ふわふわな記憶

日々精進。

その勇気は未来を照らすわたしたちの輝き。――ラブライブ!サンシャイン!! 2期9話 感想

2017-12-04 18:15:00 | ラブライブ!サンシャ...

#9 Awaken the power



とても綺麗な景色を見たときに、「この景色は他の人の目にはどう映っているんだろう」と思うことがあります。「見ているもの」は同じだよと言われればそうなんですが、きっと「見えているのもの」は違うんだろうなと。


トリックアートというものがありますよね。一見するとひとつの顔が描かれているようにしか見えない絵の中にもうひとつの顔が見えたり、綺麗な風景画の中に実はたくさんの動物などが隠されていたりする絵のことですが、この種の絵が伝えたい事も根本は同じなのだと思います。


この絵はこういう風に見るものだ、この人はこういう人だ、そう思っていた時には見えなかったものが、考え方や想いが変わることで見えるようになる。


それは、誰しもが自分の中に「こころの目」を持っているからかもしれません。同じ景色を見て、たとえ「綺麗だな...」と思う気持ちは同じでも、経験や想いによって、その見え方は少しずつ変わっていく。



いままで眠っていたチカラを目覚めさせた彼女たち。そんな彼女たちの目にはこれからの未来はどんな風に映っているのでしょうか。




一歩先の世界





大好きな人たちに自分たちのキモチを伝えるための曲を作ろうと提案したルビィは、同じ1年生の花丸と善子にも相談を持ち掛けます。


現実的に「できるの...?準備とかは...?」と指摘する善子に対して、やきとりを食べる手を止めてルビィの想いを尊重する花丸。


ルビィの「やりたい!」という想いをどこまでも応援してくれるのが黒澤ルビィの良き理解者である国木田花丸という人です。


「ルビィちゃんは どうしても理亞ちゃんの手伝いをしたいずら」と語る彼女の中には「できるかどうかじゃない やりたいかどうかだよ」と言ってくれた千歌の想いが受け継がれているようでもありました。





ルビィと理亞だけではなく、花丸と善子をも巻き込んで1年生で曲を作る意味ってなんでしょう。ルビィが言うとおり、花丸や善子がとても頼りになるから.....だけではないはずで、きっと彼女たちも「自分の中に眠るチカラ」を持っている人たちだからですよね。


"わたし 元々みんなでわいわいとか好きじゃないし

それを言ったらマルもそうずら 善子ちゃんに至ってはさらに孤独ずら"


花丸の言うとおり、花丸も善子も元々周囲に馴染んでいけるタイプではないのです。隅っこで遊ぶ目立たない子だった花丸も、小さいころから不運に見舞われてきた善子も、ずっと「自分の世界」に閉じこもってきた過去を持つ人たち。彼女たちがその世界から一歩を踏み出したのは今年の春になってからのことでした。


ルビィと理亞だけではなく、1年生たちには多かれ少なかれ共通する部分がある。未だ「自分の世界」から羽ばたけず学校でもひとりぼっちだった理亞が彼女たちと自然に打ち解けられたのも、彼女たちの中にある本質的な部分に共感を覚えたからでしょう。




自分の知らない外の世界への一歩を踏み出すのは勇気がいることです。それを花丸も善子も誰よりも知っている。1期5話で善子は周囲の目を気にかけていましたが、「自分の世界」から外へ出れば、否定されるかもしれないし、上手く行かずに失敗することもある。だから、「自分の世界」から飛び出していくことが怖い。


そんなとき、善子たちは「ありのままでいい」と言ってくれる存在に出逢います。スクールアイドルはありのままの自分を見せる存在。だから、そのままの自分で一歩を踏み出すことに意味がある。高海千歌がそれを示してくれたあの日から、彼女たちは「自分の世界」の外でも、自分を見せることが出来るようになりました。


