ふわふわな記憶

日々精進。

見えないチカラはいつも君の胸に。――ラブライブ!サンシャイン!! 2期5話 感想

2017-11-06 16:05:00 | ラブライブ!サンシャ...
#5 犬を拾う。



「運命」ってなんだろう。それは誰しもが一度は考えたことがあることかもしれません。


「偶然」や「運命」の定義は実に曖昧なものです。あの日、あの時、あの場所での出逢いや出来事が「偶然」なのか、「運命」なのか、それを普遍的に証明することはあまりにも複雑で難しい。きっと明確な正解なんて存在しないのでしょう。だって、それは目に見えるものではないから。


でも、だからこそ簡単なことなのかもしれません。曖昧だから、目に見えないから、人それぞれの想いに委ねられる。普遍的である必要はなくて、たった一つ必要なことは、その出逢いが「運命」なのだと自分自身に答えを出すことでした。



あの日、津島善子が出逢い、桜内梨子が触れた「運命」。それが彼女たちにもたらしたものはいったいなんだったのでしょうか。






桜内梨子が触れた運命








ラブライブ!の予備予選をトップで通過し、来る地区大会に向けて、千歌の家で作戦会議を開くAqoursの9人。全国大会へと繋がる地区大会は前回突破することが出来なかったこともあり、新曲のテーマをどういう方向性にするのか、入念に話し合っていました。



「弱い心じゃダメなんだ」と歌っていたSaint Snowが、更に強くなるために、一度心を砕いて生まれ変わることを想起させるような「CRASH MIND」という新曲を取り入れていたことも作用したでしょうか、可能性を広げるためにAqoursもまたなにか新しい要素を取り入れることは出来ないかという意見が飛び交います。



しかし、話し合いは難航。目と目が合いながらも、梨子としいたけの関係が前に進まないように、残念ながらAqoursもまた次の一歩を踏み出すに至るアイデアは浮かび上がってきませんでした。新たな世界へのトビラを開く鍵はいったいどこにあるのでしょうか。








そんな折、梨子母の頼みで、津島家に携帯を届けに行くことになった梨子はとある「出逢い」を果たすことになります。









一匹の小型犬との出逢い。この時の梨子はまだ偶然だと思っていたのかもしれません。でも、雨と風が強く吹き付けていたあの日、車に乗ることなくひとり残って、その小型犬に出逢った津島善子はその出逢いに強い「運命」を感じた。



善子は屋外で世話を続けていましたが、あの状態では気が気ではないのも事実ですよね。ゆえに、お世話役として白羽の矢が立ったのはまさにあの時、携帯を届けに来たことで善子と出逢った梨子でした。










最初こそ抵抗を示していたものの、善子の強い想いに押されて、最終的に善子のお願いを引き受けるところは彼女の責任感の強さや面倒見の良さが垣間見えたシーンだなぁと思います。



梨子は犬が嫌いなわけではないんですよね。梨子も善子も梨子の犬に対する気持ちを「苦手」と表現してはいても、「嫌い」とは一言も言ってはいない。だから、そもそも受け入れることが出来ないわけじゃないんです。ただ、怖いというイメージだけが先行して、距離を取ってしまうから、きちんと向き合えないだけ。嫌いと苦手は全く持って別種のモノです。




だから、同じ部屋で生活を共にして、すぐそばにいることが当たり前になれば、距離を縮めることは出来る。練習終わりにすぐ帰って、遊び道具を買いに行ったり、名前を付けて可愛がることが出来るようになった頃には、梨子にとって「ノクターン」はとても近い存在になっているんです。



でも、自宅にいながらもキャリーケージを隔ててのコミュニケーションのままであることは、まだ少し距離があることの示唆でもあるのでしょう。梨子が作り出した、彼女と「犬」を隔てる壁はまだ完全になくなったわけではありませんでした。











その証拠に、皮肉にも元の飼い主へ返すことになったことで、その事実が浮き彫りになります。外に出て、キャリーケージという壁はなくなっても、自分からはまだ触ることが出来ない。でも、確かに近づく事が出来たから、手を伸ばすことは出来る。



