」』
この価格帯はメジャーかもしれませんが、
お店のファンになるきっかけとしてもポイントが高いですね。

①フレンチ『シェ・トモ』(広尾)
http://www.chez-tomo.com/
地下鉄の広尾駅から、慶応義塾の幼稚舎を通り過ごし、
角を曲がってほどなくの場所にあらわれる白壁のレストラン。
門構えの向こうには、素敵なお庭に面したガラス張りのフロア。
以前から気になって焦がれていたランチですが、
友人に連れられて、ようやくおじゃまできました。
(メニュー)
・スイカとトマトのジュース(OP)
・生ウニの貴婦人風(OP)
・ブーダンノワールのキューブ仕立て
リンゴのコンポートとドライリンゴ添え
・山形県産無農薬野菜約30種の盛りあわせ
・鴨のモモ肉とフォワグラのバロディーヌ
ムネ肉の燻製グリエ レバーのガトー仕立て
・チョコレートのアイスとムースのひと皿
・コーヒー、パン
(ランチの基本コース2890円也、税・サ・ドリンク・追加OP料別)
基本のメニューだけでもじゅうぶんな内容で、
こちらも王道のアラサーランチ。
それでもドリンクと前菜を追加して、
ちょうど5000円ほどでいただけるのはかなりお手頃。
スイカとトマトのジュースは、
真夏には相応しく、甘み豊かで爽やかなのが印象的。
絶妙のバランスでとまらない美味しさでした
生ウニはスクランブルエッグが入って、
コクのある濃厚なポタージュ仕立て。
ブーダンノワールは通常は腸詰に作られますが、
こちらはキューブ状になっていて、
大人のほろ苦さと爽やかなリンゴが好く合います。
こちらのランチコースの目玉は、
なんといってもお野菜の盛り合わせでしょうか。
ひとつひとつに異なる調理法と味付けが施されて、
どれもとっても愛おしくいただけるひと口。
お野菜をこんなにも大切に味わうひとときなんて…
聞けば、これらの仕込みには相当の時間を要しており、
格別の美味しさはやはりご苦労の賜物なんですね。
お肉料理も香りと口当たり、味わいが楽しめて、
肉質はいずれもジューシーで上品です。
高級感あるチョコレートのデザートも大満足。
おうかがいしたのはお盆時期にもかかわらず、
女性客を中心に満席で賑やか、人気の根強さがわかります。

②フレンチ『レストラン オゥ レギューム』(赤坂)
http://www.legumes2003.com/
http://r.gnavi.co.jp/g972900/
赤坂の二番口を出て、
国際新赤坂ビル横の細道を歩いて裏手へ出たところ。
初めてならうっかりと見逃してしまいそうな、
さりげない佇まいのお店です。
お野菜のことがご縁でだいぶ前に数回ほど、
ランチやディナーをいただいたり、料理教室に参加したりと、
お世話になったお店。
東京を離れる前にぜひもう一度、と数年ぶりお伺いしました
五十嵐シェフの、大胆な食材使いと美しい盛りつけは、
いつおじゃましてもとっても素敵。
お野菜はじめ穀類や肉魚の買い付けにもこだわりが満載です。
(メニュー)
・アジと桃のサラダ仕立て
・イサキのグリエ 野菜や豆類のスープ
・赤ワインと八角のグラニテ
・越の黄金豚のローストとパテ 季節野菜のグリル
・デザートのお皿 トマトとずいきのコンフィ
南瓜のパウンドケーキ チーズアイス添えなど
・パン、ルイボスティー
(お昼のシェフのおまかせコース3200円也 全込)
マリネされた旬のアジと桃、そしてトマトやキュウリなど、
ボリュームたっぷりに盛りつけられたひと皿。
ワイルドなのに美しくて、すべての食材がぴったりと合います。
青トマトのピクルスが添えられて、大人味の前菜に…。
イサキもとても香り高く、繊細な野菜のスープが引き立て役に。
新潟から採れたての枝豆も使われていました。
輪切りにした馬鈴薯の香ばしいフライも添えられて、
お店の名のとおり、本当にお野菜がたっぷり。
(※オゥ レギューム=(仏)「野菜とともに」の意)
お口直しはちょっとアジアンテイスト、
八角は意外なとりあわせですが、品好くいただけます。

