ノラにゃんこはその後どうなっているのか…
心配しながら昨夕、山荘に来てみたら
「ノラくん、あそこに居るよ…」と、いつになく小声のオジサン。
見ると、お隣りさんの小屋の縁側に
目をつむって寝そべっているノラが居た。
そして、私たちの声で目を開けたが…
左の目が開いていない…。
片目でじ~っとこっちを見ている。
「あ、オバサン、来たんですか…。」
ノラくん、大変なことになったね…。大丈夫?
「ハイ、またやられちゃって…面目ない…」
あたかもそう言っているみたいに
手を舐めて唾液をつけては、しきりに左目を拭っている。
そうやって傷を癒しているのだろうか?
昔、子どもの頃にころんで擦り傷をした私に母が
「唾をつけときゃ治るから…」とよく言っていたのを思い出す。
そうすると、確かにいつの間にか治っていた。
迷信かも知れないが、その自然治癒力を信じたい。
それにしても、また酷いことになっちゃったね。
「ハイ、でも…ボクは今、必死に闘ってるんです!」
そうみたい…だね。相手はよっぽど強いんだね。
「そりゃあもう、メッチャ強いんです!」
でも、勇気を出して頑張って闘ってるんだぁ~。
「そうなんです!ボク、メッチャ頑張って…」
「…あ、オバサン、ボク、そっちに行きますから…」(笑)
前回やられていた右の前足は良くなっているようで
しっかりした歩き方でこっちにやって来た。
そして、いつものご飯待ちの定位置にちょこんと座った。(笑)
ねえ、ノラくん、頑張った話をもっと聞かせて?
「オバサン、聞きたいですか?」
そりゃあ、もちろん!何があったか、聞きたいよ。
「長い話になるけど…それでも、良いんですか?」
うん、覚悟はできているよ!
「そうですか、聞きたいですか…」
ノラにゃんこはしばし考えているように見えた。
その横顔から左目の腫れ具合がはっきりと見て取れる。
「じゃあ、話して聞かせてあげます。実は…」
ノラが話し始めようとした、ちょうどその時
オジサンがご飯をもってやって来た。
「わ~い!ご飯だ、ご飯だ!」
「オジサン、ボク、お腹がペコペコです!」
「そうか、食欲が戻ってきたんだね!」と嬉しそうなオジサン。
「いただきま~す!」とパクつくノラにゃんこ。
「やっぱり、お魚が入ったご飯は美味しいです!」
そう、良かったね。それで話の続きは…?
「ちょっと待って下さい。今、食事中ですから…。」
あ、ゴメン、ゴメン…。
「あ~美味しい!最後までキレイに食べないと…」
そうだね。それは良い心がけだね。
あれっ!ご飯食べたら、もう帰っちゃうの?
「ハイ、もうお腹いっぱいですから…」(笑)
「今日のご飯は、メッチャ美味しかった…」
ちょっと!ノラくん、話の続きは?
「エッ!オバサン、何のことですか?話って…」
知らん顔でとぼけるノラにゃんこ。(笑)
結局、話は聞けず仕舞いだ。
でも、ま、ノラ猫同士のいざこざは
あまり根掘り葉掘り聞かない方が良いのかも…。
「そうそう、聞いちゃや~よ!」(笑)
「だって、ボクにもプライドってもんがあるし…」
「果報は寝て待て…って言いますから、もう寝ます!」
あ~あ、こんな所で寝ちゃった…。
と思ったら、次に見た時には
またお気に入りのお向かいさんの草むらで寝ていた。
目のケガをしてからというもの
昼間はほとんど山荘から半径10m以内の場所で
ゆっくりと過ごすことが増えてきた。
おそらくネコ食堂に近いところに陣取ることで
無駄な体力消耗を避けて回復に努めているのだろう。
さすが、ノラ猫…心得てらっしゃる。(笑)
左目はまだ心配だが…右の前足の傷も大事にならず
何より食欲が戻って来てホントに良かった。
今回のノラにゃんこの独眼竜を見ていて
ふと思い出した絵本がある。
片山健さんの「タンゲくん」という絵本だ。
片目を失った人相の悪いノラ猫と小さな女の子の関係を
インパクトのある絵で描いた心温まるお話だ。
ある日、ふら~っとやって来て
女の子の家に出入りするようになった片目のノラ猫
タンゲくんと今のノラが重なって見えるのだ。
自由気ままに昼間どこかへ出かけては
ケガをして帰ってくるところなんかそっくりだ。
タンゲくんは喧嘩っ早いノラ猫なのだが
ノラにゃんこもそうかも知れない。
もしかすると
売られたケンカを自ら買っているのかも…。(笑)
だとしたら、ずいぶん見方が違ってくる。
一方的にやられて可哀そう…ではなく
相手の方がもっと大ケガを負っているかも知れないし
お互い5分5分の痛み分けかも知れないのだ。
ノラは決して自分から話そうとしないので (笑)
勝手に想像するしかないのだが…。
何れにしても…
この「タンゲくん」という絵本。
家ネコのティーウーしか知らない私にとって
ノラ猫の生態を知るにはもってこいかも…。
もう一度、読んでみようかな…。