そして、伸ばした手で梨子が触れたものは彼女の心に確かになにかを芽生えさせます。しかし、目には見えない、でも確かに手のひらに残ったそれをずっと眺めながら、この時の彼女はまだその正体を掴めずにいました。








津島善子と堕天使



一方で、「あんこ」とのお別れに強い喪失感を抱いた善子は、突飛な理由を見繕って、再び逢いに行くことを提案します。「あの子は 私にとって特別なの」と決して譲らない善子。なぜ、ここまで彼女はその「出逢い」を特別だと感じているのでしょうか。










津島善子は「堕天使」という突飛なキャラを解放していながらも、とても現実が「見えている人」です。ずっと理想を追い求めてきた彼女はきっと誰よりも現実を知っている。


彼女にとって、現実は「見えるもの」で、理想は「見えないチカラ」でした。だから、無茶苦茶な事を言っているなんてことは百も承知。理由や理屈は関係ない。ましてや迷惑を掛けるつもりなんてない。そこにあるのはただ、自分がずっと抱えてきた理想をまさに肯定してくれたかのように出逢えたその「運命」ともう一度逢いたいという想いだけ。



善子は語ります。「私さ 小さいころからすっごい運が悪かったの 外に出れば いつも雨に降られるし 転ぶし 何しても自分だけ上手く行かない」と。


だから、そんな度重なる不運に出逢うことに、特別な意味を見出したかった。自分が特別な存在だから、見えないチカラが働いているんだと信じたかった。そんな善子にとっての特別を象徴する存在が「堕天使」でした。









善子はずっと目には見えない特別なチカラの存在を信じ、憧れてきたんです。だから、自分の不運という個性を象徴する雨と風が強く吹き付けていたあの日、車に乗ることなくひとり残って、見えない不思議なチカラが作用したかのように飛ばされていく傘に導かれて出逢った存在に強い「運命」を感じた。


目には見えない不思議なチカラに憧れた善子だから、ただ見ただけで敵なのか味方なのか、目には見えない人とのつながりを見分けることが出来る不思議なチカラを持った「犬」との邂逅にとても強い意味を感じる。善子にとって、「犬(=あんこ)」は目に見えないチカラ、「運命」そのものなんです。彼女が「ライラプス」という名前を付けたのもきっとそれが理由。



善子は作中において、一度として「犬を拾う」とは言いませんでした。梨子の言葉を訂正してまで、「出逢う」という表現にこだわった。どこまでも、彼女は「犬」という存在と対等に向き合っていたんです。それはまた、彼女がその人生を以って「運命」ときちんと向き合っていたことの証。



そんな善子だからなのかもしれません。不運に思える雨が出逢いをもたらすし、梨子があの時バス停から戻ってきたことも雨が降って善子を心配したから。待てば海路の日和ありと、ずっと待ち続けていたから、雨が止んで「あんこ」と再び出逢えた。見えない不思議なチカラが彼女の想いを祝福しているかのようでさえありました。



不運も幸運も、たとえ、それがどんなことであっても、起こること全てに意味があるとそう強調するように彼女の物語は進んでいくんです。その善子の姿を揺れる瞳で捉えていた梨子の表情はとても印象深いものでした。



運命との出逢い







「運命」のように出逢った一匹の犬に触れて芽吹き、そして、善子の強い想いに触れて花開いた、桜内梨子の想い。


あんこにとって振り返ったことは「偶然」でしかなかったのか、それはわかりません。でも、たとえそうであっても構わない。だって、「運命」は普遍的なものではなくて、そこに特別な意味があると信じるそれぞれの想いに委ねられるものだから。


梨子があの出来事に「見てくれた」という意味を見出すことで、それは初めて彼女にとって「運命」になる。大切なことは目と目が合ったという起こった出来事そのものではなく、「目に見えない不思議なチカラ」が目と目が合うという出来事を導いてくれたんだと彼女が感じたことなんです。



だからこそ、彼女は気付きました。その出逢いが、「偶然」なのか、「運命」なのかを決めるのは世界じゃなく、他でもない自分なんだと。あらゆる出来事には人の意志や想いが介在していて、そこには意味があって、それと向き合うことで初めて「運命」は「運命」たりえるのだと。