善子も花丸も差し伸べる手に救われてきた人たちなのです。だから、今度は彼女たちが「自分の世界」から踏み出そうとしている子にあと一歩の勇気を差し伸べる。誰かにもらった輝きはまた他の誰かを照らすための輝きにつながっている。これもまた2期5話で桜内梨子が語った「運命」を象徴するものでしょう。






"隠されたチカラがたくさんあるかもしれないって"


そして、ずっと自分たちの想いを内側に秘めてきた1年生たちは、自分たちの「隠されたチカラ」の存在に目を向けます。それは、自分たちさえも意識していなかった自分の中に眠るチカラ。堕天使にもきちんと礼節をわきまえた挨拶が出来るし、気弱そうなルビィも大好きな人のためなら強気にだってなれる。


これらの彼女たちの一面はなにも突発的に生まれたものではないですよね。津島善子の持つ「常識」も黒澤ルビィが持つ「想いの強さ」も、普段表面にはっきり表れていなかっただけで、ずっと彼女たちの中に秘められていたもの。


善子が現実的な視点で物事を見れる人であることは今回の冒頭でも示されているし、2期7話ではルビィが姉のために強い意志を見せる姿が描かれていました。


ゆえに、自分たちには見えてなかった、自分の内側に存在しているチカラはまだまだあるかもしれない。見る側の視点が変われば、見えるものも変わる。それに気付けること、そう思えること、それ自体が彼女たちの成長を表しているのです。





自分の手で








大好きな姉へ贈る曲を作る彼女たちの顔には思わず笑顔がこぼれていました。ルビィと理亞はひとつずつ丁寧に自分たちの想いを込めながら作詞をします。


花丸や善子が寝てしまっている様子を見ると、夜通し夢中になって作業をしていたのでしょう。掛けられている衣装も彼女たちの頑張りを表現しているかのようです。







そんな「妹」たちをあたたかい目で見守る聖良の姿がそこにはありました。きっと、聖良は嬉しかったはずです。いままであまり人と関わりを持つことがなかった理亞がおそらく初めて、自分の部屋に友達と呼べる人たちを招いて、夢中でなにかをやろうとしている。


「自立」というのはなにもかも自分ひとりでやることではないのです。誰かと協力して、チカラを合わせて、なにかを成し遂げる。きちんと、自分の世界から一歩を踏み出して、他の人とつながることが出来る。それだって、立派な「自立」です。


一方的に頼るだけじゃない。お互いを信頼して頼り合うことは、お互いがきちんと自分の足で立っているからこそできること。ゆえに、理亞が対等な友達と一緒になってひとつのことを成し遂げようとしている、その姿こそが聖良にとって、理亞が言った「姉様がいなくても、もう大丈夫」ということを証明する姿なのでしょう。






"聞いたわけじゃないよ

ただ自分たちだけで なにかやろうとしてるんじゃないかな"


上級生たちの中でただひとり、高海千歌だけがルビィたちの意図を理解していたことも9話における重要なファクターとして繰り返し描かれます。


それもそのはず。かつて、1年生たちがこころの中に秘めていたキモチに手を差し伸べたのも彼女ですし、何よりも2期6話で千歌は「自分のチカラでなんとかしたいって思ってる ただ見ているんじゃなくて 自分の手で」と評されていた人です。


1年生たちが自分たちだけで函館に残ると言った時点で、その真意に彼女が気付けるのも納得ですよね。彼女もまた自分の手でやり遂げ、いままでの自分から一歩を踏み出すことによって見える景色があることを知っている人なのですから。






勇気はどこに?君の胸に!




