秋の気配を感じると懐かしく読み返す本です。
以前、他のページに記しておいたものを写します。
干刈あがたの作品は、みな静かに心にしみてくる。実生活の中から生まれた物語は生き生きと清冽、そして優しい。 全て大切に読み継がれていって欲しい作品です。
1992年9月6日に49歳で亡くなる。
「樹下の家族」「ウホッホ探検隊」「黄色の髪」「窓の下の天の川」
「プラネタリウム」「雲とブラウス」「しずかにわたすこがねのゆびわ」
「アンモナイトをさがしに行こう」「野菊とバイエル」「ホーム・パーテイ」
「40代はややこ思惟いそが恣意」「ゆっくり東京女子マラソン」
「ビックフッドの大きな靴」「どこかヘンな三角関係」「名残りのコスモス」
既読
「ウホッホ探険隊」が特に好き…
しずかにわたすこがねのゆびわ
干刈あがた 著 1986,1,10 福竹書店 発行
サラバータ
サラバータ
しずかにわたすこがねのゆびわ
鬼のしらぬまに
ちょっとかくせ
若かった頃の自分に今の自分が教えてあげられるといいのにね。
そんなことしちゃだめよ、とか、そんなに我慢することないのよ、とか。
でも、私はやはり、ああするより仕方なかった。
その時その時、自分なりに考えて生きてきたんですもの。
(冒頭モノローグの一部より)
60年代に青春時代を過ごした女性たちが結婚や離婚を経て生きる15年間を描いています。
「プラネタリウム」
「なんだよ、ジロジロ見るなよな」
突然少年は低い声で言うと、黒眼を右に寄せ、蒼白く光るナイフ眼で母親を睨んだ。このごろ彼はしばしば、そうした急な変化で彼女を驚かせる。 と、また急に黒眼を解散して言った。
「なーんてね、劇団ひまわり」
「むずかしい年頃の少年め」
少年の髪に手をつっこんでもじゃもじゃにかき乱してやろうと、彼女が腕を伸ばすと、彼は素早く身をひき、ハッシと彼女の手首を両掌で受けとめた。
「真剣白刃取り」
母親と少年は軽くジャブの応酬をした。
シミジミ少年とホトホト少年兄弟と母親との対話が、やさしく切ない
↓ 2003年10月9日 「本の話掲示板」に投稿したものです
若かった日を振り返って・・干刈さんに話したくなったこと・・
友人たちと会って、決まって「反省会」になった時期がありました。
皆、子育ても終わろうとしていました。それぞれがあの一生懸命
だった頃の自分を懐かしく、しかし少し悲しく思い出したのでした。
Tさんが涙とともに語ったことはこうでした。
「私は、スポック博士の本(当時信頼された育児本でした)
のとおりに育てようと思ったの。そして、独立心を早くから
育てたいと、長男を一人の部屋に寝かせたのよ。
あの子は泣いたわ。寂しかったのでしょうね。
でも、私もがまんしたのよ。
翌朝、あの子は枕をかかえて、ドアに頭をぴったりくっつけて
寝ていたの。泣きつかれてそのまま眠ってしまったのね。
可愛い小さな顔に涙の跡が残っていたのよ」
私たちは一緒に泣いた。そして、それぞれの胸の内の痛みを
話して、また一緒に泣いた。
しずかにわたすこがねのゆびわ
コスモスや個々揺蕩うて群れとなる
こすもすやここたゆとうてむれとなる
以前、他のページに記しておいたものを写します。
干刈あがたの作品は、みな静かに心にしみてくる。実生活の中から生まれた物語は生き生きと清冽、そして優しい。 全て大切に読み継がれていって欲しい作品です。
1992年9月6日に49歳で亡くなる。
「樹下の家族」「ウホッホ探検隊」「黄色の髪」「窓の下の天の川」
「プラネタリウム」「雲とブラウス」「しずかにわたすこがねのゆびわ」
「アンモナイトをさがしに行こう」「野菊とバイエル」「ホーム・パーテイ」
「40代はややこ思惟いそが恣意」「ゆっくり東京女子マラソン」
「ビックフッドの大きな靴」「どこかヘンな三角関係」「名残りのコスモス」
既読
「ウホッホ探険隊」が特に好き…
しずかにわたすこがねのゆびわ
干刈あがた 著 1986,1,10 福竹書店 発行
サラバータ
サラバータ
しずかにわたすこがねのゆびわ
鬼のしらぬまに
ちょっとかくせ
若かった頃の自分に今の自分が教えてあげられるといいのにね。
そんなことしちゃだめよ、とか、そんなに我慢することないのよ、とか。
でも、私はやはり、ああするより仕方なかった。
その時その時、自分なりに考えて生きてきたんですもの。
(冒頭モノローグの一部より)
60年代に青春時代を過ごした女性たちが結婚や離婚を経て生きる15年間を描いています。
「プラネタリウム」
「なんだよ、ジロジロ見るなよな」
突然少年は低い声で言うと、黒眼を右に寄せ、蒼白く光るナイフ眼で母親を睨んだ。このごろ彼はしばしば、そうした急な変化で彼女を驚かせる。 と、また急に黒眼を解散して言った。
「なーんてね、劇団ひまわり」
「むずかしい年頃の少年め」
少年の髪に手をつっこんでもじゃもじゃにかき乱してやろうと、彼女が腕を伸ばすと、彼は素早く身をひき、ハッシと彼女の手首を両掌で受けとめた。
「真剣白刃取り」
母親と少年は軽くジャブの応酬をした。
シミジミ少年とホトホト少年兄弟と母親との対話が、やさしく切ない
↓ 2003年10月9日 「本の話掲示板」に投稿したものです
若かった日を振り返って・・干刈さんに話したくなったこと・・
友人たちと会って、決まって「反省会」になった時期がありました。
皆、子育ても終わろうとしていました。それぞれがあの一生懸命
だった頃の自分を懐かしく、しかし少し悲しく思い出したのでした。
Tさんが涙とともに語ったことはこうでした。
「私は、スポック博士の本(当時信頼された育児本でした)
のとおりに育てようと思ったの。そして、独立心を早くから
育てたいと、長男を一人の部屋に寝かせたのよ。
あの子は泣いたわ。寂しかったのでしょうね。
でも、私もがまんしたのよ。
翌朝、あの子は枕をかかえて、ドアに頭をぴったりくっつけて
寝ていたの。泣きつかれてそのまま眠ってしまったのね。
可愛い小さな顔に涙の跡が残っていたのよ」
私たちは一緒に泣いた。そして、それぞれの胸の内の痛みを
話して、また一緒に泣いた。
しずかにわたすこがねのゆびわ
コスモスや個々揺蕩うて群れとなる
こすもすやここたゆとうてむれとなる