梨子が携帯を届けに行くことになったこと、善子が梨子にあんこのお世話を頼んだこと、それがもたらした「出逢い」は梨子にとって大きな意味を持つものだった。


そして、なによりも、4月のあの日、あの夕暮れ時に、あの海で、初めて高海千歌に出逢ったことは、彼女の人生にとって、きっとどんなことよりも大きな大きな「意味」を持つものでした。そんな、千歌との「運命」の出逢いがまた、Aqoursのメンバーとの出逢いを導いてくれた。


だから、決してその「出逢い」は彼女にとって「偶然」じゃないんです。信じることで、それぞれが胸の中に秘めているハートの磁石を引き寄せ合うように、想いが重なり、それが見えないチカラを生んで、「運命」の出逢いを導いてくれる。たくさんの出逢いを経験してきた梨子だからこそ、このことに気付くことが出来た。








"いろんな人が いろんな想いを抱いて その想いが見えないチカラになって

引き寄せられて 運命のように出逢う すべてに意味がある"



そう語る梨子の世界にはもう、「偶然」はありません。全ての出逢いに意味があると、その「運命」にきちんと向き合い、目に見えないチカラを信じることが出来た梨子だからこそ、目と目が合っても今まで触れることが出来なかったしいたけにきちんと向き合って、自分から触れることが出来る。







果南は言いました。「ダイヤと鞠莉と3人でここで曲作って その想いがつながって 偶然が重なってここまできた」と。


そして、運命の出逢いを経験し、新たな世界への一歩を踏み出した梨子は言います。「この世界に偶然はないのかもって思ったの いろんな人が いろんな想いを抱いて その想いが見えないチカラになって 引き寄せられて 運命のように出逢う すべてに意味がある」、そう思うことは素敵なことだと。



2人とも示し合わせたわけではありません。一見すれば、その場にいた少女にただ想いを吐露しただけ。でも、高海千歌という1人の少女を通して、あまりにも運命的にその2つの想いは出逢う。


決して相反することなく、まるで、見えないチカラに引き寄せられたかのようにその2つの想いは確かに重なり、千歌の中で1つの想いへと昇華されていく。それをたったいま、その身を以って経験した千歌だからこそ、梨子の言葉に微笑むんです。




「運命」も「キセキ」も「輝き」も目に見えるものではありません。でも、見えないチカラはいつだってそれを信じる自分の胸の中にある。ならば、その想いを歌に込めよう。きっとそれこそが普遍的ではない彼女たちだけの答え。



あの日、桜内梨子が確かにその手で触れた「運命」。目には見えない新しい世界へのトビラを開くその鍵は、ずっと彼女のそばにあったのです。



11 コメント

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運命に導かれて (はまの)
2017-11-08 17:25:55
5話の感想お疲れ様です!
正直なところ今回の5話は初見では難しいテーマだなぁと思っていたんですが感想を拝読して、点と点だった理解が線で繋がったような感覚です。
果南と梨子ちゃんの想いが出会うという見方も、今回梨子ちゃんが語ったように、「そう思えば、素敵じゃない?」をまさに体現した素晴らしい解釈だと思いました。凄くロマンを感じる回になりました。
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世界の見え方 (レノ)
2017-11-08 19:33:23
記事タイトルを見た時点で、本文を読むのがとても楽しみだったのですが、相変わらず熱量の凄まじいこと。

"見えないチカラ"を信じることで、見えている世界が変わるという構成の美しさが本当にたまらないですね。良く出来た話だったと私も思いました。

果南の発言については私も気になっていたのですが、「運命」という解釈が人それぞれの考え方に依るもので普遍的なものではないという点と果南と梨子の想いが「運命」を象徴するように出逢うという2点に掛かっていたんですね。善子の想いに梨子が導かれたように、果南もまた梨子の想いに導びかれるのだとしたら、やはりそれもまた運命のつながりなのでしょう。
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わかりやすい論理展開 (らずり)
2017-11-10 15:50:03
見えるものと見えないものを切り口にした考察、
本質に突っ込んだ内容でありながら、とてもわかりやすくて読んでいて楽しかったです。
犬を飼い主に返すシーンの梨子の反応と最後の結論までの論理展開も非常に説得力があり5話の内容がようやくわかった気がしました。
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Unknown (ゆさ)
2017-11-10 16:14:21
「あんこにとって振り返ったことは「偶然」でしかなかったのか、それはわかりません。でも、たとえそうであっても構わない。だって、「運命」は普遍的なものではなくて、そこに特別な意味があると信じるそれぞれの想いに委ねられるものだから。」