さぁ、いよいよクリスマスイベント選考会の日がやってきました。彼女たちの想いが結実するかどうかが決まる場です。ルビィたちではなくても緊張するのは当然でしょう。


黒澤ルビィにとって、内浦が「自分の世界」を象徴するものなら、函館は「外の世界」を象徴するものです。詳しくない土地、よく知らない人、自分の苦手なこと。彼女が感じている壁はたくさんありました。


でも、世界はどこまでもつながっている。内浦と函館、遠く離れた場所で育ってきた2人が「スクールアイドル」を通じてつながれたように、自分の世界と外の世界を隔てるものなんて本当はないんです。だから、あと一歩を踏み出す勇気があれば世界は変えられる。





"ルビィは強い子でしょ ほら勇気をお出しなさい"


不安に押し潰されそうになったとき、ルビィが思い出したのは大好きなおねえちゃんとの「これまで」でした。ルビィは強い子。それは、幼き日のダイヤがルビィにかけてくれた勇気が出るおまじない。この頃からダイヤはルビィの中にある「強さ」を信じていたんです。





"そっか ルビィずっと勇気をもらってたんだ おねえちゃん"


ルビィはずっと姉の姿に勇気をもらっていました。そう、もらっていたのは一歩を踏み出すための勇気。あくまでもその一歩を踏み出すのは「自分」です。ゆえに、自分の足で立ち、自分の意志で、自分の言葉をルビィは外の世界に伝えるのです。


自分の手でやり遂げると決めたからこそ、気付くことの出来た勇気。彼女は、ずっと姉からもらってきたその勇気を、外の世界へ羽ばたくためのチカラに変えてみせました。


そこにはもう、「ルビィを置いていかないで...」と姉の背中を追いかけていた黒澤ルビィの姿はありません。不安になっても自分のチカラで立ち上がれる。それを彼女は証明して見せた。力強い瞳で前を向くルビィの姿は、しっかりと未来を見据えているようでもありました。






黒澤ルビィの成長は理亞と学校のクラスメイトたちが打ち解けるシーンにも表れています。


今年の春、千歌が声を掛けても花丸の後ろに隠れていたルビィが、「どうして隠れるの?」と言えるようになった。知らない人と話すことが苦手だったルビィが、理亞が言葉に出来なかったことを、理亞のために言ってあげられる。







泣き虫だったルビィが、誰かを支え、いままさに成長しようとしている理亞の姿に嬉しくて涙を流す。わずか1年にも満たない間にこんなにもルビィはたくましくなったんだなぁと感慨深くなるのも当然でしょう。


彼女が目覚めさせた「勇気」と元々持っていた「優しさ」。その涙は、黒澤ルビィというひとりの女の子のなかに、確かに2つの「チカラ」があることの証なのです。





Awaken the power





"いまのわたしたちの精一杯の輝きを 見てください"


もらった勇気への感謝、大切な人への「大好き」の想い。彼女たちが歌う理由はただそれだけです。誰かに勝つためでも、廃校阻止のような大きな目的を持つものでもない。たくさんのありがとうを込めて、ただ、「大好き」を「大好き」のまま「大好き」と歌う。


そんな彼女たちの「いま」の想いがこもった歌は、あの日、あの街のどんなものよりもひときわ強い輝きを放っていました。






たくさんの「大好き」を込めて、みんなでハートを作る。その姿は、かつて、同じ雪の日に自分たちの「心のメロディ」に「大好き」の想いを乗せて歌った伝説のスクールアイドルたちに重なるのでしょう。



"世界はきっと知らないPowerで

かがやいてる なにをえらぶか 自分次第さ"


世界は自分たちの知らないことに満ちている。函館に来たことで、「わたしたちの知らないところでも スクールアイドルは同じように頑張ってる」と気付けたように、知らなかっただけで、まだ世界には知らない輝きがたくさんあるのです。


そして、いまひとりの少女が、大切な思い出を胸に、自分の知らない世界への一歩を踏み出しました。その姿を見つめる千歌の表情は、どこか儚げで、しかし確かな笑みがまじったもの。


彼女がどんな未来を選ぶのかはわかりません。正解は彼女たち、それぞれの中にしかないから。しかし、鹿角理亞という少女が見せたその強い決断は彼女の胸に確かになにかを残したはずです。









A-RISEに憧れた少女たちはかつて、A-RISEやμ'sのなにがすごいのか、その輝きの正体を知るには「勝つしかない。勝って追いついて、同じ景色を見るしかないのかも」と考えていました。でも、そんなことはないのです。だって、スクールアイドルにとって大会で勝つことがイコール「輝く」ことではないから。