黄金豚は新潟のもち豚、甘みがあってジューシー、
以前もこちらでいただいたことがあり、懐かしい味。
まるでハンバーガーのように積みあげられた、
大ぶりのお肉と野菜の盛りつけには、ワクワクしますね
オイルでやわらかく煮たニンニクや谷中生姜が添えられて、
これらをお肉につけていただくのも美味しい食べかた。
デザート皿は、お野菜のコンフィがとっても美味しい。
ひさびさの訪問でしたが、シェフもマダムもお変わりなく、
嬉しい時間を過ごさせていただきました。

③フレンチ『ルグドゥノム ブション リヨネ』(神楽坂)
http://www.lyondelyon.com/
http://g.pia.co.jp/shop/89543
今回はランチで、二度目のご訪問。
シェフのクリストフ ポコ氏もお元気そうで、
優しく満面の笑顔で出迎えてくださいました。
(メニュー)
・前菜の盛りあわせ ブションリヨネ風
・リヨン風クネル ナンチュアソース
・バターライス
・レグリース風味のマカロン コーヒーのアイスクリーム
・白ワイン、パン
・コーヒー(OP)
(ランチコース2850円也 税・サ込、OP料別)
前菜のリエットやパテなど豚肉料理の盛りあわせは、
それぞれの味が楽しめて、ランチワインもすすみます。
クネルには、北海道産のザリガニが丸ごと使われて、
甲殻類ならではの旨みがぎっしりと味わえます。
バターライスが同時に運ばれてくるので、
リゾット感覚でも楽しめるひと皿に。
デザートのマカロンは竹墨の黒色。
アイスのクリーミィなコーヒー味も美味しい。

こちらのお店は、店内の雰囲気がとっても素敵です。
お料理もサービスも…。
シェフが『食の都』リヨンのご出身だからこそ、
自然体でも醸しだせるムードがあるんですね。
転居することをお伝えしたら、驚きながらも、
あえて「マタ来テクダサイネ~」と見送ってくださった、
優しいシェフのお顔がいつまでも心に残ります。

④イタリアン『VINO HIRATA(ヴィノ ヒラタ)』(麻布十番)
参考サイト:
http://jin3.jp/kameiten2-2/vino-hirata.htm
http://rp.gnavi.co.jp/ns/5237190/
地下鉄の駅から「パティオ十番」の通りを抜けて、
左へ少し歩いた小さなビルの2階。
3階には系列店の『クッチーナ ヒラタ』が構えており、
いずれも夜は上品な正統派イタリアン。
両店の美味しさをお手頃にいただけるのが、
数ヶ月前から始まった「ヴィノ ヒラタ」のランチタイム。
テーブル席もカウンターも日当たりよくて、居心地のよい空間
(メニュー)
・トウモロコシの冷製スープ
・サーモンのクリームパスタ
・ミラネーゼカツレツのプレート
・凍らせたプリンとピスタチオのアイス
・二種のパン
・コーヒー、プティフール
(ランチコース3000円也、デザート料別)
コースは三種類のプレフィクスで、
前菜、パスタ、メインの王道コースなら3000円ちょうど。
ワンコインだけプラスすればデザートも。
ランチでも、
夜のお料理に共通するメニューが選べます。
冷たいスープやデザートは、暑い季節の思いやり。
パスタもランチにちょうどよい分量で、
サーモンの優しい旨みがひきたちます。

カツレツのお肉はいずれも美味しくて、
とくに仔羊のやさしくジューシーな味わいが印象的。
できるだけ未熟なラムを使うお店のこだわりがわかる、
これは夜のお食事にも、ぜひ訪れてみたくなるひと皿でした。
デザートアイスはピスタチオのコクと香ばしさが生きた味。
ソルベ状のプリンも口あたりがおもしろく、新しいスイーツです。
イタリアンならではのパスタランチを、
よりお洒落に楽しくいただけるひとときです