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著作権パブコメ ドラフト(2)ミラーサーバやコンテンツのバックアップ装置について

2005年10月04日 | 科学技術・システム・知財など

昨日のブログでは、私的録音録画補償金制度についてのパブコメドラフトを示しました。今日はもう一つのパブコメのドラフトを提示します。お題は「ミラーサーバやコンテンツのバックアップ装置におけるコピーにおいても著作権は及ぶのか?」ということについてです。

こちらは私的録音録画補償金の議論と比べると、ずいぶんマイナーな話題ではありますが、皆様のご意見をお待ちしております。

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3. デジタル対応について
(1) 機器利用時・通信過程における一時的固定について

【コメントの目的】
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過の3.デジタル対応(1)機器利用時・通信過程における一時的固定についてにおいては、以下の記述がある。

・問題の所在
 デジタル化,ネットワーク化の進展に伴い,コンピュータの機器内部における蓄積,ネットワーク上の中継サーバなどにおける蓄積など,機器の使用・利用に伴う,瞬間的かつ過渡的なものを含め,プログラムの著作物及びその他の著作物に関する電子データを一時的に固定する利用形態が広く用いられている。そのため,コンピュータ等の機器の利用時や通信過程において行われる著作物の一時的な固定について,「複製」と解されるとした場合に,通常の機器の利用や円滑な通信に支障が生じないようにするために必要となる権利制限等の立法的措置について検討する必要がある。

 
・検討結果
 複製権を及ぼすべきではない範囲について,(a)著作権法上の「複製」の定義から除外する,(b)著作権法上の「複製」であるとした上で権利制限規定を設ける,(c)「黙示の許諾」,「権利の濫用」等の解釈による司法判断に委ねる,という3つの方向性が考えられる。
 このうち,(a)(b)の方向性を採る場合には,(要件1)著作物の使用又は利用に係る技術的過程において,(要件2)付随的又は不可避的に生じる,(要件3)合理的な時間の範囲内で行われる一時的固定(複製)といった限定的な要件を付した上で権利の対象から除外することが考えられる。
 しかし,これら3つの要件から外れる一時的固定(複製)であっても,権利を及ぼすべきではないケースもあると考えられることなどから,今後の技術動向を見極める必要があるため,現時点では緊急に立法的措置を行うべきとの結論には至らなかった。今後も慎重に検討を行い,平成19(2007)年を目途に結論を得るべきものとした。


本コメントは、「これら3つの要件から外れる一時的固定(複製)であっても、権利を及ぼすべきではないケース」(以下本ケース)についての対応策(案)を提示するものである。


【本ケースの代表的な利用形態】

本ケースの対象となりうる代表的な利用形態として下記の2つの利用形態を例示する。

例1)ミラーサーバ
ネットワーク上に配備されたサーバに対し、ネットワーク事業者がネットワーク負荷などを考慮し事前にコンテンツをアップロードしておくことで、特定のコンテンツへのアクセスを分散させることができる。
このコンテンツのミラーリングは付随的または不可避的ではない(ネットワーク事業者が計画的にコンテンツを蓄積させる)こと、および長時間にわたる蓄積の可能性があることから、上記要件2、要件3を満たせない可能性が高い。

例2)コンテンツのバックアップシステム
これは文字通りコンテンツのバックアップなので、著作物の使用または利用にかかる技術的過程ではない。またバックアップは付随的・不可避的ではなく、バックアップしようとする主体(ネットワーク事業者など)がバックアップを計画する。さらにバックアップなので、期限はきわめて長いのが普通である。従ってこれは要件1、要件2、要件3すべてに反する。


【本ケースに対する対応案】

上記のような著作物の円滑な運用をサポートする装置に対しては、権利を及ぼすべきではないと考える。しかし、「ミラーリング」「バックアップ」のみ可、などと技術を限定して権利が及ぶか及ばないかを規定するのは、新技術が現れるたびに法改正が必要があり、混乱を招く可能性が高くなる。

そこで、下記の対応策を提案する。

x x x

一時的固定における著作権者の権利制限については、下記のとおり規定する。

1) 一時的固定であって、要件1,2,3に該当するものは、著作権者の権利が制限される。

2) 一時的固定であって、要件1,2,3に該当しないものについては、以下の要件をいずれかを満たすことを条件に、著作権者の権利が制限される。

(a) 一時固定リソース(サーバなど)に対し、著作権者は自由にアクセスでき、必要があれば自身の一時固定コンテンツを削除できる。  

(b) 一時固定リソースの管理者に自身の一時固定コンテンツの削除を強制することを可能とする。

3) 上記以外の一時的固定は、通常の複製の場合と同様に扱う。(通常であれば権利が及ぶが私的複製に相当する場合などは権利が及ばない、等)


【対応策(案)の解説】

対応策(案)では一時的固定の場合の権利制限の有無を場合分けして記述している。

1) については、委員会での議論のとおりなので解説は割愛する。
2) については、基本的に一時固定リソースにコンテンツを置いたからといってそのことが直接著作権の侵害になるわけではない。しかしながら、一時固定リソースにコンテンツを置いたことが原因で何らかの著作権侵害が発生する可能性もある。そのような場合、著作権者が一時固定リソース上のコンテンツを任意タイミングで削除できるという状態にしておくことで著作権者の損失を最小限に食い止めることが可能となる。
3) については、一般的な著作権上の複製と同じ扱いになることを示しているため、解説は割愛する。


【まとめ】

上記のような対応策を導入することで、著作物の円滑な運用をサポートする装置に対し権利が及ぶことが無く、著作物の運用性が向上する。また著作権者に対しては、そのような装置に対し自身のコンテンツを任意タイミングで削除できる仕組みによって、著作権侵害の被害を最小限に食い止めることが可能となる。

このような利点があるので、一時的固定の権利制限について法制化する際は、本コメントで示した対応策(案)についても一案として考慮すべきと考える。