ここの部分の指摘がとても好きで、偶然と運命は表裏一体なんだなって思いました。仰るとおり、相反するものじゃなくて、偶然というものの否定じゃなく、それを運命って思ってみると素敵じゃない?って話なんですよね。すごくしっくりきました。
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偶然と運命は同じもの? (たくみ)
2017-11-11 01:37:34
遅くなりました。
前回のコメントで不躾に「読んでください!」アピールをしたのに対し、本当に読んでいただけてありがとうございました!
読みやすいと言ってくださり大変恐縮です。頑張って愛いっぱい込めましたので、伝わったようで嬉しいです。

第5話は「偶然」「運命」「見えない力」など非常に心に刺さるキーワードがありましたね。
私自身もいろいろ思うところがあり、ふわふわさんの感想に共感する部分が多くて、嬉しい限りです。

果南と梨子がそれぞれ口にした「偶然」という言葉。
果南の考えを梨子が否定しているように聞こえがちですが、私は二人は同じものを見ているのだと思いました。
どちらも「見えない力」が引き起こした事象で、それをどう感じるかが違うだけ。
そして最後に梨子が語った「すべての出逢いに意味がある」。
最初聞いたときは割とすんなり受け入れられたのですが、観返すごとにどうしてもその言葉が気になって。
自分でも拙いながらいろいろ考察してみたのですが、なかなかまとまらずw

なので私が5話を観て思ったこと、感じたことを題材に、小説を書いてみました!(またか)
実はさっきまで書いてました!
もし良ければどうぞ。今回は前回の半分以下の分量なのでw

ではまた次回も楽しみにしています。
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Re: (ふわふわ)
2017-11-11 22:02:31
はまのさん今回もコメントありがとうございます。
5話のエピソードの魅力は、究極的に言えば「そう思えば、素敵じゃない?」の一言に尽きるんじゃないかなぁと思う程に良いセリフだったと思いました。ロマンを感じますね!
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Re: (ふわふわ)
2017-11-11 22:06:07
レノさんコメントありがとうございます!
「想いが引き寄せ合うこと」の説得力が物語の中に詰め込まれていて、5話の構成はほんと恐ろしいほどに綺麗だったなぁと感じましたね。今後の展開にどうつながっていくか楽しみです。
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Re: (ふわふわ)
2017-11-11 22:09:00
らずりさんコメントありがとうございます!
ブログをご一読頂き、楽しんで頂けたなら幸いです。
梨子があんこに触れたシーンはとても印象的に描かれていたので、そこを起点に物語の筋道をたどっていくと今回の物語は見えてくるものが多いんじゃないかなと思いました。
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Re: (ふわふわ)
2017-11-11 22:14:17
ゆささんコメントありがとうございます!
ほんとにご指摘のとおりで、「運命」と「偶然」って反発しあうものじゃないんですよね。梨子も「偶然はないのかも」って言いますが、あれは偶然の否定ではなくて、どんなことにも意味があるって思うこと、「偶然」を「運命」に変換できたら(変換に必要なものは自分の想いひとつ)素敵!っていう話だったと自分も思います。相反するものではなくて、重なって一つになるもの。果南のセリフと梨子のセリフを聞いた千歌ちゃんの笑顔がまさにそれを証明しているんじゃないかと思いました。
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Re: (ふわふわ)
2017-11-11 22:24:51
たくみさん、いつもコメントありがとうございます!
5話は印象深いキーワードが多かったですね。
仰るとおり、「見えているもの」は同じで、「見えないチカラ」の存在をどう捉えるのかというそれぞれの認識の問題であって、そこに絶対的な正解をも求めるものではないんですよね。だからこそ、梨子のセリフは果南のセリフの否定ではなくて、彼女が辿り着いた一つの答えの提示なんだと思います。とても哲学的なように思える一方で、あえて言ってしまえばとても簡単なことなのかもしれませんね。


小説という形で感想を伝えるのはおもしろそうですね。今回も小説拝読させて頂きます!
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