Saxophonist 宮地スグル公式ブログ

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ツアー2023を振り返る

2023年10月25日 12時25分00秒 | bands
10月はじめの東北ツアーをもちまして、今年の国内ツアーは全て恙無く終了しました。お越しくださったお客様、お店のオーナー様、各地のミュージシャンに心から御礼申し上げます。有難うございました。まだ若干地方での演奏は残ってますが、そちらも宜しくお願い致します。

思えば2018年に初めての、西日本を2週間かけて巡る一人旅で、早くも3日目辺りで自分の演奏に飽きてしまい、その後の旅が演奏的に地獄だったのをキッカケにスタイルチェンジを志し、それまで全く興味の無かったクールジャズを聴き漁り、今日に至る訳ですが、有難い事に各地のジャズファンの皆様から、その変化を歓迎して戴き、応援して頂きました。

僕は30歳で東京デビューを果たしたのですが、その頃はアメリカから帰って来たばかりで、NYの最先端の音楽を日本に届けるという使命感に燃えてましたし、自分のバンドで自分のオリジナルを聴いてもらいたい!という気持ちがとても強かったです。

時は流れ、もう30年近くもキャリアを積んで、やりたい事もやり尽くした今、誰と演っても楽しく出来るし、オリジナルよりも誰もが知るスタンダードを自由に演ってる方が楽しくさえあります。なので、他流試合上等ですし、セッションも楽しいです。恐らく、そういう気持ちの変化が各地のジャズファンの方々に受け入れられ始めてるのだと思います。

そういう事で、1ステは通常ライブ、2ステはジャムセッションという形を取る事も少なくありません。実質問題として、集客を考えた場合その方が良い…というのは、お店からの提案である事が多いのですが、こちらとしては全く問題無く対応出来ます。海外のアーティストもやってる事ですし、クリニックなどのジャムで、トップミュージシャンが、一人で全体の音楽レベルを持ち上げてる様をYouTubeで目撃すると、「俺もこれくらい出来なきゃプロとは言えない。」と思い、逆にアマチュアとのジャムセッションに気合いが入りもします。

ところが、今年は地方のお店の変化に気が付きました。「飛び入りはいいけど、セカンドセットを全部ジャムにするのはやめて欲しい。」というお店側からの要望を受ける事が増えたのです。なんでも、聴き専のお客様が、途中で帰ったり、ジャムセッションが有るのが分かると最初からライブに来ない等、お店として本来大切にしたいお客様が来なくなってしまうから…との事。

「聴き専」のお客様…なんて既に絶滅危惧種だと思い込んでた僕には、とても嬉しい事でした。僕自身は演奏よりレコード聴いてる方が楽しいってくらいの半聴き専ですが、そういう人はプロでもレアだと思います。アマチュアのミュージシャンは僕より演奏活動が積極的ですし、ジャズのライブ会場に現れるのは、自分の勉強やジャムの為に来てるアマチュア・ミュージシャンか、可愛いオネェちゃんミュージシャン目当て(笑)かのどっちかしか居ないと思ってたので、こりゃ失礼しましたって感じです。

しかしながら、こういった事象は土地やお店のコンセプトによって異なるわけで、必ずしも全体的にそうなってるとは思えません。今後もそのお店のやり方に従う事に変わりは有りません。ただ、絶対数がどの時代においても悲劇的に少ない筈のジャズ・リスナーが少なからずライブ・ウォッチをしようとしているという事実をこうして知る事となり、僕はとても嬉しくなったという次第です。

そしてもう一つ、東京でも近年そうなのですが、インバウンドの外国人のお客さんが多い!…という事です。これって、コロナ禍以前には無かった事だと思います。そして日本のジャズが世界から認知されたんだ!と喜んで良い事だと思います。これは僕の長年の夢でもありました。このブログにも過去に何度も書きましたが、店主はホームページに英語のページを作ったり、簡単な日常英会話程度は喋れる様にして欲しい、そしてミュージシャンはNYからの旅行者でさえも魅了する様な「日本でしか聴けないジャズ」を演奏すべき…ってのは、こうしたインバウンドの客を見込んでの事です。資源の無い日本が益々経済ガタガタとなった今、外貨を稼ぐには観光立国になるしかありません。その準備をして欲しい…という願いでした。そして今、そういう時代がいよいよ到来したという感じです。

福岡では圧倒的に韓国からの旅行者が多かったです。距離的に近いってのもあるのでしょう。「韓国ではフュージョンが流行ってるんじゃないの?」って若いお客さんに聞いてみたところ、最近はストレートアヘッドなジャズを聴く若者が増えて来たとの事。嬉しいではないですか。新潟では、アメリカからの若いカップルのお客さんが我々の演奏を楽しそうに聴いて下さり、CDも買って下さりました。

彼等は思わぬ場所で、前触れもなくふらっと現れます。だから常に最高の演奏を提供しなければ、日本のジャズを貶める事になる…と思ってステージに上がってます。僕が海外旅行で観たライブの感想をこのブログに書いてるのと逆の事(こちらが評価される立場になる)がインバウンドのお客様のSNSで繰り広げられてるに間違いありませんから。

このツアーで、益々、世の中の価値観は流動的で、それにどう乗っかるかを考えさせられましたが、結局は楽しく音楽をやるしか無いんだって結論に達しました。SNSを観ても、「誰が売れてる」とか「どんな音楽が流行ってる」とか、どうでもいいし、他人にほぼ興味が無くなって来てます。だから、ほぼ観ないんだけど(笑) 

オールド・ジャズを最近沢山聴いてますが、それは決して懐古趣味ではなく、ミクスチャーとして、自分が持っていないテイストを入れる事で更に新しいサウンドを探し求めているという事です。それをするには、既に完成された現代のコンテンポラリー・ジャズを聴くと邪魔になるので、なるべく聴かない様にしているわけです。それでも、お客様(中にはジャズに詳しくない方もいらっしゃるでしょう)に受け入れられてるとしたら、ある種の共感を得てる事となり、この試みは成功していると言えます。

また、1年間研究を重ね、来年新しい宮地スグルをお届け出来ればと思います。(東京の方はその過程が見れるんですけどね…)

7月のツアー中に立ち寄った、絶景「角島大橋」。



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2 コメント

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Unknown (ねりま)
2023-10-25 21:37:01
聞き専の方がまだまだいらっしゃるというのを読んで、
なんだか胸が熱くなりました。jazzは不滅です!
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Unknown (SGURU)
2023-10-25 22:40:46
コメント有難うございます!
そうなんです。僕もそれを聞いて本当に嬉しく思いました。勿論、アマチュアプレイヤーにも上手い方は沢山いらっしゃいますが、演り専だけの人で上手い人は正直居ないと思います。聴き専の方も、プレイヤーの方も楽しめる演奏を心掛けたいと思います。
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