勝ち負けも大会も関係ない。A-RISEやμ'sと同じ立場に立つ必要もない。ただ自分たちの「大好き」の想いを込めた歌を歌う。それだけで良かった。いえ、それこそが大切だった。


ただ自分の想いに正直に、そして大好きな人のために歌うステージ。そのステージの中にこそ、始まりのスクールアイドルたちが見せた「輝き」の正体があったのです。



4 コメント

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今のところ2期最強回です! (たくみ)
2017-12-05 00:58:18
感想書き、お疲れ様でした。
私にとって共感や発見が散りばめられていた素敵な記事でした。

特に千歌の分かり手すぎる察し能力や洞察力が、これまでのイメージと乖離していて、初見では咀嚼できなかったのですが、この記事で少し掴む方向性が見えたような気がします。

そして黒澤ルビィの覚醒。
1期から常々、彼女は主人公としてのポテンシャルを持っていると感じていました。
花丸が「世界の隅々まで照らせるような輝き」と評した通り、彼女は恵まれた身体能力や、他人を思いやる優しさ、強い意志、一歩引いて見られる視界の広さ、さらに屈指のアイドル好きだったりと下地は十分。
ただひとつ、究極の人見知りという気の弱さがネックでした。
それがついに今回克服されましたね。
これからもっともっと輝く素質を秘めた子、まさに「Awaken the power」は彼女を表す言葉だと思います。(※もちろん全員に当てはまりますが敢えて)
そんなルビィの成長をじっくりと書いてくださったこの記事に感謝です。

私も妹を持つ身として、ルビィの成長が頼もしく嬉しい、ダイヤと同じ視点で、そらもう涙なしには観られませんでしたよw
まさに感動オブ感動だった第9話でした。
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聖なる夜に (レノ)
2017-12-09 13:07:22
8話、そして9話と綺麗な構成に天晴れと言いたくなりますね。雪降ってますが...笑。

ルビィや理亞の「自立」を描きながら、Saint Snowの2人がずっと探していた「輝き」をよもやこういう形で描いてくれるとは感無量の一言に尽きますね。1期12話の対談はこの瞬間のためにあったのか!と思わず感想を拝読して叫びそうになりました。

これから先、彼女たちの未来がどうなるのか楽しみです。
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札幌ファンミより (はまの)
2017-12-09 17:02:23
道民としてSaint Snowは応援していたんですが、ここまで物語の重要な役割を担うグループになってくれるとは思っていなかったので、心底泣かされました。Awaken the powerの歌詞をルビィと理亞が考えたんだなぁと思うと色々と涙腺が危ない状態になってました。これからのストーリーにもつながる回でしたね。

p.s.地元札幌でのファンミ会場よりコメントさせて頂きました!笑。
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Unknown (カリスマ声優白書)
2021-02-26 14:20:06
函館編の後編。面接を必死に言い切り、クリスマスライブフェスに出演する事が出来ました。イブのライブ直前、11人は日本三大夜景の1つである函館山へ上ります。一足早くスタッフロールが流れる中、思う存分夜の景色を満喫する11人。そしてライブ。町中がイルミネーションの明かりに包まれています。We Wish a merry クリスマス。ああめでたし聖が来た。聖なる夜を大いに褒めたたえよう。おめでとうクリスマス。ひざまついてさあ、お祈りしましょう。歌は「Awaken the power」ラブライブ!イレブンが誕生!世界から称賛されています。サンシャイン!!版Snow Halationは、眠っている力を目覚めさせ、輝くという意味が込められています。プロミネンスのライブの力、おひさまみたいに輝こう!11人で星の形を作るシーン、ほんまに感動でっせ!Aqoursはその後、温泉に入って体を温め、Saint Snowは一足お先に輝きを見つけたはずでしょう。日本に、心温まるプレゼントが届きました。
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